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【モブ虎/3】逃走中 【3】

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 今思えば、仲間たちの懸念は見事に当たっていたのだ。
 再三、気をつけてくださいと忠告してくれたバーナビーの心配が的中してしまった。きっとたまたまあの事故現場近くにREDとやらのメンバーが居合わせたのだろう。そして運悪く、能力を発動させているところを目撃されてしまったに違いない。
 もともとNEXTに対して否定的な人間の目に、虎徹は人命救助に尽力した善良な能力者ではなく、唐突に街灯をへし折って放り投げた無法者と映ったのかもしれない。二次災害とも言うべき事故が起こってしまったことで尚更そう見えたのだとしたら、この後の理不尽な展開にも多少の説明はつく。
 事実、その日から異変はささやかな形で始まった。ずっと誰かに尾行されていたのだ。朝、出社している間もランチを食べに出かけたときも、帰宅する途中も頻繁に何者かの視線を感じるようになった。
 なんとか気配を探って相手を捕まえてみても、ごく普通の通行人のようにしか見えず、攻撃的どころか声をかけた途端に怯えたようすで逃げていく。すると別方向からまた視線が刺さってくる。そんなことの繰り返しなのだ。
 他にも何かしてくるかと身構えていても、一向にその気配はない。おかしなことといえば携帯に二、三度無言電話が掛かってきたことくらいだ。ただしどれも違う番号からだったので、単なる間違い電話かもしれない。
 いったいどこの誰が、なんの目的で自分の後をつけているのか。尾行者は全部で何人いるのか。疑問はなかなか解消されないまま、数日が過ぎていった。
 まさかその間に、とんでもない罠が仕掛けられているなんて。
(分かるわけねぇよな)
 結果として、事態は悪い方向へと引き寄せられた。虎徹自身にとって思いも寄らぬ形で。
 それがつまり、この悪趣味な追いかけっこだ。

『――――狩りと称して犯罪者でもないNEXTを大勢で追いたてて、嬲りものにしてるって話よ』

 ポストに入っていた手紙の文面を目にした瞬間、数日前に仲間と交わした会話が脳裏に甦ってきた。
(おいおい、嘘だろぉ)
 差出人は書かれていないが、宛名はちゃんと「鏑木・T・虎徹様」になっている。残念ながら人違いではなさそうだ。
(しかもこれ宛名だけで、切手も住所も……ってことは直接入れていったのか?)
 途端に、ぞわりと寒気がした。
 有り得ないと頭で否定しても、網膜に焼きつけられた「狩る」とか「ハンター」とか「粛清」といった単語がじわじわと胸を締めつけてくる。その息苦しさにエントランスを出たところで立ち止まっていると、ズボンの尻ポケットで携帯が鳴った。
 娘からか、それともバーナビーからだろうか。
 ハッと我に返って虎徹が携帯を手にした途端――――――最初の襲撃者が現れた。路上に停めてあったワゴン車から野球のバットや鉄パイプなどを手にした男たちが飛び出してきて、いきなり襲い掛かってきたのだ。中にはスタンガンを所持している者もいた。
 年齢や体格はバラバラ。全員見覚えのない連中だ。
「ちょ……あぶねーって…………このっ!」
 振り下ろされる凶器を避けて路上に飛び出し、すぐに応戦したが、いくら場慣れしているとはいえ七対一ではそう簡単にはいかない。おまけに虎徹は丸腰だ。
 勢いよく振り回されるバットを躱して男の腕を掴んだ拍子に、持っていた携帯を落としてしまった。
「ああ、くそっ! いい加減にしやがれ! 娘からだったらどうしてくれるんだよ」
 アスファルトの上を滑っていく携帯を目で追いながら、悪態をつく。
 こうなったら俺が全員捕まえてやると決意を固めた時、
「おい、そこで何をしている!」
 鋭い一声が割って入ってきた。制服警官の登場だ。
「いったい何を暴れているんだ?」
 駆け寄ってきたのはアングロサクソン系の三十前後の男性警官で、全員を厳しい目つきで眺め回した。
「お巡りさん、実はうちのポストにこんな手紙が……」
 よかった。これで事件は解決だと、ほっと胸を撫で下ろしながら虎徹は証拠の手紙を差し出そうとした。しかし、この油断こそが罠だったのだ。
「怪しい奴だな。署まで一緒に来い!」
 そう言われたのは襲撃者たちではなく、なぜか虎徹の方で。
「え……俺? ちょ、ちょっと待ってくださいよ! いきなり襲ってきたのはこの連中ですよ! だってほら、どう見たってあっちが怪しいでしょ?」
 いまだ凶器を手にしている男たちを指差して告げる。すると警官が、前に差し出した虎徹の手首にすばやくパチンと何かを嵌めた。
「……へ?」
 一瞬手錠かと焦ったが、嵌められたのは片方だけだ。少しごついデザインブレスと思えなくもないが、何か機械でも組み込まれているらしく、ずっしりと重みがある。
「何だ、これ?」
「ターゲットにタグの取り付け完了。繰り返す、タグの取り付けは完了した」
 こちらを無視して誰かにそう報告している警官の姿を、虎徹は改めてじっと睨み据えた。肩のあたりのデザインが少し特徴的な制服も、金色に輝く胸のバッヂも、ちゃんと本物に見える。取り立てて違和感はない。だが、無理やり嵌められたブレスはいくら力を込めても外せなかった。どうやらロックが掛かっているようだ。
「…………おまえ本物の警官か? これはいったいどういうことだよ?」
「もちろん本物さ。職業は、な」
 ストレートに尋ねると、警官はニヤリと笑って答えた。
「たった今、本部におまえのことを報告をした」
「本部ってのは、まさか警察じゃなくて」
「我々REDの本部だ」
 やっぱり。この男もグルなのだ。
「くっそ! おまえもかよ!」
 朝っぱらから自宅の前で待ち伏せして堂々と襲撃してくる奴らもまずいが、警官はさらにまずい。捕らえた後は制裁を加えるなどと宣言しているのだから、逮捕されてしまったが最後どこへ連行されるか分かったものではないし、たとえ第三者にその場面を目撃されたとしても、警官が相手では虎徹の方が犯罪者と認識されるだけだ。
 だったら今ここで、逆にこいつらを捕らえるべきじゃないか?
 虎徹はわずかに逡巡した。能力の発動は人助けのためと決めているからだ。しかも今は一分しか保たない。それでもこの連中を捕らえて、すべてを暴けば、行方不明になった人たちを助けられるかもしれない。
『そんな奴ら、全員逮捕しちゃえばいいのに』
(同感だぜ、ブルーローズ)
 思い出したセリフに頷いて、ぐっと四肢に力を込めた。
「うおおぉぉっ………………って、あれ?」
 ところが。
 発動しかけたはずの能力がみるみるうちに萎んで消えていく。確かに全身に青い光が浮かび上がってきたはずなのに、途中でスーッと波が引くように消えてしまったのだ。
 まるでエンジンをかけ損なった車みたいに。
(な、なんだ?)
「能力の発動は諦めるんだな」
 訳が分からず戸惑っていると、警官が冷たい笑みと共に無情なセリフを投げかけてきた。見れば、後ろにずらりと控えている襲撃者たちもニヤニヤと嫌な笑いを張りつかせている。そして、むろん彼らの手にはまだ武器が握られている。やる気満々といった感じだ。
「おまえの腕に嵌めたのは我々のリーダーが開発した能力抑制装置だ。まだ開発途中のようだが一定の効果は得られている」
「能力抑制装置? なんだよ、それ。んなの聞いたことねーぞ」
「脳波に影響を与える特殊な信号を出して、能力の発動を抑える。おまえのような危険なNEXTを暴走させないようにするための貴重な品だ。どんなバケモノだろうと、これさえあればもう好きにはさせん」
 疑うなら、何度でも試してみればいい。
 確証を得ている者の傲慢さを滲ませて告げた警官は、腕に嵌めたデジタルウォッチを目の前に差し出してきた。
「ただし、ぐずぐずしている時間はないぞ。本部から指令が出た」
 その眼にはサディスティックな光が。
 立ち上がった3D画面には不吉な文字が浮かんでいる。

 ―――Start the game(獲物を狩れ)―――

「能力なしでどこまで逃げられるか、せいぜい頑張ってみることだな。どんな啼き声を聞かせてくれるか、今から楽しみだ。健闘を祈る」
「なっ……」
 ふと虎徹の脳裏に、一年前マーベリックによって仕掛けられた冤罪のせいで仲間のヒーローたちや警官に追われた苦い記憶が甦ってきた。
 ――――またあれを繰り返すのか。
「冗談じゃねぇ」
 そう思って絶望しかけたが、今回は決定的な違いがある。誰も自分のことを忘れてはいない。誤った情報で操られている一般人が敵に回ったわけでもない。幾人かの犯罪者たちが一般人の輪の中に紛れているだけだ。
(仲間は……バニーは俺の味方だ!)
 だったら今やるべきことは一つしかない。
「ぜってー逃げ切ってやる!」
 虎徹は再び飛び掛ってきた自称ハンターたちの攻撃を躱して、勢いよく駆け出した。
 バニーと連絡を取って人々を焚きつけている張本人を見つけ出し、捕まえてやるのだ。

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