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【モブ虎/3】逃走中 【2】

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「え? またやっちゃったんですか?」
 トレーニングセンターで汗を流した後、昨日の出来事を相棒に話して聞かせると、バーナビーはたちまち形のいい眉をしかめて呆れた声を出した。やっちゃった、とは失礼な言い草だ。
「またってこたぁねぇだろ。なんだよ、やっちゃったって」
 年甲斐もなく、ぶぅと膨れてみせる。すると若いハンサムヒーローは表情を崩さないまま眼鏡を指で押し上げ、言葉通りですけど、とドライに切り返してきた。
「出動中でもないのに能力使うのはなるべく自重した方がいいって、何度も言いましたよね?」
 表情は平静を装っていても、声音やセリフに棘が含まれていて耳が痛い。きっと怒っているのだ。たぶんバニーなりにいろいろと心配してくれているのだろうが、虎徹にだって言い分はある。
「じゃあ罪もない人間が事故に巻き込まれるのを見殺しにしろって言うのか?」
「そうは言っていません。でも、やり方ってもんがあるでしょう」
「ねーよ! そんな暇なかったし、第一能力使わずにどうやって助けるんだよ」
 能力なしでは絶対に無理だったはずだ。そう息巻いた。
「だとしても、街灯は折らなくてもよかったんじゃないですか?」
「じゃあ代わりに何投げるんだよ」
「投げるの前提ですか……」
 だからそこで、壊す、投げる以外の選択肢を加えてくださいよと、バーナビーが脱力したようすでため息をつく。
「子供とお年寄りと女性の三人なら、まとめて抱え上げて逃げることもできたでしょう?」
「そっ…………りゃそうかもしんねーけど……あんときは」
「仕方なかった、は言い訳ですよ」
 結局、厳しい口調でぴしゃりとやり込められて、虎徹はしょんぼりと肩を落とした。
 これではどちらが年上か分からない。
「前にも言ったじゃないですか、気をつけてくださいって。賠償金のことだけじゃありません。最近どうもNEXTに対してよくない感情を抱いている人たちがいるらしいんです」
「んなの昔っからいるだろ、そういう連中は」
 有り難い話ではないが、能力者なら大抵一度や二度はバケモノ扱いされたことがあるはずだ。見ず知らずの他人に怖がられたり気味悪がられるのは当たり前。友人、知人にだって距離を置かれる。そのせいで散々傷ついたりもした。
 それでも虎徹の場合は家族が理解を示してくれたし、レジェンドとの出逢いもあった。特殊な能力を卑下するのではなくヒーローになって役立てようと決めた自分を、妻が支え、後押ししてくれた。娘だって応援してくれている。
 だから今は、多少周囲に引かれたぐらいでは少しも動じない。事故現場で常人離れしたパワーに周囲が悲鳴を上げても、いつものことと思ってさほど気にしていなかったのだ。
 ところが。
「確かにそうなんですけど……ちょっと違うんですよ」
「何が?」
「組織化されてるみたいなんです」
 相棒の表情が思いのほか硬い。暗く沈んでいるようにも見える。
「……バニー?」
 いったいどうしたんだと身を乗り出しかけた途端、後ろからポンと肩を叩かれ、二人の間に割って入ってきたロックバイソンが会話にも参入してきた。
「俺も聞いたことあるぞ。アンチNEXTを名乗る集団ってのは前からいたが、最近じゃあかなり攻撃的なんだと。中でも一番デカイ反NEXT勢力は人類原理主義ってのを謳い文句にしてて、粛清だのなんだのヤバイこと言ってるらしいぜ。俺としちゃ、むしろそっちを逮捕してやりたいね」
「詳しいな、おまえ」
 何も知らなかった虎徹は妙に感心してしまったが、どうやら彼以外にとってはすでに周知の情報らしい。
「おまえが無頓着すぎるんだよ。みんな知ってるぞ」
「ターゲットは犯罪者に限らない、すべてのNEXTはその予備軍だっていうやつでしょ? 極論よねぇ。そんなこと言ったら能力なんか関係なしに、どんな人間だって間違いを犯す可能性はあるんだから」
「ホントむかつく。私そういうの大っ嫌い!」
 ファイヤーエンブレムやブルーローズも同意見らしく、二人とも眦が上がっている。
「……僕も」
「好き嫌いは個人の自由だけど、能力を理由に他人を攻撃したら、偏見を通り越して犯罪者と変わらないでござるよ」
「折紙くんの言う通りだ。許し難い、実に許し難いね!」
 気づけば、いつの間にか全員周りに集まっていた。
「反NEXT勢力、ねぇ」
 以前から信じ難い犯罪を犯す存在としてNEXTを危険視する人々はいたが、それらと対峙して捕まえているのもまた能力者であるヒーローたちだったので、シュテルンビルトの人々はNEXTに対して概ね好意的だったはずだ。
 憎むべきは犯罪者であり、能力者に非ず。
 虎徹たちヒーローの活躍によって、そんな空気が出来上がっていた。ヒーローTVがその役割を果たしてくれていたのは間違いない。
 不安や偏見を持つ者たちが声高に排斥を唱えていなかったのも、能力を正しく使うヒーローという存在を認めてくれていたからだと虎徹は思っている。
 しかし近頃、どうやらその信頼が揺らぎ始めているらしい。
「例のマーベリック事件以来、ネット上では過激な意見が多くなっていましたから」
「そいつらの発言が大衆の不安をますます煽ってるってわけだ」
「へぇ……そうなの?」
 深刻そうな口調で洩らした折紙やロックバイソンのセリフに首を捻ると、隣にいたバーナビーが渋い表情で頷き返してきた。
 事件以降もヒーロー礼賛の姿勢を取り続けるメディアを本当に信頼していいのかという疑念が人々の間に生じ、ネットなどを介して広まっていくにつれて、NEXTの存在を強く否定する者たちが現れたのだという。そしてNEXTから人類の手に主導権を取り戻そうと訴えている集団こそ、近頃巷で噂のREDというグループだと彼らは説明してくれた。
「あくまでも噂だけど。その連中、狩りと称して犯罪者でもないNEXTを大勢で追いたてて、嬲りものにしてるって話よ」
「狩りって……人間をかよ?」
「何それ、ひどい! そんな奴ら、全員逮捕しちゃえばいいのに!」
 女王様の憤慨はもっともだ。
 他のメンバーたちも一様に眉間にくっきりと皺を刻んでいる。
「行方不明になった人もいるようですが、今のところ証拠がないらしくて警察は動いていません。誰がメンバーなのか把握しているのはリーダー格だけのようですし、まだまだ実体の掴めない謎の組織ですからね」
「そんなのに目をつけられたらたまったもんじゃねーな」
「ええ、だから少しは自重してくださいとお願いしているんです。それでなくても虎徹さんは、普段から人助けのためなら場所もタイミングもまったく気にせずに能力を使って、悪目立ちすることがありますから」
「…………確かにあるなぁ、そういうとこ」
「……ですね」
 なぜそこで、みんなして頷くのだろう。
「えっ、俺ぇ? いや、俺は大丈夫だろ」
 だってヒーローだし。
 そんなのに捕まるほど迂闊でもねーし。
 自分自身を指差して、けろりと答えた虎徹に、仲間たちは生温い視線を送ってくる。
「……分かってないわねぇ。そういうあんたが」
「きみが」
「おまえが」
「あなたが」
 みんなバラバラに話し始めたはずなのに「一番危ないと思う」という部分で、不思議なほど全員の声がピタリと揃った。

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