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【C82新刊/兎虎】Paradise with you

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夏コミ1日目8/10発行の新刊サンプル(東1ホールD-51a)
※ 今回のサークル名は sha-raku です ※
もちろんR18大人向け
ヒーローを引退する前に告白をしていたものの互いに一歩が踏み出せないまま離れた
バーナビーと虎徹。一年後に再会して、共に過ごす初めての夜のお話です。

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(やっべええぇぇぇ!)
 思わず両手で自分の口許を覆う。不用意に声を上げたら大変だ。
(ちょ……待て、俺。落ち着け! まず落ち着こう)
 ドキドキと高鳴っている胸にも手のひらを押し当てて、深く息を吸い込む。
 キスを終えて、バーナビーがベッドルームを出て行ってから一分くらいは経っているが、何しろリビングは隣だから大きな声を出したら目覚めていると気づかれてしまう。
(えーと、何がどうしてこうなったんだっけ? ……確か一緒にメシ食ったんだよな?)
 まだ完全に酔いが醒めたわけではないが、少しずつ意識はハッキリしてきた。そこへさっきのキスだ。突然触れてきた覚えのある感触に、酔いと眠気が吹っ飛んだ。
 やわらかく押し当てられた唇。
 軽く吸われ、舌先で表面を舐められたりそっと甘噛みされたりするうちに、薄く開いた口唇に舌先が触れた。ディープに口腔内を探られたりはせず、じきに唇は離れていったが、その頃には覚醒した心臓が勢いよく駆け出していて、やかましい心音に気づかれるのではないかとヒヤヒヤした。
(びっくりした、びっくりした……)
 一番危うかったのは、バーナビーが離れていこうとしたとき、思わずその手をつかんで引き止めてしまいそうになったことだ。
(もうちょいで起きてるってバレるとこだったぜ)
 密かに胸を撫で下ろす。まさか、いきなりキスされるだなんて思ってもいなかった。もうとっくに自分には興味を失くしているんじゃないかとさえ思っていたのだ。新しい相手がいるかもしれないし、そうじゃなくても一年離れている間に、こんなおじさんに夢中になっていたことなんてとっくに忘れてしまっただろう。かつて自分がどうしてあんなにも「虎徹さん、虎徹さん」と年上のバディにべったりだったのか、冷静になって考え直す時間は充分にあったはずだ。
 だからこそ食事をしている間中、実は僕、恋人ができたんですという報告がいつ来るかと内心身構えていたのに。
(けど、まさか…………見逃すのは今夜だけって……えええぇ?)
 本気かよ、バニーちゃん。
 虎徹はシーツに包まって、羞恥と混乱に足をジタバタさせた。いい歳をした大人がたかがキスひとつでと呆れられそうだが、なんだかやたらと頬が熱い。ぎこちない空気の名残がいつまでも四肢に絡みついて、背筋を強張らせている。ドキドキがなかなか治まらないのだ。
(ていうか、いい歳しているからよけい恥ずかしいのかもしんねーけど……)
 打算的とまではいかなくても、いっそ恋愛の要素が乏しければ、もっとうまく対処できるのかもしれない。だが、恋愛となると話は別だ。簡単には踏み出せないし、あっさり応じることもできない。亡き妻や娘のためというより、自分自身にその度胸がないから。
 若い頃のように恋愛にまっすぐ向かっていく気持ちを抱くのは、そう容易いことではないのだ。そして当然のことながら、本気のセックスは愛する人としかできない。
 だから、一年前バーナビーに告白されたとき―――虎徹は逃げた。
(あれは…………やっぱ逃げたことになるんだよなぁ、バニーは責めなかったけど)
 そのくせ忘れてしまうこともできなかった。


 郷里に戻って半年ほど過ぎた頃。
「ただいまーっ」
 学校から帰ってくるなり、娘の楓が週刊誌を広げてみせた。デカデカと紙面を飾っている元KOH、BBJという文字が嫌でも目に入ってくる。
「ねぇお父さん、見てよ! これ、ほんっとヒドイと思わない? 適当なことばっか書いてるの! バーナビーの名前出せば売れると思って」
 バーナビーの名前を出せば売れる。それは事実だ。現におまえだって買ってるじゃないかとはさすがに言えないが、眉を吊り上げ、訴えられたところで虎徹にはどうしようもないのだ。
「ンなもん、いちいち気にするなよ」
「するわよ!」
 娘の口は完全にへの字に曲がっている。
「お父さんは気にならないの?」
「そりゃあ……」
 真顔で尋ねられて、思わず黙り込んだ。
 ゴシップ誌なんてものは虚実織り交ぜているのが普通だし、下手をすれば虚偽のみの場合もあるという。それでも耳目を集められればOKなんだから、振り回されるだけ損だ。そんなありきたりな回答はただの言い訳じみて聞こえるかもしれない。
(……気にすんなって方が無理なんだよな)
 思い返せば、出会いは最悪だった。
 信頼を得ようと結構足掻いたし、気に食わない奴と思いながらもバーナビーの苦しみを知ってからは力になりたいと願った。あれはふたりが本物のバディになるために必要だった時間だ。
 いつからだろう、そこに愛しいという感情が混ざり始めたのは。
『――――虎徹さん……』
 あいつの声がまだ耳に残っている。別れたとき、最後に立ち止まって何か言いたそうに振り向いたくせに、結局は戸惑いを滲ませながら「お元気で」と、ただそれだけを告げた、あいつの声が。
 いつもは冷たく感じる翡翠のような瞳が揺れているように見えたのは、気のせいだったかもしれないけれど。
(もしも、そうじゃなかったとしても、俺には何もしてやれないけどな)
 無理にでも引き止めて、口にしかけた言葉を聞いてやるべきだったんじゃないかと、今でもたまに思うことがある。その先に難問が待ち受けていて、頭を悩ませるとわかっていても。
「ねぇ、お父さんってば! 聞いてる?」
「……ああ、うん。聞いてるよ、ちゃんと」
 不安定なあいつにせがまれて何度か重ねた唇の感触が、まだ消えない。
(もしして俺は、あいつと――――どうにかなりたかったんだろうか)
「ちょっと! お父さん!」
 ざわつく胸の内にばかり気を取られて娘の言葉を聞き流していたら、とうとう癇癪を起こされてしまったようだ。虎徹は畳に寝そべっていた身体を仕方なく起こして、やれやれと頭を掻いた。
「おまえは、おまえが好きな相手や信頼してる相手と、その記事を書いた見も知らない奴と、どっちを信じるんだ?」
「そりゃ…………好きな人だけど」
「だったらそれでいいだろ」
 簡潔に答えて、再び寝転がる。
 どっちを信じる? それは自分自身にも投げかけた言葉だ。
(なぁバニー…………おまえ今、どこで何してる?)
 心の中で呼びかけてみても、むろん答えは返ってこない。それでも不思議と完全に縁が切れたような気はしなかった。この先、会う約束はしていない。シュテルンビルトを訪ねる理由もない。もう二度と会うことはないかもしれない。
 それでも、まだどこかで繋がっているような気がしていた。


「さすがにコンビ復活までは読めなかったけどなァ」
 ベッドの上で丸まって、ぼそりと独り言をつぶやく。
 センチメンタリズムに溢れすぎていて思い返すのも恥ずかしかった記憶の糸を今、ようやく手繰り寄せているのは、さっきのキスのせいで、もうごまかしきれないだろうと悟ってしまったからだ。
「単なる仕事のパートナーって割り切るのは、やっぱ無理だよな」
 以前、好きだと告白されたことも。
 同じ男の、しかも仕事の相棒にキスされて嫌じゃなかったという衝撃的な事実も、月日が経てば記憶から薄れていくかと思っていたのに、どういうわけかちっともそんな気配がなくて、逆に心の中に記したプロフィールをなぞるように、毎日毎日あの街で過ごした日々を思い出しては、バーナビーのことを考えるようになっていた。
 一緒にいた頃より、よほど相手のことを考えていたかもしれない。おかげで脳の侵食具合はかなりのものだ。
「………俺ん中、もうかなりバニーちゃんでいっぱいだし」
 誰に語るともなく口にしていた想い。
「そうなんですか。それは知りませんでした」
「……へ? えっ?」
 単なる独り言に答えが返ってきたとき、冗談ではなく数秒間呼吸が止まった。
「ば…………ババババニーちゃん?」
 自分が発したとは思えないほど声は完全に裏返っている。
 一気に襲いくる激しい動悸、息切れ、眩暈。残念ながら夢、幻ではないようだ。
 いったいいつの間に寝室に戻ってきたのか、どうして自分がそれに気づかなかったのかわからないが、ベッドのすぐそばには確かに人の気配があった。
 視線の先には見慣れたバーナビーの赤いブーツ。
 恐る恐るシーツから身体を引き剥がし、面を上げると、翠色にきらめく瞳とバッチリ目が合った。
「とっても嬉しいんですけど、できればそういう告白は本人の前で言ってくれませんか、虎徹さん」
「え…………いや、その……」
 なぜだろう、怒ってるわけじゃないのに顔が怖い。本気が滲みすぎているからか。
「なんなら強制的に言わせたっていいんですよ?」
 ブーツを脱ぎ捨て、おもむろにベッドに乗り上げてきた元KOHの眼差しに射竦められて、虎徹はぶるりと身震いした。

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