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【モブ虎/2】危険な接待 【5】/完

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「……さん、……さん!」
 耳元で誰かが呼んでいる。よく知っている声だ。
(……あれ?)
 ぼんやりと浮上してきた意識をその声が揺り起こす。

「起きてください、虎徹さん!」
「えっ?」
 突然ぱちりと目が覚め、瞬きしながら姿勢を直した虎徹は、そこがテレビ局の控え室であることに気づくまでに数秒かかった。
「本気で居眠りしてましたね? のん気な人だな、まったく」
 呆れ顔でため息をついているバーナビーがちらりと視線を落とした先、虎徹が突っ伏して寝ていたテーブルには涎の跡が。
(あ、やべっ)
「ワリィワリィ」
 慌てて服の袖でそれを拭いながら、虎徹はへらっと笑った。内心ひどく大きな引っ掛かりを感じながら。
(なんっかひでぇ夢見てた気がするんだけど……)
 夢は目覚めた瞬間から色褪せて、風に舞う塵のように記憶の棚から消えていく。
 しかし夢を見ている最中、感じていたであろう苦しさや悲しさはまだ残っている。その証拠に胸が押し潰されそうに重苦しくて、痛い。
(うたた寝がまずかったか)
 無理のある体勢で眠っていたからきっと苦しくなったのだろう。そう思ったのだが。
「どうして泣いてるんですか?」
「へ?」
「涙の跡、ついてますよ。悲しい夢でも見たんですか?」
 バーナビーに問われて初めて自分の睫毛が濡れていることに気がついた。
 長くて形のいい指にスッと左の目尻のあたりを撫でられて、戸惑いに視線が泳ぐ。
「いや、悲しいっていうより苦しいっていうか……」
 上手く言葉にできず、口の中でごにょごにょやっていると、バーナビーがまた深々とため息をついた。
「もうじき本番なんですから、そんな顔してないでちゃんとヒーローらしくしててください」
「ハイハイ、分かってますよぉー。ちゃんとするって」
 両手を肩の位置まで挙げて降参のポーズを取る。
「ってか、バニーちゃん張り切ってんね」
「僕は普通です。あなたが緊張感足りないんですよ」
「あっそ」
 いつものように軽口を叩きながら、しかし心は重く塞いだままだった。



 それからほどなくして二人はスタジオでインタビューを受けた。ヒーローの特集を組んだテレビ番組の収録だ。
 慣れた素振りのバーナビーと違って笑顔を引き攣らせたまま収録を終えた虎徹は、帰りの車中で疲れたと連発し、盛大に伸びをした。
「結局今日は一日、取材だの何だの……そんなんばっかだったなァ」
「いいじゃないですか。事件は何も起こらなかったんですから」
「まぁ、そらそーだけどよ」
 同じスケジュールをこなしながら、涼しい顔をしている相棒を横目に肩を竦める。
 朝から丸一日、バーナビーと二人してテレビカメラに張りつかれていたのだ。わざわざ市内のあちこちに移動してロケまで行った。トドメが先程スタジオで撮り終えたばかりのロングインタビューで、虎徹はずいぶんとくたびれてしまったのだが、バーナビーの方はさほどでもないようだ。
「バニーちゃん、いっつもこんなことやっててよく平気だな。テレビのインタビューとかさ、疲れねぇ?」
「いいえ、べつに。仕事ですから」
 人気者の相棒は慣れているのか、あっさり答えた。
「バーナビーくんはキミとは違うの。それよりタイガー、例の件、これからだから。忘れずにしっかり頼むよ」
 同じ車に同乗していたロイズ氏からも突っ込まれ、ついでに嫌な用件まで思い出させられて、虎徹は思わず肩を落とす。
「ああ……ハイ」
「これから何か用事でも?」
「スポンサー様からのお呼びだってさ。賠償金の件でな」
 ようやく仕事が終わったところだというのに。
「そうですか」
「けど、なんでオフィスじゃなくてシティホテルに呼び出しなんだろーな」
「……ホテル?」
 不思議に思って呟いた一言に、隣でバーナビーも怪訝そうな顔をした。答えたのはまたもロイズ氏だ。
「たまたま今夜CEOがパーティーを開くらしいよ。キミが無駄に壊したビルの持ち主たちも呼ばれているそうだ。本当は僕も一緒に行くつもりだったんだけど、先方がタイガーだけでいいって言うもんだからね。多少ムチャなこと振られても、賠償金の支払い条件以外はとりあえずハイハイってなんでも言うこと聞いて、愛想よく振舞ってきてくれたまえよ。直接頭を下げれば向こうも気が済むだろうから、くれぐれも粗相のないように。いいね?」
「へーい」
 気が向かないまま相槌を返し、やがて重い足取りで車を降りた。

 その日、虎徹が呼び出されたのはゴールドステージにある有名ホテル。しかも指定された部屋は、最上階にあるVIP御用達のインペリアルスイートだ。
「……ったく、ヒーローはピザ屋のデリバリーじゃねえっての」
 高層階直通のエレベーターに乗り込み、虎徹は小声でぼやいた。賠償金の件は全面的にこちらが悪いとはいえ、謝罪しろとホテルにヒーローを呼びつける連中がまともであるとは思えない。
 切り取られた窓から地上の景色がぐんぐん遠ざかっていくのを眺めながら、同じくらいのスピードで嫌な予感がせり上がってくるのを感じていた。
 そして、
「お待ちしておりました。ワイルドタイガー様ですね?」
 きっちりと測ったようなお辞儀と慇懃な口調で出迎えた、痩せぎすの男。その眼を見た瞬間、嫌な予感は当たったと思った。
 だが、もう引き返せない。
「は、はぁ……」
「こちらへどうぞ」
 やわらかすぎる絨毯のせいか、一歩進むごとに沈んでいくような感覚に囚われながら、虎徹は案内された部屋へと入っていった。



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