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【モブ虎/2】危険な接待 【1】

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 その日、虎徹が呼び出されたのはゴールドステージにある有名ホテルの一室だった。
 しかも、最上階にあるVIP御用達のインペリアルスイートだ。
「お待ちしておりました。ワイルドタイガー様ですね?」
 きっちりと測ったようなお辞儀で出迎えた痩せぎすの男が、低い声音と慇懃な口調で尋ねてくる。服には皺一つなく、髪もきっちりと撫でつけてある。直接ご挨拶するようにと会社から言い渡された「大切なお客様」の秘書か、もしくは執事というやつだろうか。
「は、はぁ……」
「こちらへどうぞ」
(参ったなぁ、賠償額いくらだっけか)
 男の案内で広々とした部屋を抜けて奥の間へと足を運びながら、虎徹はため息をついた。凝った室内装飾、洒落たインテリア。足音をすべて吸い取ってしまうやわらかすぎる絨毯。どっちを向いてもブルジョワジーの匂い漂う空間だ。
(うわー、この絨毯すんげぇふかふか! ピアノまで置いてあるよ。誰か弾く奴いるのかね)
 内心で茶化しながらも、早くも帰りたい気持ちでいっぱいになってくる。
 何しろ閉ざされた扉の向こうで待ち受けているのは、つい先日、彼が破壊したビルや広場の所有者たちだ。聞いたところによると、運悪くたまたまスポンサー会社と縁のある人物が含まれていたらしい。

『今回は相手がまずかったね』
 渋い表情でロイズ氏は言った。
『大株主と重要な取引先を同時に怒らせたとあっては、さすがに致命的だ。それでもなんとかスポンサーを降りることだけは思い留まってもらったけど、キミ相当印象悪くなってるから。誠心誠意謝ってきてくれないと困るよ』
 そうしてたっぷりお説教を食らった後、虎徹はここへ謝罪に行くようにと指示を受けたのだ。
『今夜、CEOがパーティーを開くらしい。キミが無駄に壊したビルの持ち主たちも呼ばれているそうだ。本当は僕も一緒に行くつもりだったんだけど、先方がタイガーだけでいいって言うもんだからね。多少ムチャなこと振られても、賠償金の支払い条件以外はとりあえずハイハイってなんでも言うこと聞いて、愛想よく振舞ってきてくれたまえよ。直接頭を下げれば向こうも気が済むだろうから、くれぐれも粗相のないように。いいね?』

 嫌です、なんて言えるはずがない。
 以前ベン氏にも諭されたように、正義の壊し屋、間抜けな賠償金野郎と世間に揶揄されようとも変わらずにヒーローとして活動できるのは、すべてスポンサー様と所属会社のおかげなのだ。
 まったくもって気は進まなかったが、やはりここは耐えるしかないだろう。
(どんなお偉いさんがいることやら……)
 わざわざ呼び出すくらいだから、きっとネチネチ嫌味を言われるに違いない。
(ま、仕方ねぇか)
 覚悟を決めて、ドアノブに手をかけた。
 ところが。
「やぁ、ようこそ! 待っていたよ、ワイルドタイガー」
 予想は大きく覆された。歩み寄ってきた壮年の人物はにこやかな笑みを浮かべながら、握手を求めてきたのだ。
「さぁどうぞ、座ってくれたまえ」
「あ……ど、どうも」
(この人がスポンサーのCEOか? 結構若いな)
 もっと老齢の古狸っぽい人物が待ち受けているのではと身構えていたのだが、どう見ても五十代ぐらいだ。パリッとした仕立てのいいスーツを身に纏っている。おまけに友人のように親しげに肩を抱かれてイスを勧められ、手ずからコーヒーまで淹れてもらってしまった。
 てっきり頭ごなしに怒鳴られると思っていたから、なんだか拍子抜けだ。
 聞けば、肝心の謝罪相手はまだ到着していないらしい。だとしてもフレンドリーすぎる気はしたのだが。
「すまなかったね、わざわざ足を運んでもらって」
「いえいえ、とんでもない!」
(なんだよ、聞いてた話とぜんっぜん違うじゃねーか)
 さてはロイズさんが大袈裟に言ったんだなと、日頃から口うるさい上司の顔を思い浮かべて、虎徹はホッと胸を撫で下ろした。
「こちらこそご迷惑をおかけしてしまって」
「まぁ確かに最初は社内でもちょっとした騒ぎになったんだが、ここだけの話、彼らは昔からワイルドタイガーの大ファンでね。もちろんこの私もだ。しかも最近、君はまた新たに脚光を浴びているだろう? だからどうしても直接会って話がしたいってお願いされてしまったんだよ」
「あ、なんだ。そーなんスか?」
 肩からスーッと力が抜けていく。
(そっか……俺のファンなのか)
 よかった。やはりこの街にはヒーローを愛する人々が大勢いるのだ。
 虎徹は幸せな気持ちになった。
「だったら最初からそう言ってくださいよ。正直すんげぇビビッてたんスから」
「ハハハ、それは申し訳なかった。アポロンメディアさんにはちょっと言いづらくてねぇ。特にあのロイズさんには」
 茶目っ気たっぷりに笑うCEOと顔を見合わせ、なるほどと頷き合う。出されたコーヒーで緊張に渇いていた喉を潤しながら、しばし上司の噂話に花が咲いた。
「まぁそういうわけだから、ワイルドタイガーが大好きな我々にちょっとの間サービスしてもらえれば、賠償額はかなり大目に見てもらえるはずだよ」
「そりゃあ助かります!」
 来た甲斐があった。ロイズさんに良い報告ができそうだ。密かに胸を躍らせていると、最初に虎徹を出迎えた秘書風の男が現れ、先程と同じく慇懃な口調で準備が整いましたと告げた。きっと客が到着したのだろう。
「あ、じゃあ俺、さっそく……」
 挨拶しようと勢い込んで立ち上がる。
 いや、違う。立ち上がろうとしたのだ。その瞬間、身体がぐらりと傾き―――――気づいた時には床に倒れ込んでいた。
(…………あ、れ?)
 思考がぼんやりと霞んでいく。手足がまるで動かない。重力がいきなり十倍ぐらいになった感じだ。
(……なんだ、これ…?)
 ひどい眩暈に視界がぐるぐると回りだす。すると先程の男が上から覗き込んできて、ニヤリとほくそ笑んだ。
「夜は長い。いっぱいサービスしてくれたまえよ、ワイルドタイガー」
 毒を含んだ笑みに、ようやく謀られたのだと気づく。
「…………っ」
 だが、言い返す間もなく、意識は闇に飲み込まれていった。


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