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Smell The Roses 【1】 

[ Smell The Roses]

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 やたらと広い間取り。テーブルに飾られた花。キングサイズのベッド。
 VIP扱いで案内された老舗ホテルのインペリアルスイートを見回して、虎徹はため息をついた。
「……ホントにここ泊まるのか? 俺とおまえで?」
「仕方ありませんよ。会社命令ですから」
 さらりと返してきたバーナビーの口角がやや上がっているように見えるのは、気のせいだろうか。
「けどなぁ」
 ゴージャスなのは悪くないが、落ち着いて眠れる気がしない。
 バーナビーと二人きりなら、なおさらだ。

 ヒーローTVとは別の特番に出演した虎徹たちは、局側からホテルに案内されたのだが、もちろん最初は泊まるつもりなどカケラもなかった。いくら取材で遅くなったとはいっても、同じシュテルンビルト市内だ。車を拾えばすぐアパートに戻れる。だから虎徹は何度も断ったのだが。
「そうおっしゃらずに! もう上の階に部屋を押さえてありますんで」
「いや、ホントに俺は結構ですって」
「お願いしますよ~。実は今回の特番のスポンサー、ここのグループ企業なんです。ヒーローのお二人が泊まったとなれば、ホテル側にプレミアが付きますんで」
「え、そうなの?」
「はい! 特にお二人は今、大人気ですから」
 プロデューサーの揉み手には少々げんなりしたが、ロイズ氏からも電話が入って、結局泊まることになってしまった。

(ベッドは一応二つある…………そりゃそうか)
 シュテルンビルト市民の皆様は現在人気ナンバーワンのイケメンヒーロー、バーナビー・ブルックス・Jrがまさか相棒のおじさんヒーローに突っ込みたがっていて、日々アプローチしてきているなんて知るわけがないのだから。虎徹にとってはいくら部屋が広くとも、バーナビーと同じ部屋に泊まるのは危険極まりない状況だが、それを訴えるわけにもいかない。
「ひょっとして隠しカメラでも仕掛けてあったりしてな。実はドッキリでした、とか」
「まさか。さすがにそれはないでしょう。僕以外のヒーローは名前も素顔も明かさないというのが鉄則ですから」
 なんとかして危険を回避しようと試みるが、軽く躱されてしまって焦る。
(いや、まだだ。まだ諦めるな、虎徹!)
「こんなすげぇ部屋だと下手に汚せないから逆に気ィ遣っちゃうよなァ、ハハハ」
「そうですか?」
「後からいろいろ言われちゃマズイだろ? 特にベッド周りとか、さ……」
「なるほど」
 さり気なく、さり気なく。
 今夜は何もせず眠るという方向に会話で誘導しようとした虎徹だったが、兎ちゃんはそれほど甘くなかった。
「全部終わって眠るときに両方のベッドを使えば問題ないでしょう」
 鉄壁の笑顔が恐ろしい。
「全部終わってって……何が?」
 怖すぎて、聞きたくもないのに思わず訊いてしまったくらいだ。
 だがバーナビーはその質問をさらっと無視して、腰が引けている虎徹の腕をがっちりつかむと、笑顔のまま歩き出した。
「とりあえずバスを使いましょうか」
「ちょ、ちょ…………なんで俺まで?」
「広いから一緒に入っても大丈夫ですよ」
「いやいやいやっ、そうじゃなくてさ!」
 違うだろ。間違ってるよな?
 懸命に訴えても馬耳東風。いや、兎の耳に東風か。どっちにしろ聞いてない。
 トドメは極上の笑顔と甘い囁きだ。
「いつまで経ってもウブですね、虎徹さんは」
「……っ!」
 ぞわっときた次の瞬間、気が遠くなりかけたが、ここで意識を手放したら何をされるか分からないので懸命に耐えた。

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Smell The Roses 【2】 

[ Smell The Roses]

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「……絶対おまえの趣味変だぞ、バニーちゃん」
 自分で言うのもなんだけどさ、と力なく笑うしかない。
 そんな自虐に満ちたツッコミも結局「虎徹さんはジョークがお好きですね」なんて軽やかに躱されてしまった。
(そうじゃねぇんだよぉぉぉ――――っ!)
 心の叫びはなかなか届かない。バスタブの湯は見る見るうちに溜まっていく。
 ふと気づけば、これまたやたらに広いバスルームでイケメンの後輩にシャツのボタンを外されている中年が約一名。なんともやるせない展開だ。
「だからっ、こういうのはさ……やめようぜ」
 あっという間に脱がされかけたシャツ。ベルトを外され、ジッパーまで下ろされてしまったズボン。その素早さに慄きながらも、虎徹はやんわりとバニーの手をつかんで引き剥がす。
「確かに最初は酒の勢いでついやっちまったけど、やっぱダメだろ。なし崩しでこういう関係を続けんのはさ。俺たち仕事のパートナーなんだし」
 キッパリと告げて、一歩離れた。
「……虎徹さん?」
「分かってくれよ、バニー」
 視線を外したまま背中を向ける。
 そもそもの間違いは、最初に二人とも酒に酔った状態でイタシテしまったことだ。男となんて冗談じゃない。普通ならその一言で終わるはずなのに、長らくご無沙汰だった身体は意外なほど刺激に弱く、ついうっかり流されてしまった。
 おかげで腰のだるさや疼痛と共に目覚めた翌朝の気まずい空気といったら……。記憶が飛んでいないことに内心かなり気落ちしたが、それでも一夜の過ちで終わらせるつもりでいたのだ、その時点では。なのにバーナビーときたら相変わらずモテモテのくせして、その日以来おじさんシンドロームにかかってしまったようで、アプローチは日毎濃厚になっていく一方。ジェイクを倒してからはエスカレート気味で、一段と押しが強くなった。
 とはいえ躱しきれずに何度もベッドインしてしまい、同じ轍を踏みまくっている状態の虎徹はいささか詰めが甘いのかもしれない。
「どうして今さらそんなこと言うんですか? もう何度も僕を受け入れてくれてるのに」
「あー……まぁ、そうなんだけどよ」
 確かにそうだ。お説ごもっとも。そんな気ありませんでしたなんて言い訳は、いくらなんでも遅すぎる。
 だいいち――――
「それとも僕を焦らしてるんですか?」
「……ぁ」
 後ろから抱きついてきたバーナビーに二つの胸の突起を同時にキュッと摘まれて、虎徹はびくんっと背をしならせた。本人が何をどう言おうと、慣らされつつある身体が勝手に反応してしまうのだから、始末が悪い。
「よ、よせって……」
「嫌じゃないでしょ? ここ、好きですよね」
 バーナビーの繊細な指が敏感な突起を押し潰したり引っぱったり、捏ね回して弄ぶ。
「……んっ…んんっ!」
 たちまちぞくぞくと甘い痺れが背中から腰まで駆け抜け、男の自分には不似合いな甘ったるい喘ぎが洩れた。それに気をよくしたバーナビーがさらに乳首を嬲ってくる。
「ほら、もうこんなに硬くなってる」
「ちょ……い、痛いって」
「嘘はいけませんよ、おじさん」
 背後からぴたりと身体を密着させられ、耳の穴に舌を差し入れられる。
「そろそろ舐めたりしゃぶったりして欲しいんじゃないですか?」
 そんな意地の悪いことを囁きながら、くすりと笑われて、カッと全身が火照った。ただし感じているのが怒りばかりではないから、もう終わってんじゃないのかと自分で思う。
 バニーの舌がねっとりと絡みつき、強く吸われる瞬間を思い出すと、まだ触られてもいない分身が硬くなったような気がした。
(くそっ!)
 男のプライドとか、先輩としての矜持とか、簡単には振り捨てられないものが虎徹自身を責める中、抗いがたい快感の波に攫われそうになって思わず目を閉じる。
 すると、くるりと身体を反転され、バスタブにもたれさせられて、ズボンと下着をまとめて腿の付け根あたりまでずり下げられた。おかげで大事な息子はすっかりエロ兎の目に晒されてロックオンだ。
 やばいなんてもんじゃない。
「うっ…!」
 案の定、身構える暇もなく三ヶ所同時に愛撫を与えられて、虎徹は息を呑んだ。
 いつの間か頭を擡げていた雄芯を根元から扱かれ、同時に右の乳首を再び指の先で、左側を口中に含まれて舌で転がされて攻められる。しかもその触り方が、大事に扱ってくれるのは大変ありがたいのだが、微妙にじれったくてうっかり自分から腰を押しつけてしまいそうになるところが実に恐ろしい。
「……っ、ん、んんっ!」
 特に口の中でねっとりと唾液を絡められる感触はなんとも言い難く、勝手に腰が疼き出して焦った。みっともない声を堪えるのが精一杯だ。
 脚の間に割り込まれているので股を閉じることもできず、後ろはバスタブに遮られて、逃げることもできない。おまけに真面目で優等生のバニーはこんなときまで熱心で、少しも手を抜いてくれない。
「あっ、あぁ…………くっ、うぅ!」
 どんどん追い上げられて、先端からトロリと溢れ出してきた先走りの雫が、虎徹の分身を扱くバニーの手のひらの中でくちゅくちゅとか、にちゃにちゃとかいやらしい音を立て始めた。
 この効果音は結構絶大だ。恥ずかしさが一気に増す。
「ちょっ……バニー、まさかこのまま……?」
 いくら感じていても、若い頃のようにあっけなく放出することはなくなったが、ずっと刺激を受け続けていたら達してしまうだろう。こんなふうに自分だけ感じさせられて出すのは嫌だと目で訴えると、大丈夫、まだイカせませんよ、とバーナビーが笑った。
「せっかくだから一緒に入りましょうか」
 さわやかな笑顔で告げた相棒に、結局上も下も全部脱がされて、湯の溜まった大きな浴槽に引っぱり込まれる。
 うっすらとピンク色をした泡がいっぱいの浴槽からは、何やらいい香りがした。

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Smell The Roses 【3/完】 

[ Smell The Roses]

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「薔薇の香りがするバスバブルのようですね」
「……バラの香り~?」
 女性ならもちろん喜ぶだろう。部屋がスイートなのだから、用意してあるアメニティも多少洒落ていて当たり前なのかもしれないが。
(どう考えても似合わねぇだろ)
 バラの香りの浴槽で乳繰り合う男二人。――――痛い。痛すぎる。
 しかしバーナビーは上機嫌で濡れた肌にあちこちキスを落としながら、いい香りですね、なんてつぶやいている。
「そりゃおまえには似合うだろうけどさ……」
 おじさんはもう、何から何まで恥ずかしいよ。居たたまれないよ。そう訴えたいのに今度はキスで唇を塞がれて、舌を絡め取られてしまう。
「……ふっ、うぅ…ん」
 どうしてこいつとのキスはこんなにも甘いんだろう。普通なら気持ち悪いって突き飛ばして、飛び退くような場面なのに、自分からバニーの腰に腕を回したりして。
「あ…っふ、ぅ……」
 不思議に思いながらもすぐ口づけに夢中になって、くらくらと眩暈がするような気持ちよさに陶然となった。
 バスタブから立ち上る湯気と濃厚な薔薇の香りに、さらに煽られていく。
「虎徹さん、キス好きですよね。気持ちいいですか?」
 飲み込みきれなかった唾液で濡れた唇を舌でぺろりと舐められて、また頬が熱くなる。
 泡の下で屹立した雄芯に長い指が絡みついてきて、再び根元から先端まで丁寧に扱かれると、ゾクゾクした震えが腰にきた。
「あ、その先っぽダメ……」
「ん? ここですか?」
「だから……よせ…って」
 くびれのあたりを擦りながら同時に先端を親指で引っかかれて、思わず目尻に快楽の涙が滲む。そうして弱い部分を突付かれながら、泡だらけになった身体を撫で回されるのだからたまらない。
「あぁっ…ん!」
 自分の喉から変な声が出るたびにキューティーエスケープしたくなった。だが、ここまできたら虎徹自身も引き返せない。何とかしてこの熱を吐き出してしまわないと、おかしくなってしまう。
「あっ、あっ…………だめだ、バニー……そんなにされたらっ」
「出そうですか? いいですよ、ここならいくら汚しても構いませんから」
「そ……ゆ、こと…………ぁ、ああっ!」
 そのキレイな顔で言うんじゃねぇと怒鳴り返してやりたくても、こぼれ落ちるのは荒い呼吸と、みっともなく感じまくっている喘ぎ声ばかりで、言葉などろくに出てこない。あちこち弄り回された挙げ句、双丘の割れ目にまで滑り込んできた遠慮のない指に狭い器官の中を掻き回されると、もう限界だった。
「……くっ! あ……あぁ…っ!」
 ドクドクと迸る白濁した飛沫が浴室のタイルや湯の中に飛び散る。たいして目立たないが、思ったよりたくさん出してしまったようだ。すっかり息が切れていた。
 肩口に当たるバニーの呼気も熱く乱れているが、双丘の狭間に押し当てられている熱い塊は残念ながらまだ果ててはいないようで、恐ろしいほどの硬度を保っている。
「好きですよ、おじさん」
 耳元にふいに甘い囁きが落ちてきて、虎徹は戸惑った。
 いや、このタイミングでそんなセリフ言われてもさ。どうすりゃいいんだ、と視線をうろつかせる。気持ちよかったとでもつぶやけばいいのだろうか?
(まぁ確かに、うっかり昇天しそうなくらいヨカッタけど)
 どうして毎度こうなってしまうのか、ここでなんと返すべきなのか。
「……俺にはよく分かんねぇわ」
 この歳になると、好きだの愛してるだのというセリフはハードルが高くなるのだ。なのにバーナビーはちっとも加減してくれないし、逃がしてくれる素振りもない。
 少し身体をずらしたせいで視界の端に捉えてしまった若い雄は、やはりガチガチに硬そうで、頬が引き攣る。どう見ても臨戦態勢だ。
「さ、最後までここですんのか?」
「汚すのが嫌なんでしょう? 立ち上がって、壁に手をついて。そうすればのぼせたりしませんから」
「いや、あのね。おじさんバニーちゃんほど体力ないからさ」
 こんな場所でしちゃうとね、出すだけで結構くたびれちゃうんだよ、と続けるはずだった言葉はあっさり遮られてしまった。
「後ろから抱えてあげますから大丈夫ですよ」
「あ、そう」
 もしかするとこれは朝までコースかもしれない。
 できれば今すぐ寝かせて欲しいのだが、無理な相談だろう。
「お、お手やわらに」
「努力します。おじさんにいっぱい感じてもらえるように」
「……じゃなくて」

 頼むから一回で終わりにしてくれよ、という虎徹の願いは果たして叶うのだろうか。
 灯りがきらめくシュテルンビルトの夜は、まだまだこれからだというのに。

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オリオンをなぞって 【1】 

[ オリオンをなぞって]

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 バーナビーはキスをするのが好きだ。
 虎徹を唆し、蕩けさせる口づけ。行為の最中に交わす噛みつくような激しいキスはもちろんのこと、終わった後もすぐには離れようとせず、何度も唇を啄ばみ、汗ばんだ肌のあちこちにやわらかいキスを落としていく。
 胸元から脇腹、ヘソのあたりまで一つ一つ、ゆっくりと。
 まるで空に瞬く星を数えるように、小さなホクロを数えたりしながら。

「ここにもあった」
 舌が耳の裏側をしっとりと舐め上げる。
「んっ…………おい、バニー」
 飽きもせず触れてくる舌や唇の感触から逃れようと、虎徹はベッドの上で身を捩った。
「よせよ、くすぐったい」
 まだ身体中に甘い痺れが余韻となって残っている。乱れた呼気も整っていない。なのに汗の浮いた首筋だの腹だのをチュッと軽い音を立てながら吸われたりするものだから、なかなか鼓動が落ち着かない。
「終わったんだからどけよ」
 虎徹はバーナビーを押しのけようとしたのだが、その手を逆につかまれ、瞳を覗き込まれた。まだ情欲の焔を潜ませて、たっぷりと艶を含んだエメラルド色の双眸に。
「もう少しだけ。……嫌ですか?」
(あんなに出した後だっていうのに、足りねぇのかよ)
 狭い秘孔をたっぷりと濡らされたばかりの身としては苦笑するしかない。自分にも多少覚えがあるから、なおさらだ。
(若さってコワイねぇ)
「べつに嫌じゃねーけど。おまえ、なかなかやめねぇだろ」
 ただのじゃれ合いだと思って気を緩めていると、あっさり第二ラウンドに突入されたりするので、ここはきっちり宣言しておく必要がある。
「今夜はもうやんねーぞ。これ以上はなしだかんな」
「分かりました。でも、キスだけならいいですよね?」
 バーナビーは残念そうにしながらも食い下がり、整った顔を近づけてきた。
 軽やかに触れる唇。鼻先や唇が頬を掠めるたびに妙にくすぐったくて、笑い出しそうになる。本当はさっさとシャワーでも浴びに行った方がいい。頭では分かっているのだ。しかしまだ立ち上がるのは億劫だし、虎徹としても決して嫌な気分ではないから、ついつい返事が甘くなってしまう。
「……まぁ少しぐらいなら、いいけどよ。俺、汗臭くねーか?」
「全然気になりません。虎徹さんの匂い、好きですから」
 そう言って再び覆い被さってくるバーナビーの肌もまだ完全に汗は引いておらず、しっとりとした手触りで、わずかに火照りを残していた。
「あっそ。ありがとよ」
 そんなに俺のことが好きなのかねぇ。
 思わず口の端が緩む。胸元に吸いついてくる若い恋人の頭を手のひらでそっと撫でてやると、じんわり胸の奥にあたたかいものが広がっていった。
 だが、年上の余裕を示していられたのもそこまでだ。
「……ぁ」
 いきなり胸の突起を吸われて、背筋がぞくりと震えた。

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オリオンをなぞって 【2】 

[ オリオンをなぞって]

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「ちょっ、そこは……反則」
 慌てて押し留めようとしたが、もちろんバーナビーは何も答えてくれず、反対側の突起まで音を立てて吸われてしまった。
「あっ! あぁ…っ」
 自分の意思に反して、勝手に反応してしまう四肢。知らぬ間に口からこぼれ落ちている声。
 終わったばかりで身体の奥底に燠のように燻っていた熱が、再びじわじわと煽られていく。行為の最中にもさんざん弄られていた胸の突起は過敏になりすぎているのか、ヒリヒリして痛いぐらいだ。
「お、おい。もう、よせって」
「悦くないですか?」
 それじゃあと突起が解放されて安堵したのも束の間、バーナビーが少しばかり身体の位置を下げたかと思うと、腰骨に軽く歯を立てられた。
「えっ?」
 そしてすぐに舌で同じ位置を舐められ、そのまま舌は脚の付け根へ。
 危険領域へと侵入していく。
「えええっ?」
 さすがにそれはマズイだろうと焦った虎徹がジタバタしても、すでに腰はがっちりホールドされていて逃げられない。
(……やべぇ)
「いい加減にしろ、バニー! 今夜はもう打ち止めだって言っただろうが!」
「ええ、分かってます」
 仕方なく一喝してやったら案外素直に聞いてくれた。と、思ったのだが。
「だったらとっとと離して……」
「ですから、虎徹さんは何もしなくてもいいですよ。もちろん僕だって無理やり最後までなんてしません。キスだけという約束は守ります、安心してください。ただもう少しだけ、あなたを可愛がらせて欲しいんです」
「かわ……」
 甘ったるい声でねだられて、虎徹は天を仰いだ。
(いやだからさ、おじさんが言ってるのはそういうコトじゃないんだよ)
 意表を突かれたせいか、反論がするりと喉から出てこない。
 今日は絶対流されないぞと誓ったはずなのに、バーナビーに不意を衝かれたせいだろうか。気づいた時には右の足首をつかまれていて、持ち上げられた足の指を口に含まれてしまったのである。
「お、おい……んっ!」
 指を一本一本ねっとりと舐められるたびに、ぞわぞわと震えが走った。気持ち悪いのに、なぜか下肢にどんどん熱が集まってくる。
 そこは胸の突起同様、バーナビーに触られるまではほとんど意識したことなどなかった部分だ。しかし男でも指と指の間などは思いのほか敏感な箇所らしく、舌を這わされるとたまらなかった。身の内に燻っていた燠を煽られたからか、よけい火がつくのが早い。
「それ……やめ…っ」
「どうして、です?」
 指を丹念に舐めていた舌が、やがて足の裏にたどり着いた。中央よりやや下あたりにある小さなホクロも、バーナビーによって暴かれてしまった弱点の一つだ。
「ここ……」
 確かめるように声を出しながら、舌先でホクロを突付かれる。すると一瞬、足裏から股間へとビリビリした痺れが駆け抜けた。
「ひっ! あ……あ、ぁ…っ」
「虎徹さんが感じやすいポイントですよね」
「ちがっ……ん、んんっ!」
 どうしてそんなところが、と自分でも不思議でならないが、確かに足の裏を舐められると驚くほど腰にくる。妙に弱いのだ。
「これはきっとシリウスです」
「シリウス? ……って、なんのはな……あっ、あぁ!」
 よく分からないことをつぶやきながら敏感な箇所をしつこく舐められて、だんだん息が上がってきた。もちろんそれだけで終わるはずがない。ぐいっと大きく脚を割り開かれて、あらわになった脚の付け根にも舌を這わされた。
「ちょっ、待てま……ぅ…んんっ!」
 上から強く腿を押さえつけられ、無防備に晒された付け根を舌でいたずらされて、思わず腰を捩り立てる。その動きがバーナビーの目から見れば、まるで誘っているようだなんて、少しも考えずに。
「……ぁ……やめ…っ」
「星の名前ですよ。冬の大三角形、覚えてませんか? オリオンの三つ星と一緒に見つけられる明るい星です」
 尖らせた舌先で際どいラインを擦られ、勃ち上がりかけている雄芯や淡い茂みの中をくすぐられる。
「だから、それが何…………やっ……そこ、触んな…ぁっ!」
 楔の根元を強く吸われると、すでに打ち止めだったはずの虎徹の分身がグンと頭を擡げて反り返った。それを見たバーナビーが小さく笑ったような気がするのは、カン違いじゃないだろう。
「ひっ……ぁ、ああっ!」
 根元だけでなく先端までしっかりと舐め上げられ、甘噛みまでされて、びくびくっと勝手に腰がうねる。
「ここにね、三つ星があるんですよ」
 舌先で突付かれたのは股の内側、関節ギリギリのあたりだった。
 会話の合い間に、そこをぬるりと舌が這う。
「な…に? …………あ、あぁ、よせ…って」
「三つ並んだホクロ。自分では見えないでしょうけど」
「……ホクロ?」
「本当の三つ星はオリオンの帯なんですけどね。あなたのはずいぶんいやらしい位置にある」
「ん…なの、知るかっ……あぁ!」
 くすりと笑われて、虎徹は必死で言い返した。

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オリオンをなぞって 【3】 

[ オリオンをなぞって]

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「お、おい、バニー! こんなの、ちょっとじゃ……っ!」
「触ってませんよ、手では」
 さっきまでの甘えモードはどこへやら。こちらを翻弄しながら、しれっと返してくるバーナビーがなんとも憎らしい。
「最後までしなきゃいいってもんじゃ…………あっ、そこ……触る、な…っ」
「でも事実ですから」
「……ですから、じゃ…ね…………やめろ、って……」
 下肢を押さえ込んでいる手の力を緩められるどころか、脚をさらに深く折り曲げられて、虎徹はかぶりを振った。
 だが、舌の位置は徐々に下がっていく。さらに際どいところを目指して。
「そこ…………やだって」
 思わず気弱な声が出た。ガクガクと下肢が震える。
 動いた拍子に中からトロリと溢れ出してきた蜜で、双丘の狭間は濡れていた。
 ダメだ、やめてくれと懸命に捩る腰を押さえる手も、秘孔の入り口を探る舌も容赦ない。
「すごい、もうヒクヒクしてますね」
「う、うそつけっ」
「嘘じゃありませんよ。ほら」
「ひっ…!」
 襞を舐められると、呼応するようにその部分が蠢いているのが自分でも分かった。
「中に欲しがって、ちょっと突付いただけで入り口が動いてるの分かりますか? すごくいい眺めですよ」
「この…………くっ、うぅ…っ」
 さらに舌を中まで差し入れられて呻く。
 どんなに抗ってみても、与えられる刺激は強烈だった。そのくせ肝心な奥の方までは届かないから、もどかしくてなおさら熱が高まってくる。
「あっ……あ、あ……」
(くそっ、やばい…………こんなんじゃ、また……)
 堪えきれずに先端から蜜が滲んでいたらしく、バーナビーにぺろりと舐められてジンと甘い痺れが腰に広がった。
「……くっ、ぅ…」
 あと少しでイケそうなのに、まだ達するには足りない刺激を求めて身体が疼いている。呼気も一段と乱れ、このままでは変なことを口走ってしまいそうだ、と思った時―――――
「どうします、おじさん?」
 絶妙のタイミングでバーナビーが問いかけてきた。
「何が、だよ」
「今夜はもうそろそろやめにしておきますか?」
「てめっ……ぁ」
(ここでやめるとか、どんだけクソ意地悪いこと言ってんだ。拗ねてんのか? 相手してやらなかったから拗ねてんのかよ?)
 怒鳴り返してやりたくても、唇からこぼれ落ちているのは恥ずかしい喘ぎばかりで、さっきからまともなセリフなどほとんど出てこない。
「あっ、あっ…………頼むよ、バニー」
「なんです?」
「お……俺っ、もう……」
 勝手に上擦ってしまう声が限界だと吐露していた。
 こんな時に目など合わせたくないのに、バーナビーはわざわざ上から覗き込んでくる。嬉しそうな表情をして。
「最後までちゃんと言ってください」
「…………我慢、できねー……」
「イキたいですか?」
 ガクガクと首を縦に振る。すると、さっきまで舌でいたずらされていた後孔に、バーナビーの指が触れた。
「こっちも? 中をぐちゃぐちゃに掻き回して欲しいんですか?」
「……して、くれ」
 敗北を認めた直後、情欲を宿したエメラルドの瞳がスッと細められたかと思うと、両手でしっかりと脚を抱えられて。
「いっ…………ああ、あっ!」
 熱く滾ったモノを蕾にズブリと突き立てられた。
 その硬さと圧迫感。本日二度目の挿入で、しかもろくにインターバルがなかったというのに、さっきよりも大きい気がして虎徹は眩暈を感じた。

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オリオンをなぞって 【4】/完 

[ オリオンをなぞって]

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 一気に奥まで突き立てられた欲望の証が、腹の中でドクドクと脈打っている。この有り様ではすぐにでも意識を持っていかれそうだ。
「く、るし……」
「大丈夫ですよ。まだ中が濡れてるから痛くはないでしょう?」
「ひっ! あぁ……あ、そん…な、こと」
「入り口だってちゃんと緩んで、広がってる。あなたのココはいやらしいから」
「やっ……まだ、早…………ああぁっ!」
 笑いながら揺さぶられて、ひと際高い悲鳴が上がった。躊躇なく律動を開始され、硬く屹立していた物の感触が内側の粘膜を抉る。ギリギリまで引き抜いたかと思うと一気に最奥を突いてきて、穴の中を思いきり掻き回すように大きくグラインドされると、足の先まで痺れが駆け抜けた。
「……はっ、ぁ…んんっ……」
 嬌声は隠しようもないほど濡れていて、すでに息も絶え絶えだ。
 やがて大きく腰を回す動きから一転して、素早い抽挿で小刻みに奥を突付かれると、やわらかく敏感な内壁を何度も強く擦られて、じわりと涙が滲んだ。
「ほら、奥までトロトロですよ。絡みついてくるの、分かります?」
「あっ! あぁ…………やっ…ぁ」
 おまけに時折わざとリズムを変えてくる。意地の悪い動きだ。
「もっと欲しいって正直に言ったらどうです?」
「う、るせ……」
 余裕ぶりやがって。そう怒鳴りたくても声が出てこない。
 だが、濡れて重たくなった睫毛を懸命に瞬かせて、自分に伸しかかっている男を見上げたら、額や首筋にきれいな玉の汗が浮かんでいた。表情にセリフほどの余裕は窺えない。
 容赦のない腰の動きは、すなわち衝動と欲求の強さを表しているわけで――――
(あーあ……んな、必死になっちゃって、まぁ。ヒーローいちのイケメンがこんなおじさん相手になんてザマだよ)
 可愛すぎだろ、と笑い出しそうになった。
 その結果、
「まだまだ余裕ですか? だったら何も考えられなくしてあげますよ」
 緩んだ表情をバーナビーに誤解されて、腰だけを高く抱え上げられ、乱暴なくらいに何度も激しく突き立てられるというオプションが付いてしまったのだが。
「ひっ! ちょ……ちがっ……あ、あああっ! よ、よせ…って」
 文字通りぐちょぐちょと音がするほど激しく中を掻き回されて、悲鳴にも似た嬌声を上げさせられた。
「虎徹さん…………虎徹さん」
 それでもしだいに混濁していく意識の中、荒い息の下から何度も名前を呼ばれて、熱すぎるほど火照った身体の中で胸のあたりだけが妙にくすぐったくなる。
(……ったく、つくづく甘いなァ俺も)
 自嘲しながらも、気づくとバーナビーの背中に腕を回していた。
「あっ、あっ…ぁ」
「はっ……は…ぁ」
 二人の荒い呼気が徐々に重なっていく。
 腰の動きも。
「んっ……んっ!」
「あっ……あぁ!」
 そして心臓が今にも張り裂けそうなくらい鼓動が速くなってきた頃。
「も……イク」
「僕も…です」
 うわ言のように洩らした一言に答えるバーナビーの声が聞こえてきて、中がうねるように動いた次の瞬間、二人に解放の時が訪れた。
「――――くっ……!」
 バーナビーが中に放つのを感じて、虎徹もまたびくりと腰を戦慄かせる。
 ガクガクと震える手足。背中に縋る指に力がこもる。
 ぐっと押し寄せてくる快楽の波に攫われて。
「あっ…………は、あぁぁ――――……っ!」
 目の前が白く弾けた直後、ろくに触られてもいない砲身から白濁した雫を撒き散らして果てていた。


 苦しいほどの呼吸が少しだけ落ち着くのを待つ間も、汗が首筋を流れていく。
「……ったく、二度目だってのに……飛ばしすぎだろ」
 ぜえぜえ喘ぎながらつぶやくと、虎徹に覆い被さるようにしてベッドに倒れ込んでいたバーナビーがわずかに面を上げた。
「……すみません。つい、夢中で……」
 照れた顔が予想外に可愛かったので、文句はそこで途切れた。
「…………次は、加減しろよ」
「はい」
 噛み合わない部分はたくさんあるから、なんだかんだと文句は多い。ケンカもする。
 それでも――――
(ま、相性は悪くねぇ…………いや、最高かもな)
「好きですよ、虎徹さん」
「……ああ…………俺もだよ」
 仕事でも、プライベートでも、いい相手にめぐり会えた。その幸運に感謝しながら、二人はシーツの上で甘いひと時を味わっていた。
 今度はホクロではなく幸せの記憶をたどりながら。

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【モブ虎/1】痴漢電車 【1】 

[ 妄想Adapter]

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「……ふぅ、間に合った」
 発車間際に慌てて飛び乗ったモノレールの扉がゆっくりと背後で閉まる。
 平日の昼間だというのに、その車輌はやけに混んでいた。
(うわっ、ツイてねーなぁ)
 不思議と親子連れや老人の姿は見当たらない。年齢層はバラバラだが、どっちを向いても男、男、男。狭い車輌が一段とむさ苦しく感じてしまう。
 スーツ姿のサラリーマン集団に囲まれて、虎徹はげんなりと肩を落とした。
(……ま、しゃーねぇか)
 目的地に着くまで、しばらくの我慢だ。
 そう思っていたのだ。何も知らずに。


 混雑に阻まれているせいで、虎徹が立っている位置からは吊り革にも手摺りにも届かない。仕方なく両脚だけでバランスを取りながら小さく折りたたんだ新聞に目を落とし、しばらく目で文字を追っていると、突然急ブレーキがかかって車体がガタンと大きく揺れた。
「う、わっ!」
 背中にどすんと体当たりされて、たまらず前に倒れ込む。前方に立っていた男性の懐に飛び込む格好でもたれかかってしまい、虎徹は慌てて離れようとした。
「あ、どーもすいませ……ん?」
 ところが、どういうわけか身体が動かない。
「……へ?」
(なんだ、いったい?)
 まるで金縛りにでもあったようだ。
 背後からぶつかってきた人物も動けないのか、なかなかどいてくれない。おかげで前後から押さえつけられているような状態になってしまっていた。もともと混雑した車内にあまり余分な隙間はない。これでは金縛りが解けたとしても身動きできないかもしれない。
 だが一番の問題は、駅でもないのに車輌の動きが完全に止まってしまったことだろう。トラブル発生は明らかだった。
(まさか事件じゃねーだろうな)
 こうした場面で、咄嗟に事故ではなく犯罪の可能性を考えてしまうのも職業病の一種かもしれない。自然と身構えてしまうのだ。
『お客様にお知らせ致します。ただいま車輌事故が発生したため緊急停止致しました。現在、自動修復システムによりメンテナンス作業を行っております。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけ致しますが、発車まで今しばらくお待ちください』
(なんだよ、ただの故障か)
 どうやら杞憂だったと分かり、流れてきたアナウンスにほっと肩の力を抜いた。予期していなかった衝撃に襲われたのは、その直後だ。
 後ろにいる人間が、するりと虎徹の尻を撫でた。
「いっ…!?」
 ぞわっと背筋に悪寒が走る。
 もちろん最初は気のせいだろうと思った。いや、思いたかったのだ。ただ偶然触れてしまっただけだと。しかし虎徹の願いを裏切って、その手は何度もさわさわと怪しい手つきで尻を撫で回した挙げ句、ついには双丘を揉み始めた。
(……な、なんでだよ)
 がっしりと骨太で大きいこの手のひらは、どう考えても男の手だ。
(誰かと間違えてんのか?)
 近くにものすごく可愛い女子高生とか美人OLでもいるのかと懸命に視線を巡らせてみたが、目に映るのは色気も素っ気もない背広ばかりで女性の姿はどこにも見当たらない。
(ってことは、つまり……)
 数秒して、サーッと血の気が引いた。
(いやいやいや、おかしいだろ! 紅顔の美少年ならともかく、俺なんか触ったって面白くもなんともねーだろ!)
 一向に離れていく気配のない手が双丘の狭間をなぞり、股間へと滑り込んできたことで、虎徹はもはやパニック寸前である。
「ちょ……」
(おいぃぃぃ! どこ触ってんだよッ)
 思わず出しかけた声を必死に堪えて、唇を噛んだ。だが、これは車輌内という狭く閉ざされた空間で繰り広げられる淫猥な拷問の序章にしか過ぎなかったのだ。
 まずはいきなり左右両側から伸びてきた手にベストのボタンを外され、シャツの上から二つの胸の突起を強く摘まれた。
「……っ!」
 振り払おうとしたが、やはり腕は何かに強く押さえつけられているような感じで、ビクともしない。しかも胸を触っている手は左右別々の人間だ。もちろん背後で尻を撫で回している手も角度からして別の者だろう。混乱しているうちに前方からも下肢の中心に手を伸ばされて、ようやく事態を悟った虎徹は今度こそ身体の芯からぞわりと怖気立った。
 前後左右、四方を痴漢に囲まれているのだ。
(だから、なんで俺なんだよ?)
 思考が混乱し、ぐるぐると眩暈がした。その間も当然のように身体を這い回るいくつもの手に遠慮やためらいはなく、どんどんいやらしい触り方になっていく。
(ええいっ、この変態ども…………いい加減にしやがれッ!)
 あれこれと考えを巡らせたところで複数で痴漢を働くような卑劣漢、ましてやそのターゲットに三十過ぎの男を選ぶ連中の趣味嗜好など虎徹に理解できようはずがない。
(何がしたいのかよく分かんねーけど、とにかく全員逮捕だ!)
 心の中で叫び、能力を発動―――――しようとしたのだが。
「あっ……」
 大変残念なことに、それは叶わなかった。モノレールに乗り込む直前、駅の階段から落ちそうになっている女性を偶然見かけて、助けるために能力を使ってしまったからだ。気分が悪くなったという女性を無事助けることができたし、乗り遅れそうになっていた電車にもなんとか間に合ったので、ほっと胸を撫で下ろしていたところだったのに、まさかこんな落とし穴が待っていようとは。
(……嘘だろぉ)
 額や背中にだらだらと冷や汗が流れてきた。
 最悪なのは、こちらが能力を使えないという事実だけではない。混雑しているとは言えラッシュほどではないのに、まったく動けないことだ。痴漢の中にネクストが混ざっている可能性もある。その能力を使って押さえつけられているのではないかと気づいて、虎徹はますます青ざめた。
 絶体絶命のピンチだ。
(どうする、鏑木虎徹。大声で叫ぶか? いや、でもさすがに男が痴漢にアレされてるってのはどうも…………普通の乗客だっているだろうし)
 男の沽券に関わる。また古くさい言い回しだとバーナビーに鼻で笑われそうだが、虎徹の脳裏にはその言葉と同時に、真面目で厳しかった兄の顔が浮かんでいた。
(けど、このままじゃ……)
 殴り合いのケンカなら慣れている。しかし痴漢たちの手が強弱をつけて握ったり摘んだりしているのは、身体の中でもひどく敏感な部分だ。特に下肢の中心にある息子を握られているということは、男にとってもっとも弱い部分を人質に取られているのと同じ。そしてさらにもう一ヶ所、尻の割れ目の奥にある秘孔は自分自身にとっても未知の領域だった。女性でもアナル・セックスを好む者もいるとは聞くが、妻はそういう類の人間ではなかったし、女遊びなどしたことがない虎徹にとって当然のことながらそこはただの排泄器官でしかない。
 医者以外の人間に触られるなんて有り得ないはずなのに。
(くそっ……んなとこ触ってんじゃねーよ!)
 服の上からするすると割れ目をなぞっていた指に、後孔をくすぐるように弄られてぎくりと身体が強張り、とうとう緊張のあまり動悸がしてきた。
 それでもここで終わればまだ、気持ち悪かった、すげぇビビったと後で愚痴でもこぼせば済んだだろう。しかし徒党を組んでいる痴漢たちは、すぐに次のステージへと上がってしまった。まるで弄ぶように服の上から前茎をやわやわと揉んでいた手がスッと上に動いたかと思うと、堂々とファスナーを下ろして下着の中にまで侵入してきたのだ。
(え、ええぇっ?)
 おまけに何かの合図でも交わしたかのように、同じタイミングで胸を触っていた二つの手もシャツのボタンを外し始めた。ネクタイはきちんとぶら下がったままだというのに大胆に前をはだけられて、アンダーの中にまで潜り込んできた手に今度は直接突起を摘まれる。
「ん…っ!」
(……マジかよ)
 いったいどこまでする気なのか。考えるのが恐ろしい。
 しかもなぜ自分の身体は、釣り上げられた魚のようにビクビクと反応してしまっているのだろうか。
「尖ってきたね」
 不意にくすりと笑いを含んだ声が、呆然としている虎徹の鼓膜を震わせた。
(こいつら、まさか)
「いい表情だ。気持ちいいんだね」
「ここ、いじられるの好き?」
 左右両側から愉しげに囁かれる卑猥な問いかけ。片方は年配、もう片方はかなり若い男の声だ。
「そ……うぅ…っ」
 そんなわけないだろ。咄嗟に反論しかけたものの、さすがに周囲の耳目が気になって言葉を呑み込むと、肯定と受け取られでもしたのか、左右にいる男たちは乳首を摘むだけでなく指先で突起を弾いたり、押し潰したり擦ったりして、執拗にそこを捏ね回し始めた。

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【モブ虎/1】痴漢電車 【2】 

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「ほら、コリコリしてる」
「いっ…」
 愉悦を含んだ囁きと共に、硬く尖った小さな突起をぎゅっと強く抓られて、思わず声を上げそうになる。そうして胸元に気を取られている隙に、竿を扱く手が二つになった。
「先っぽが濡れて、もうヌルヌルじゃねーか」
「本当だ。ずいぶん感じやすいねぇ」
 目の前に立っている男二人が口の端を歪めて薄く嗤っている。
(ちっきしょー、こっちが動けないからって好き放題しやがって)
 虎徹は唇を噛みしめ、きつく瞼を閉じた。
「……ぁ、くっ…ぅ」
 我慢など無駄なことだとでも言うように爪の先で竿の先端をグリグリされて、内股の筋肉が緊張で引き攣りそうになる。何箇所も同時に責められているせいか、内心では嫌なはずなのに、身体は反応し始めていた。揶揄された通り、雄芯の先端にはすでに先走りの雫が滲んでいて、それを痴漢の手が竿全体に擦りつけているのだ。おかげで扱かれるたびにヌチャヌチャと卑猥な音が聞こえてくる。
「ふぅっ……ん、んんっ……」
(やべっ、もう……)
 気持ち悪い。冗談じゃない。
 確かにそう思っているはずなのに、自分の身体に裏切られ、見知らぬ男たちの手によって追い詰められていく。根元から先端に向けて何度も扱き上げられたり、先端やカリの部分を同時にグリグリと苛められるたびに、濡れた喘ぎが唇からこぼれ落ちそうになった。
(くそっ、こんなので感じたくなんか……ねぇのに)
「……はっ…ぁ」
 しかしどんなに必死に声を押し殺していても、荒い呼吸までは抑えられない。それだけで周囲に不審がられている可能性だってあるのだ。
「んっ……ぅ」
 とうとう後ろからも下着の中に手が潜り込んできて、直に双丘を撫でられたり、その奥にある小さな蕾に指を這わされて、また息を呑んだ。
「こっちもヒクヒクしてますね」
 嬉しそうな男の声。と同時に、きゅっと窄まっている後孔の入り口にいきなり指をズブリと突き立てられて、頬が引き攣る。
「う…っ!」
 異物が入ってくる感覚がなんとも言えず気持ち悪い。そのくせどこかむず痒いような微妙な感じだ。
 むろん指は侵入してくるだけで終わらず、やわらかい内壁を擦りながらゆるゆると中を掻き回し始めた。
「よ、よせ……抜け、よ」
 小声でそっと後ろの奴に言ってみたが、返事の代わりにいっそう指を抜き挿しされただけだ。
「やっ…」
(ちくしょう! 能力さえ戻ればこんな……)
 前後両方から弄られているせいで、日頃愛用している細身のパンツも下着ごと脚の付け根あたりまで下げられてしまっている。
 外はどんよりした曇り空で薄暗いが、時刻はまだ昼を少し回ったところだ。しかもモノレールの中だというのに、こんな格好をさせられて変態たちに好き放題嬲られているなんて。
(こんなのって有りかよ)
 虎徹にはまだ自分の身に起こっている出来事が信じられなかった。
 だが、密室での卑猥な責めは、さらに容赦なくエスカレートしていく。
「……ぁ」
 雄芯と後孔、乳首まで同時に擦られて、虎徹の身体に幾度も甘い痺れが走った。男たちの手に握られている分身は解放を待ち望んでいて、今にも弾けてしまいそうだ。
「んっ…」
 モノレールはまだ動き出す気配すらない。
 不思議なほど騒ぎ出す客もいない。
「すごいね、どんどん溢れてくる」
 興奮しているようすの男が吐き出した息が首筋に当たった。きっちりとしたスーツを着込んでいる虎徹より年上の男が、鼻息を荒くして擦り寄ってきているのだ。
「ああ、たまらないなぁ……早く犯したい」
(いらねーよ! 息吹きかけんな)
 ゾッとするセリフと共に肌にかかる吐息の感触にまでなぜか煽られて、ぞくぞくと背筋が震える。
 こんなことをされて気持ちいいはずがないのに。
「や、やめっ……」
 今にも達してしまいそうなほど下肢の中心は熱くなっていて、これ以上何かされたら堪える自信がない。
「……も……………頼む、から」
 たまらず懇願すると、さっきから何食わぬ顔で虎徹の陰茎を弄り続けている男の一人が、ニヤリと口角を持ち上げた。
「音を上げるのはまだ早いよ、タイガー。きみはヒーローなんだから、もっと頑張らなくちゃ」
「え…?」
(今、タイガーって……)
 衝撃に目を瞠る。
 虎徹がワイルドタイガーであることは関係者以外誰も知らないはずだ。フェイスマスクを付けていない今、正体がバレるはずはないのに。
(いったいどこから情報が…………つーか、こいつら俺がワイルドタイガーだって知ってて触りまくってんのかよ!)
 一気に怒りと屈辱感が増した。
「うっ……く、ぅ」
 動かない筋肉を無理やりにでも動かそうと全身に力を込める。
「ムダですよ。腕を痛めるだけですから、おとなしくしていてください」
 後ろから聞こえてくる若い男の声に諭すように言われて、やはりこれは能力による拘束なのだと確信した。だが、それが分かったところで反撃の糸口はつかめないままだ。
 そして、リキんでいた身体からふっと力を抜いた瞬間―――――
「あっ…?」
 びくんっとひと際大きく四肢が震えて、虎徹は背中を仰け反らせた。
 今までのじわじわと押し寄せてくる、もどかしいような快感とは比べ物にならないほど強烈な刺激が、一気に下肢を駆け抜けたのだ。
「ああ、ここですか」
 後ろの男が平然と呟いて、同じポイントを何度も指先で擦る。噂に聞く前立腺マッサージというやつかもしれない。
「そっ、そこ、や…め…………んんんっ!」
 効果は驚くほど絶大で、嫌だと訴える隙もなく、虎徹は白濁した飛沫を男たちの手に撒き散らして果ててしまった。堪えることなど、ほとんどできなかった。
「はっ……あ…ぁ」
 ごく普通の乗客たちが大勢乗り合わせている小さな箱の中で、無理やり感じさせられて吐き出してしまった精液の青臭い匂いが自らの鼻を突く。
(…………最悪だ)
 最近ご無沙汰だったから。そんな言い訳を口にしても虚しいだけだ。
 睫毛を濡らし、息も絶え絶えになって肩で呼吸を繰り返していると、痴漢たちがくすくす笑いながら汚れた手を前にかざしてきた。
「おお、いっぱい出たね」
「涙ぐんでる。かーわいいー」
 四肢はまだ見えない枷に繋がれている。
 全身を覆う気怠い虚脱感。しかし、これで終わりではないのだと真後ろに立つ男が告げて、尚も虎徹を追い詰める。
「こっちも濡らさないといけませんね」
「こっち……って」
 不吉なセリフと共に後孔から一旦指が引き抜かれ、すぐにまたずぶりと勢いよく中に突き立てられた。ただし今度は二本同時だ。代わりに、捻じ込まれた指はヌルヌルとした滑りを帯びていた。
「うっ!」
 おかげでさっきまでのように入り口が引き攣ることもなく、指がすんなりと埋め込まれていく。
(なんだ、いったい?)
 まさかこんな場所でオイルなど持ち歩いているはずがないと思いながらも、疑いは拭いきれない。ゆるゆると抜き挿しする動きも妙にスムーズだ。何らかの液体で指が濡れているのは間違いないだろう。
 その事実に愕然として、虎徹は全身を戦慄かせた。
(まさかこいつら、本気で……)
 こんな場所で最後までする気なのか、と尋ねる勇気はない。
 もうすでに充分有り得ないほど脱がされ、触られまくっているのだが、まさか挿入する気でいるとは思っていなかったのだ。見知らぬ男たちの手で強制的に達かされた瞬間、情けなさと悔しさと羞恥で胸の内側はぐちゃぐちゃになったが、これで終わる、やっと解放されるのだという気持ちもどこかにあった。
 だが――――
「ほら、もっと力を抜いて」
「そうそう、じゃないとキツイよ?」
 どうやら考えが甘かったようだ。
 後孔を潤す滑りの正体を確かめる前に、事態はさらに恐ろしい展開を迎えてしまった。虎徹の分身を扱いてイカせた左右の男二人がぐっと腕を伸ばしてきて、後ろの蕾を蹂躙する動きに加わったのだ。虎徹自身が放った雫にまだ濡れている指先で。
「む、無理だって!」
 ぎょっとして咄嗟に身を引こうとしたが、それも見えない手に阻まれた。
「待って…………ぁ」
 すでに埋め込まれている二本だけでも異物感は充分なのに、さらに別方向から伸びてきた指に蕾を強引にこじ開けられ、計四本の指が狭い器官を押し広げてずぶずぶと侵入してくる。
「や、やめっ……!」
「ここからが本番なのに何言ってんだよ、タイガー」
「そうですよ。あなたも愉しんでください」
(できるかっ!)
 限界まで広げられた入り口はピリピリと引き攣っていたが、それでも内壁を這う濡れた指の動きに感覚を支配されて、じきに淫らな熱と疼きが内側からじわりと湧き上がってきた。
「……ぁ、はっ……あ…っ」
 三人の男がそれぞれ好き勝手に抜き挿しするものだから、リズムや指の向きがバラバラで、かえって掻き乱されてしまう。内側に塗りつけられた雫で潤った狭い蜜壷を掻き回されて、誰かが指を抜き挿しするたびに下肢からぬちゃぬちゃとかクチュクチュという卑猥な音が響いてきた。どう考えても、これは周囲に聞こえているはずだ。もう顔を上げていられない。
「あ…ん、んん…っ」
 弱いポイントを三人がかりで競うように幾度も擦り上げられて、どんどん速くなる鼓動と乱れた呼気に眩暈がした。
「ああ、あ……ぁ……」
 与えられ続ける刺激に、時折四肢が電流を浴びたかのようにビクビクッと跳ねて、震える。敏感な部分は甘く痺れ、内側の粘膜はトロトロと蕩け出していくようだ。しだいにここがどんな場所か、ふと忘れてしまいそうなほど―――――
「ひっ…ん、うぅ……」
 快感に引きずられて、意識が飛ぶ。
「……や、ぁ…っ」
 もはや声を抑えなければならないことすら頭の隅に追いやられていた。

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【モブ虎/1】痴漢電車 【3】 

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「だいぶやわらかくなってきましたから、そろそろかもしれませんね」
「んんっ…ぅ!」
 すると、しばらくして後ろの男の言葉を合図に、今度は中の指を一斉に引き抜かれ、虎徹は低く呻いた。
 もちろん解放されたわけではない。たっぷりと潤され、愛撫に疼き始めた後孔の入り口には、指よりもずっと熱く怒張したモノの先端がピタリと押し当てられている。伝わってくる熱量もサイズも段違いで、さっきまでとは比べ物にならない凶暴さだ。
 その圧倒的な存在感に、思わず背筋が震え出す。
「ま、待ってくれ」
 情けないことに唇も震えていて、うまく声を絞り出すことができない。
(やばい、やばい、やばい…………ゼッタイ無理だって!)
 しかし、そんなもん挿れんな!という叫びを発するより早く、凶暴なまでに硬く反り返っている欲望の塊が、小さな蕾を散らしながらグッと勢いよく虎徹の中へと押し入ってきた。
「―――ひっ!」
 ずぶりと捻じ込まれた太い雄芯を一気に奥まで突き立てられて、数秒間息が止まる。
「い…てぇ……」
 じわりと目尻に涙が滲んだ。
 ギリギリまで広げられたやわらかな器官は、ただ痛いだけではなく、咥え込まされた肉の刃の形や大きさをはっきりと感じてしまっている。男のモノが自分の中でドクドクと脈打っていることまで分かってしまうくらいに。
 犯されているのだと認めざるを得ないそのリアルな感覚に、指であちこち弄られて達かされてしまった瞬間の戸惑いとはまた違った羞恥や困惑が、虎徹の中に呼び覚まされていく。
(せめて、これがバニーのだったら…………なんてな。俺どっか壊れちまったんじゃねぇだろうな)
 見知らぬ男の体温を感じながら、虎徹の脳裏に浮かんできたのは仕事の相棒であるバーナビーのことだった。

『……最近、気がつくと虎徹さんのことばかり考えていて、自分でもおかしいなって思ってたんですけど。どうやら僕はあなたのことが……』

 少しはにかみながらもまっすぐな目で告げてきた若いパートナー。
 気のせいだろうと、その場はごまかして逃げてしまったけれど、本音を言えば心臓はかなりドキドキしていた。驚きはあっても嫌悪感はなかった。ただ、頷き返すことで常識という枠からはみ出すことを恐れただけだ。
『あなたに触れたい…………抱きたいんです』
 ストレートな告白を思い出した途端、背筋がぞくぞくっと粟立ち、後ろに咥え込まされている欲望の塊をきゅっと締め付けてしまった。よく知らない男たちに嬲られている今、身体の奥に突き立てられた欲望の楔がせめて彼のものだったら、と――――つい考えてしまったのだ。
(バカか、俺は! こんなときに何考えてんだよ!)
 自嘲に頬を歪め、内心で吐き捨てる。だが屈辱と羞恥に塗れている最中、一度明確に浮かんでしまったイメージはなかなか脳内から消えてくれず、まるで何かを期待するように男を咥え込んでいる入り口の襞が勝手に蠢き始めた。
「さすがにキツイですね。でも……あなたの中、すごく悦いですよ。狭くて、しっとりと絡みついてくる」
 虎徹を犯している男の呼気も荒い。ひどく興奮しているようだ。
「ああ……最高だ」
「うる、せ……」
 信じ難いセリフをうっとりと告げた男は、楔を一旦ギリギリまで引き抜いたかと思うと、すぐにまた勢いよく腰を打ちつけ、最奥を鋭く抉ってきた。
「ぐっ……う、うぅ!」
「声、我慢しなくてもいいんですよ。どうせ周りにはもうバレてる。みんなあなたをいやらしい目で見てるんです。それが嬉しいんでしょ? さっきからココが物欲しそうにひくひくしていますよ」
「う、そだ……」
「嘘じゃありません」
 ほらね、と嗤いながら腰を強く揺さぶられて、ガクガクと膝が震えた。
「あ、あ、あ…っ!」
 足腰に力が入らず、支えられてやっと立っている状態だ。今、手を離されたら床に膝をついて頽れてしまうだろう。
 挿入されている狭い器官が入り口も奥も灼けるように熱くて、そこを掻き回されるように腰をグラインドされると腰から下がジンと痺れた。
「…………ひぃっ……あ、あぁ…あ……」
 後ろの刺激で再び頭を擡げ始めた前茎を、また誰かの手で扱かれて、目の前が白くぼやける。
「感度良好」
 鼓膜に響く、誰かの嬉しそうな声。
 ふと気づけば相手に合わせて虎徹の腰も揺らめいていて。
「あっ! ……ぁ、ん」
 快感にうっかり流されてしまったら、下腹あたりに溜まった熱いうねりに呑み込まれて、またすぐにでもイッてしまいそうだ。
「ふっ……うぅ」
「よく締まる」
 ぷっくりと立ち上がった後、しばらく放置されていた胸の突起にも再び手が伸びてきて、何箇所も同時に嬲られている上に、後ろの男が腰を突き入れてくるたびに硬く屹立したもので内壁の敏感な部分を強く擦られる感覚がたまらなかった。声もだんだん抑えられなくなっていく。
「くぅ、っ…ん、んっ、うぅ……」
 激しさを増していく律動と共に身体の熱が高まって、強く穿たれるたびに結合部分からはじゅぷじゅぷと淫猥な音が溢れ出している。
「よ、よせっ…!」
 これ以上されたら、頭がおかしくなってしまうかもしれない。
(も……ヤバイ……)
 深すぎる羞恥と強すぎる快感に呑まれて、まともな感覚など崩れ去ってしまうだろう。そんな予感がして恐ろしくなった。
「あっ、あっ…………いや…だ」
 このままでは自分がどうなってしまうか分からない。
 なのに無理やり身体を開かれ、怒張した凶器に奥深くまで犯されて目に涙を滲ませている虎徹に、強姦魔は甘ったるい声で悪魔のようなセリフを囁きかけてくる。
「みんなでたっぷり可愛がってあげますから、あなたも愉しんでください。どうせ逃げられないんですから」
 ―――――奈落へと誘う、危険なセリフだ。
「ゆ、ゆるし…………あっ、ああぁんっ!」
 流されてしまったら、もう後戻りはできないと分かっているのに。あと少ししたら能力だってきっと戻るだろうし、もしかしたらその前に電車が動き出すかもしれないのに。
「た……頼む、もう…………カンベンして、くれ」
「そんなこと言っても腰が揺れてますよ」
 なぜか抗いきれず、気が遠くなるほどの快感に囚われてしまっている。
「……やぁ、あ…………あっ…んん!」
「いやらしい眺めだなぁ」
 どこもかしこもトロトロだと、自分よりずっと年下に違いない若い男に笑われて。
「思った以上に最高ですよ」
「ひぃっ…ん!」
 何度も何度も深く穿たれて、抽挿が一段と激しくなった頃。
「もっと奥の、一番深いところで受け入れて……」
「や、やだっ…………あ、あぁ……あぁぁぁ―――……っ」
 身体の中に熱い飛沫をぶちまけられて、虎徹の方も思わず雄芯をビクビクッと揺らしながら白濁した雫を思いきり吐き出していた。とはいえ二度目なので少しばかり勢いがなく、代わりに長引く絶頂に四肢を強張らせてヒクついてしまう。
「う、うぅ…っ」
 もうダメだ。とても立っていられない。脱力してガックリと床に膝をついてしまいそうになった虎徹だったが、周りにいる乗客たちが彼の腕を掴み、それを阻んだ。
「まだ音を上げるのは早いよ。俺たちの相手もしてくれないと」
「そうそう、順番に可愛がってあげるからね」
「……え?」
 ぐるりと周囲を取り囲んでいる男たちからねばつく視線を投げかけられて、スーッと血の気が引いていく。
(ま、まさか)
「さぁ、もっと愉しもうか」
 絡みついてくる腕、指、吐息。
 再び押し当てられた肉刃の先端。
「や、やめっ……もう……無理だ」
 そして、たっぷりと中に注がれたばかりの蜜を溢れさせながら新たに侵入してきた、雄の熱い欲望。
「…………たすけてくれ……バニー」
(本当はおまえがいい。おまえにだったら俺はこういうことされたって全然嫌じゃないんだ。むしろ嬉しいくらいなのに)
「あっ……ああ、んっ」
 犯されている音や自分自身が洩らす喘ぎ、痴漢たちの荒い呼気に、己の内側から響いてくる心の声が重なる。
(マズイぜ。こんな感覚教え込まれたら、次にあいつに会ったとき自分から欲しい、してくれってねだってしまいそうだ)
 もうごまかしきれない、本当の心の声が。
(頼む、バニー。何も聞かずに俺を抱いてくれ。そして、この悪夢から俺を救い出してくれ―――――)

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【モブ虎/1】痴漢電車 【4】/完 

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「ちょっと待て! 早まるな、俺!」
 叫びながらがばっと身を起こした虎徹は、自分自身の声で覚醒した。と同時に、周囲の景色が変わる。
「…………あれ?」
 どこだ、ここ。
 さっきまでは確かモノレールの中にいたはずなのに、今はベッドの上だ。しかもどことなく見覚えのある部屋のようだと首を傾げながら視線を転じると、すぐ隣に嫌味なほど整った若い男の顔があった。
 虎徹の相棒、バーナビーだ。
「チッ、あと一歩だったのに」
(いきなり舌打ちですか)
 隣のハンサムくんはなぜか不満そうに表情を歪めて髪をかき上げている。どうやらだいぶご機嫌斜めらしい。
(そういやベッドしかないこの素っ気ない部屋、こいつんちの寝室か)
 しかし、なぜ同じベッドで一緒に寝ているのか。その理由が思い出せない。
「なんで俺、ここに」
「覚えてないんですか? 仕事帰りに食事した店で酔いつぶれて寝てしまったんですよ」
「あー…………そうだっけ? すまん」
 どうやらまたやってしまったようだ。ひどく夢見が悪かったのも酒のせいだろうか?
(だとしても、あの夢はないよなぁ)
 虎徹は眉をしかめた。
 大抵の場合、目覚めと共に夢の記憶は霧散していくものだが、さすがにさっきの夢は強烈すぎた。悪夢で飛び起きたと言ってもいいぐらいだ。まだ心臓だってドキドキしているし、嫌な汗でもかいたのだろう、肌全体がしっとりと汗ばんで濡れている。
(いったいなんであんな夢見たんだ?)
 夢は願望の表れだとよく言うが、到底それを認める気にはなれなかった。
 虎徹がバーナビーが手にしているヘッドホンに気づいたのは、その時だ。
「なんだ、またクラシックか?」
 寝ている間にまで聴いてるのかと何気なく手を伸ばし、それを奪い取る。
「あ、ちょっと」
 ところが軽く耳に当ててみると、流れていたのは音楽ではなく人の話し声だった。
『……大勢の男たちに責められ続けながらも、虎徹の脳裏に浮かんでいるのはバーナビーただ一人だった。身体中を弄っている手も、中を掻き回している硬い楔もすべて彼のモノだと思えば、屈辱は快感へとすり替わる』
 聞き覚えのあるそれは紛れもなくバーナビーの声だ。
「…………朗読? けど、この内容って……」
 読み上げられているのは、まるでさっきの夢の続きのような――――
「まさか」
「気づかれたか」
 ぼそりと聞こえてきた独り言に、虎徹は顔の筋肉を引き攣らせた。
「あのぉ~、バニーちゃん? それはいったいどーゆーことかなぁ?」
(さっきの夢はおまえのせいかよ!)
 こめかみのあたりが怒りでピクピクしてくる。しかしハンサムガイのニューヒーローはこの程度では怯まないようだ。
「いわゆる睡眠学習というやつです」
 気障な仕草でシャツを羽織りながら、バーナビーはしれっと答えた。少しも悪びれずに。
「はぁ? なんの学習だよ?」
「聞いていたんだから覚えているでしょう? 少なくともあなたの脳には刻まれているはずですよ」
「……さっきの夢のことか?」
「ええ、あなたが僕に対して素直に接することができるように、効果的なシュミレーションを考えて、夢の中で体験してもらうことにしたんです。睡眠学習は結構いい効果が得られるようですから」
 握り拳で堂々と主張されてしまったが、彼が言うところの効果的なシュミレーションとはつまりモノレールの中でいろいろとヤラレまくったあれやこれやなわけで。
「けど、俺…………夢ん中で痴漢されてただけなんだけど」
 いったい何を学習しろと言うのだろう。
「それは第一ステップです。常識という枷から逃れて新しい扉を開いたあなたが、僕のところへ駆け込んでくるための布石。それが今回のシナリオでした」
 メガネをかけてキラッとさせていても、言ってることは単なる変態なのだが、果たして本人は気づいているのだろうか。
「そのためにわざわざ僕が自分で録音したんですよ」
「……へー、そう……」
 だんだん答える声や表情が平べったくなっていくのは、不可抗力というやつだ。
「シナリオも練りに練って、ほら、こんなに分厚くなってしまいました」
 彼が取り出した紙の束は確かに分厚かった。印刷された文字はまるで芝居の脚本のごとく、セリフやト書きがびっしりと綴られている。その中にはきっと夢の中で虎徹が痴漢たちに囁かれたセリフも記してあるのだろう。
「…………はは、は」
 おかげで最近寝不足になってしまって、と自慢げに笑っているハンサムにどこからどう突っ込んでやればいいのか、もう分からない。
「最近頻発していると噂のある集団痴漢事件をモチーフにしてみたんです。自分で言うのもなんですが、苦労した甲斐があってなかなかいい出来になったと思うんですが、いかがでしたか?」
 分からないので実力行使だ。
「いいわけあるか――――――っ!」
 叫びながら立ち上がった虎徹は、うっとりしている男の手からその分厚い紙の束を奪い取り、ベリッと音を立てて破り捨てた。
「ちょっと、破かないでくださいよ」
「うるせぇ! こんなもん破くに決まってんだろ! このっ、このっ!」
 ついでに足で思いきり踏んづけてやる。
「おまえのせいで俺は…………ん?」
 そこでようやく気づいたのだが、シーツの海から抜け出した身体は上だけでなく下も一糸纏わぬ状態だった。つまりスッポンポン。全裸だ。
 泥酔して寝てしまった人間を寝かせるだけなら、何も下着まで脱がせる必要はない。たとえ服を汚してしまっていたとしても、だ。
「バニーちゃん…………訊くのすごーく嫌なんだけどさ、ひょっとして……」
 顔を強張らせて振り向いた虎徹に、ハンサムメガネはキラリと光る笑顔で親指を立てて見せた。たらりと一筋流れ落ちる鼻血付きで。
「睡眠学習をより効果的にするために、実践も同時進行で試してみました」
「痴漢はおまえかっ!」
 報復を拳でガツンと一発、バーナビーの顔面に食らわせてやる。相手が年下の相棒だろうと顔も売れているイケメンだろうと容赦はしない。
「痛いなぁ、何するんですか」
「てめぇの胸に訊いてみろ! 人の寝込みを襲いやがって」
「挿入、中出しはまだしてませんよ」
「威張れるか!」
 この人でなしめ、と憤然と指差しながら告げた。ここはビシッと言ってやらねば。
「とにかく二度とこんな真似するなよ! でなきゃ誰がなんと言おうとコンビ解消だ。いいな?」
「……分かりました。すみません」
 それでも肩を落とし、殊勝な態度で項垂れている姿を目にしてしまうと、虎徹はすぐに許してしまうのである。
「ま、まぁ分かりゃいいんだよ」
(こいつ、俺のことが好きって本気だったんだな…………だからって、やり方はめちゃくちゃだけど)
 こぼれ落ちたため息は深かったが、ここで気分を切り替えることにした。過ぎたことをいつまで愚痴っていても仕方がない。
「ところで今、何時だ?」
「十時半を回ったところです」
「もうそんな時間かよ」
「何か予定でも? 今日は一日オフですよね」
 しまったなという顔をしたのだろう、バーナビーが尋ねてきた。
「昼過ぎに昔の知り合いと会う約束してるんだ。ずいぶん前にヒーローを引退した奴なんだけどな。久しぶりにこっちに来てるって連絡あったから。一旦アパートに戻って着替えねーとなぁ。あ、シャワー借りるぜ?」
 家主の返事も待たずにバタバタとバスルームに向かった虎徹は、急いで身支度を整え、自宅アパートへと戻っていった。




 着替えと軽いブランチを済ませて、再び家を出たのがちょうど一時過ぎ。久しぶりに再会するのだから待ち合わせは夜にして酒でも飲もうと誘ったのだが、相手は何やら話があるらしい。あまり待たせてはまずいだろう。
「ま、次のやつに乗れば大丈夫だろ」
 発車時刻の表示を見ながら改札を抜ける。ところが駅の階段を駆け上がろうとした途端、悲鳴が聞こえてきて虎徹の足が止まった。
 視界に飛び込んできたのは階段から落ちそうになっている女性の姿だ。
「危ない!」
 迷わず全力で駆け寄っていく。
 能力発動は無意識だった。
「どうもありがとうございました。急に気分が悪くなってしまって」
「いえいえ、何事もなくてよかったです。あ、それじゃ俺は急ぎますんでこれで」
 何度も頭を下げる女性に笑顔で返して今度こそ階段を上がっていくと、ホームにはすでにモノレールが停車していた。
「やべっ!」
 鳴り響く発車の合図に急かされて、慌てて駆け込む。
「……ふぅ、間に合った」
 ほっと安堵の息をついたものの、ふと何かが引っかかって首を傾げた。
(――――あれ? なんかどっかで似たようなことが……)

 昼過ぎに飛び乗ったモノレール。
 予期せぬ能力の発動。
 尻ポケットには家で読み損ねた新聞が捻じ込んである。
 そして、目の前にいるスーツ姿の集団。

(まさかな……ハハハ)
 既視感という単語が脳裏をよぎる。
(単なる偶然だ、偶然)


 じわりと冷や汗を浮かべた虎徹の背後で、扉がゆっくりと閉まった。


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2012.1/8インテ新刊案内 

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1/8大阪インテの新刊はパラレル設定のR18小説です。
タイトルは「絶対服従命令」
(某ゲームと被っててすみません)

ドS新人編集×昔ヒットしてたけど今は売れていない漫画家というベタな設定で、
無自覚フェロモン振り撒いてる虎徹さんがバニーちゃんにセクハラされて
イスに縛りつけられた状態でローター仕込まれたり強制フェラで泣かされるという
身も蓋もない話になっております。大変申し訳ありません(汗)



※~本文より抜粋~※


「確かにこれまでよりスピード感が出てる。特に中盤からの戦闘シーン、悪くねーよ。コマ割を大きくしたおかげで見やすくなってるし、迫力も増したんじゃないか? これで新キャラが読者に受ければ、順位もなんとかなりそうだぜ。全部おまえのおかげだ、バーナビー」
「そう言って頂けると、僕も努力した甲斐があります」
「確かに感謝してる。けどな…………これは、どういう理由でこうなってんの?」
 引き攣る笑顔で尋ねた虎徹はこの時なぜかイスに縛りつけられ、下肢だけ剥かれているというやや滑稽な状態に陥っていた。
 ほんのちょっと居眠りしていた間に、いったい何が起こったのだろう。
「だいぶお疲れのご様子なので、少しサービスして差し上げようかと思いまして」
 金髪兎がにっこり笑顔で爆弾発言を投げつけてくる。
「サ、サービスって……」
 この格好では、いったいどんなサービスだと訊くのも恐ろしい。
「それに虎徹さんの描くキャラは、どうも今ひとつ色気が足りないんですよ」
「いや、恋愛物じゃねーんだから色気は必要ねぇだろ。女性キャラが出てくる場面でもねーし」
「そんなことありませんよ。例えばここ、敵と戦ってダメージを受けている時の主人公の表情」
 節の目立たない長い指が、下書きされた絵の一部を指差した。
「確かに苦しそうですけど、それだけじゃ物足りない」
「……って言われても」
「せっかくですからもっといい場面にしたいですよね。屈辱に耐える表情、研究してみましょうか?」
 満面に広がる笑みが怖い。
 そのくせ緑色に光る宝石のような瞳だけが笑っていなくて、獲物を狙う猛禽類のように鋭く光っている。
(兎のくせに、間違ってるだろいろいろ)
「ど、どうやって……?」
「あなたはおとなしく座っていてくれればいいです。僕が協力しますから」
 セリフと同時に無防備に晒されている分身をぎゅっと握られて、虎徹は飛び上がりそうになった。
「ちょっ……待て待てッ! いきなり、そんな」
「このぐらい平気でしょ、男同士なんだし」
 そう言いながら分身を擦る手つきが、かなりやばい。
(悪ふざけとかじゃなくて、本気かこいつ)
 サーッと音を立てて血の気が引いていく。
「へ…平気なわけあるか! 無理無理無理っ、このシチュエーション絶対おかしいって!」
 思わず叫んだ声が掠れて裏返った。
 翡翠色の瞳にじっと凝視されて、息子はすっかり縮こまっている。背中には冷や汗が滲んでいるだろう。
「お、おかしいよな、こんなの? 冗談キツイって、バニーちゃん」
「僕はバニーじゃなくてバーナビーです。初対面の時からずっとそう言ってますよね。それに虎徹さん、あなた口では無理って言ってますけど、身体の反応は違うと思いますよ。眠ってる時はすごく感じやすくて、僕に扱かれると気持ちよさそうに腰振ってますから」
「………………は? 今、なんて……?」
 兎の爆弾投下、第二弾。
「眠ってる時って言った? し……扱くって何を?」
 おじさんはもう完全に涙目。
 反対に、向き合っているクール眼鏡のドヤ顔ときたら。
「僕が、虎徹さんのナニを」
 どうして自慢げなんでしょうね。下ネタを口にしてるだけなのに。
「う、嘘……」
「嘘や冗談でこんなこと言ってたら変態ですよね、ただの」
 真顔で言ったらもっと変態です、と突っ込めない虎徹はバーナビーからそっと視線を逸らした。でも身体は逃げられない。なにせ手も足も縛られているのだから。
「や…………でも」
 おまえめちゃくちゃ女にモテるはずだろ、とか。セクハラするにしたって相手を間違えてるぞ、とか。おじさんもういい歳なんだから、こういうジョークには着いていけなくて戸惑っちゃうの、勘弁してとか。
 言いたいことは山ほどあったが、ただならぬ緊張感に圧されて舌が上手く回らない。
 おまけに下肢の中心を弄っている手が根元から丁寧に扱き上げたかと思えば、くびれや先端を擦ったり突付いたりしてくるし、ついでみたいにシャツの襟元をはだけられて出てきた乳首まで摘まれたりするもんだから、どうしてもそっちに神経が行ってしまうのだ。
「ふっ……ぅ…」
 男に触られて感じるはずがない。いくら自分にそう言い聞かせても、敏感な部分を弄られれば身体はやはり反応してしまう。鼓動はもうすっかり駆け足だ。
「こっちも結構好きですよね?」
「……ひぃっ…ん」
 笑いながら胸の突起をぐりぐりと捏ね回されたり、時折キュッと強く抓られたりしているうちに、だんだん変な声が洩れないように唇を噛みしめなければならなくなってきた。
「もうこんなに硬くして」
 くすりと笑われてしまうほど乳首は赤く色づいてぷっくりと膨らんでいるし、雄芯もすっかり形を変えて頭を擡げている。
「あ、あ…………よせ」
 執拗に弄られている胸の突起はジンジンして痛いぐらいだ。一定のリズムで扱かれ続けている分身もこのままではやばいかもしれない。最近は色事からすっかり離れてしまっていて、他人の温もりを肌で直接感じるのは久しぶりなのだ。
「い、嫌だ…っ」
「嘘はいけませんね。ここをこんなにしておいて」
 前茎を扱いている手が一旦止まり、指先でピンと強く弾かれた。
「うぅ……」
 だが一瞬感じた痛みも、すぐにまた快感へとすりかわっていく。
 意地悪な指に先っぽの小さな穴まで苛められて、どろりとした熱が下肢の中心に溜まっていくのを感じた。
「……ぅ、あ……あ」
「感じやすいですよね、虎徹さんって」
「んなわけ……あぁっ!」
 懸命にかぶりを振っても自分の身体に裏切られて、唇から嬌声や濡れた吐息が溢れ出す。そして、雄芯の先端からは白濁した先走りの雫が――――
「だってほら、いやらしい液体で先っぽがヌルヌルしてますよ」
「うっ……んんっ」
 触るな。
 頼む、それ以上触らないでくれ。
 胸の内でいくら叫んでも、バーナビーのきれいな手が容赦なく虎徹の欲望を暴き、吐露させられてしまう。
「気持ちいいんでしょう?」
「ちがっ……」
「出したいですか?」
「……ぁ」
 誘惑の言葉を囁きながら顔を覗き込まれて、思わず頷きそうになった。心の内の声とは裏腹に、もっと強く擦って欲しい、早く達かせてくれと口走ってしまいそうだ。
「何も言わなくても分かりますけどね。顔に書いてありますから」
 バーナビーは突然虎徹から手を離すと、近くに置いてあった鞄から四角い物を取り出して広げてみせた。折りたたみ式の鏡だ。美容院でヘアスタイルを確認させるのに使う物と同じくらいの大きさだろうか。それを眼前に突きつけられて、ほら、よく見てくださいと促された。
「いやらしい顔してる」
「なっ……」
「目を逸らしちゃダメですよ」
 ずいっとさらに近づいてきた鏡には、確かに一目で欲情していると分かる男の顔が映っていた。
 しっとりと潤んだ瞳、紅潮した頬。だらしなく半開きになった唇からは舌が覗いていて、乱れた呼気に合わせて小刻みに震えている。何より表情全体に隠微な色合いがくっきりと滲み出てしまっているのだ。
 これでは言い訳のしようがない。
(俺…………こんな顔して、こいつのこと見てんのか)
 途端にカッと燃えるような羞恥に襲われて、局部だけでなく全身が熱くなった。口から心臓が飛び出しそうだ。
 反射的に目を閉じ、顔を背けたものの、強烈に網膜に焼きつけられた映像はしっかりと脳内に残ってしまっている。
「恥ずかしいんですか?」
 甘いと言ってもいいやわらかな口調で囁かれて、泣きたくなった。
 強制的に感じさせられているだけなのに、あんなにもいやらしい欲望に塗れた表情を晒しているなんて。死にそうなくらい恥ずかしくて思考が停止する。
「もっと恥ずかしくさせてあげますね」
 ひどいセリフを吐きながらバーナビーが次に取り出したのはピンク色の小さなローターと、明らかにそれ用と分かるローションだった。さっきの鏡もこのオモチャも全部、彼が持ち込んだのだろう。虎徹を嬲るために。


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2/12新刊「Bitter or Sweet」 

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ザ☆ヒーローショウの新刊その1

こちらのサイトにも掲載している「オリオンをなぞって」と「Smell The Roses」に
書き下ろしの表題作を加えて比較的甘い路線で一冊にまとめました。
「Bitter or Sweet」はお約束のバレンタインネタ。単なるチョコレートプレイです(笑)
……というわけで以下サンプル(抜粋)です。



          ◇◇◆◇  ◇◆◇  ◇◆◇◇



「そこまでして僕に食べさせたいんですか?」
「いや、そういうわけじゃねーけど……」
「仕方ないな。僕が欲しいデザートはチョコレートじゃないんですけど。虎徹さんが食べさせてくれるなら、食べてもいいですよ」
 メガネを外して、にっこり微笑みながら虎徹の腕をつかんだ。
「口移しで」
「えっ…?」
「構わないでしょう、そのぐらいのサービス。僕の目の前で本命チョコを受け取った罰です」
「なっ……それはおまえだろ!」
 たちまち飛んできた反論をフッと鼻先で叩き落す。
「僕のは全部ファンからの贈り物ですけど、あなたのは違うでしょう。少なくとも一つは」
 ズバリ突っ込むと、虎徹は渋い表情になった。
「……いいだろ、気づかないふりしたんだから」
 見逃せよと小声でつぶやいている。やはりあの場では、ただ鈍感なふりをしていただけだったのだ。
「本人が義理チョコだと言い張ったからですか?」
「ばぁーか。あんなに歳の離れた子供の本気、どうやって受け止めろって言うんだよ。娘とたいして違わねぇんだぞ」
「じゃあ逃げたんですね?」
「…………」
 彼はバーナビーの追求にますます表情を曇らせ、泣かれたら困るだろうがとついに本音を吐露した。
「どうせすぐに正気に返るよ。こんなおじさん、本気で好きになるわけがない」
「僕にそれを言いますか? ひどい人だな」
 心外だと訴えるバーナビーにも、虎徹は苦笑を返してくる。少しだけ寂しげな目をして。
「大人は臆病なんだよ。いつまでも痛みを引きずるから、そう簡単には垣根を越えられない」
「身体は許すくせに」
「心の方が厄介だからな」
 年数を経ても消えてくれない喪失の痛み。その哀しみを湛えた笑みが、小さな棘となってバーナビーの胸に刺さる。
(そんなの僕だって……)
 失う痛みなら誰よりも知っている。
 だからこそ忘れてくれとは言えないけれど。
「べつにいいですよ。あなたがどれだけ怖がろうと、僕が言い続けますから。………あなたが好きです。愛してます」
 執念深さにかけては自信があるので、諦めてくださいねと付け足すと、虎徹は肩を震わせて笑い出した。
「……ったく、バニーちゃんには敵わねーな」
 顔を伏せているから、どんな表情で言っているのかよく分からない。もしかするとせつなさと苦さ、半々かもしれない。
 それでも彼はくっくっと喉の奥でしばらく笑った後、おもむろにチョコレートを一つ摘んで自分の口に咥えると、そのままこちらに顔を寄せてきた。
「え?」
 そっと押し当てるようなキスと共にバーナビーの口に移されたやわらかな生チョコが、すぐに舌の上でとろんと溶けていく。
 それはびっくりするほど甘かった。
「……あなたってズルイですね」
「大人だからな」
 ニヤリと笑って切り返され、バーナビーは嘆息した。
 普段は本当に大人げないことばかりするくせに、こんな時ばっかり年上を振りかざすのは少々気に食わないが、実際に歳が離れている分、自分が持っていないものをこの人が持っているのは事実なのだ。いい意味でも、残念な意味でも。
「じゃあ、未熟な僕にもっと指南してください。蕩けるような口づけを」
「高くつくぞ」
「ちゃんと利子をつけて返しますよ」
 あなたの身体に、と続ける前に唇が重なって、舌がするりと這入り込んできた。
「……っ」
 すぐに自分の舌を絡めて、互いの口腔内を弄り合う。
 歯列の裏側まで丁寧に舐めて、キスが深まってきたところでなぜか一旦離れた唇が、またチョコをひとかけら含む。
「ん…っ」
 淫らに絡み合う舌の上で、とろとろと溶けていくチョコレートにバーナビーは思わず顔をしかめた。
「……甘い」
「なんだよ、甘いのは嫌いか?」
「いえ、キスは好きですけど」
「だったらいいだろ」
「ええまぁ…………でも」
 色事に関して尻込みすることが多い虎徹がめずらしく積極的なのはありがたいが、自分の方が押されてリードされている状況はやはり物足りない。
「僕は欲張りなんで」
 そろそろ違うところへのキスも欲しいんですが。そう囁いて、虎徹のウィークポイントである耳を責めながら、シャツのボタンを外していく。
「ちょっ……ぁ、おい…………ん、んっ!」
 耳朶を甘噛みして穴の中に舌を這わせると、たちまち鼻にかかった声が聞こえてきた。



          ◇◇◆◇  ◇◆◇  ◇◆◇◇


 私が書いた話の中では、めずらしくおじさんが積極的なので
「あれ?ひょっとして逆?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが
間違いなく<兎虎>です。おじさんはこの後、かるーく逆襲されて
気持ちよく歔かされちゃいます(^▽^;)

よろしければ、お手に取ってみてくださいませ。

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2/12新刊「絶対服従命令2」(完) 

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ザ☆ヒーローショウ新刊その2

1月インテ新刊の続き。パラレルで新人編集×漫画家設定。
ちょっと外道なところで終わってしまっていたので
頑張って続きを書きました!ちゃんとラブラブENDになっています。
バニーちゃんの寄りきり勝ちって感じ(*´∀`*)

13歳のバニーちゃんと、まだ「おじさん」じゃなかった頃の虎徹さんが
出逢う場面も書けたので自分としては結構楽しかったです。
たまにはパラレルも良いですね。

そんなわけで以下サンプル(抜粋)です↓


          ※※※   ※※※   ※※※



「まったく、あなたという人は」
 苦々しい声と共に、横から長い腕が伸びてきたかと思うと、あっさり捕まって壁に押さえつけられてしまった。
「う、わ…っ!」
 そして―――――
「ちょ、おい! 何す……うっ…………ん、んんんーっ!」
 強引に触れてきた唇から、ぬるりと舌が侵入してくる。
「待っ……んぅ…っ」
 なんとか逃れようと腰を引いても相手がどんどん押してくるので、口づけされたまま壁を擦るようにして、結局部屋の隅まで追い詰められてしまった。
「……ふっ、ぅ……ん、ん……」
 いくら廊下から死角とはいえ、誰が突然入ってくるかも分からないオープンスペースで年下の男に抱きすくめられて、貪るような口づけをされている。それだけで羞恥も焦りもハンパじゃない。神経が焼き切れてショートしそうだ。
 おまけに膝で脚を割り開かれ、下肢を押さえつけられているせいで、さっきから股間の物までぐいぐいと刺激されてしまっていて、なおさらヤバイ。
「んう、ぅ…っ」
 唾液と共に絡まる舌の動きが生々しくて、ゾクゾクする。
 この前みたいに縛られているわけではないから殴るなり、突き飛ばすなりすればいいものを、初めてキスを経験した十代の少年みたいに頭が真っ白になって、手足がまるで言うことをきかないのだ。
(なんで、俺…………こいつとキスしてんだっけ?)
 快感という見えない枷に抵抗を奪われた虎徹は、ぼーっとしてきた頭で理由を考えながらも、久しぶりに味わう濃厚な口づけに半ば無意識に応え始めていた。
「…ぁ、ふっ……ん…ぅ」
「ん……っ」
 深く合わせた唇の間で生き物のように互いの口腔を蹂躙する舌が、艶めかしい吐息を二人から引き出していく。こぼれ落ちる微かな喘ぎは鼻にかかっていて、まるで甘えているようだ。
 鼓動も乱れ、ますます身体が火照っていく。
 ぴちゃりと濡れた音を立てて唇が離れるまで、いったいどれくらいそうして抱き合っていたのだろう。
「気持ちよかったですか?」
 くすりと笑われながら、指先で濡れた唇を拭われて、虎徹はようやく自分が両手でバーナビーのジャケットにしがみついていたことにハッと気づいて、顔から火を噴いた。
「なっ……んんんなわけあるかっ!」
「どもってますよ」
「う、うるさいっ!」
 声も若干裏返っている。
「顔、真っ赤ですね」
「これは……アレだ、暑いからだ!」
「今日はかなり気温低いみたいですけど」
「だからいちいち反論してくんなよっ! だいたいおまえがあんな…………」
 あっさり切り返されて言い逃れできず、尻すぼみに言葉が消えていく。
「……あんなことすっから……」
 むうっと唇を尖らせて膨れっ面になると、目の前のハンサムが皮肉な笑みを浮かべた。
「まったく信じられない人だな」
「いや、それ……俺のセリフだから」
 こんな場所でいきなりベロチューかます奴の方が信じられないよ、誰かに見られたらどうするつもりだ、と心の底からツッコミたかったのに。
「いい歳して拗ねないでくださいよ、可愛いから」
「悪かったな……ん?」
 またしても脳の回路が一旦停止してしまう。
(なんか今、変なセリフが聞こえたような……)
「犯したくなっちゃうじゃないですか」
「はぁっ?」
 その隙に、さらに変なことを言われて(しかも笑顔で)、もうこれ以上後ろには下がれないのに逃げたがっている身体をぴたりと壁に張りつかせて、ぶるぶるぶると何度もかぶりを振った。視界が滲んでいたから、ちょっぴり涙目になっていたかもしれない。
 そんな虎徹を嘲笑うかの如く、ゆっくりと顔を寄せてきたバーナビーが耳元に唇を寄せて囁く。
「あのオモチャが気に入ったなら、また挿れて差し上げましょうか?」
「て、てめっ…!」
 さすがにカッと頭に血が上って振り上げた腕が、見事にバーナビーの顔にガツンとヒットして、眼鏡が床に吹っ飛んだ。避けなかったのだ。
「……冗談です」
 この間はすみませんでしたと一転して殊勝に頭を下げられ、それ以上怒れなくなった。
「いや、まぁ…………分かりゃいいんだけどよ」
 本当はその程度で済ますことではないかもしれない。しかし女の子じゃあるまいし、あまり騒ぎ立てるのもどうかと思ってしまうのだ。一方的に触られてのこととはいえ、結局自分も吐き出しているから尚のこと、ちょっとだけバツが悪い。
 それに今は、他に気になることができてしまった。
「なぁバニー、ちゃんと理由を話してくれ。……俺には聞く権利あるだろ?」
 分からないことだらけで、混乱しているんだと眼差しで強く訴える。
「…………」
 バーナビーの視線は床に向いたまま、なかなか上がってこない。
 何か迷っているようだ。
「おまえ、自分から俺の担当になるって言ったんだって? 順位引き上げる約束までして。なんでそんな大事なこと、俺に言わなかったんだよ。もしダメだったら、おまえの立場もまずくなるんじゃねーのか?」
「当然そうなるでしょうね」
「だったら……」
 虎徹が言い募る前に、有能な新人は片手でそれを制した。
「僕は最初から負けると分かってる賭けなんかしませんよ。やるからには勝ちます」
「その意気込みはありがたいけどさ。実際どうなるか分かんねーし」
「大事なことなんです。僕にとっても」
 ようやく見つめ返してきたエメラルド色の瞳には、強い意志が感じられる。
「だから……どうして……」
 そんな目で見つめてくるんだ。
 虎徹の心の声が届いたのか、バーナビーは分かりましたと頷いた。
「全部お話します。ただ、ずっとここで立ち話というのもなんですから、移動しましょうか。ここから近いので、僕の部屋でもいいですか? ……それとも、まだ二人きりになるのが怖い、なんてことは……」
「あるわけねーだろ!」
 怖いかと訊かれて、大の大人が素直に頷けるわけがない。
「ぜんっぜん平気だっつーの。そっちこそ大人を舐めるなよ。逆襲されないように用心しとけ!」
 やや大袈裟な手振り付きで答える虎徹の傍らで、生意気な若者がくすりと笑っていることには気づかないフリをした。



          ※※※   ※※※   ※※※



いずれ後日談を出すかもしれませんが、今回の本で一応完結しています。
なので本当は「1」「2」より、「前編」「後編」の方が正しいかも。
よろしければお手に取ってみてくださいませ( ´ ▽ ` )


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【モブ虎/2】危険な接待 【1】 

[ 妄想Adapter]

この作品は夢小説です。名前の変換は目次 小説ページで設定できます

 その日、虎徹が呼び出されたのはゴールドステージにある有名ホテルの一室だった。
 しかも、最上階にあるVIP御用達のインペリアルスイートだ。
「お待ちしておりました。ワイルドタイガー様ですね?」
 きっちりと測ったようなお辞儀で出迎えた痩せぎすの男が、低い声音と慇懃な口調で尋ねてくる。服には皺一つなく、髪もきっちりと撫でつけてある。直接ご挨拶するようにと会社から言い渡された「大切なお客様」の秘書か、もしくは執事というやつだろうか。
「は、はぁ……」
「こちらへどうぞ」
(参ったなぁ、賠償額いくらだっけか)
 男の案内で広々とした部屋を抜けて奥の間へと足を運びながら、虎徹はため息をついた。凝った室内装飾、洒落たインテリア。足音をすべて吸い取ってしまうやわらかすぎる絨毯。どっちを向いてもブルジョワジーの匂い漂う空間だ。
(うわー、この絨毯すんげぇふかふか! ピアノまで置いてあるよ。誰か弾く奴いるのかね)
 内心で茶化しながらも、早くも帰りたい気持ちでいっぱいになってくる。
 何しろ閉ざされた扉の向こうで待ち受けているのは、つい先日、彼が破壊したビルや広場の所有者たちだ。聞いたところによると、運悪くたまたまスポンサー会社と縁のある人物が含まれていたらしい。

『今回は相手がまずかったね』
 渋い表情でロイズ氏は言った。
『大株主と重要な取引先を同時に怒らせたとあっては、さすがに致命的だ。それでもなんとかスポンサーを降りることだけは思い留まってもらったけど、キミ相当印象悪くなってるから。誠心誠意謝ってきてくれないと困るよ』
 そうしてたっぷりお説教を食らった後、虎徹はここへ謝罪に行くようにと指示を受けたのだ。
『今夜、CEOがパーティーを開くらしい。キミが無駄に壊したビルの持ち主たちも呼ばれているそうだ。本当は僕も一緒に行くつもりだったんだけど、先方がタイガーだけでいいって言うもんだからね。多少ムチャなこと振られても、賠償金の支払い条件以外はとりあえずハイハイってなんでも言うこと聞いて、愛想よく振舞ってきてくれたまえよ。直接頭を下げれば向こうも気が済むだろうから、くれぐれも粗相のないように。いいね?』

 嫌です、なんて言えるはずがない。
 以前ベン氏にも諭されたように、正義の壊し屋、間抜けな賠償金野郎と世間に揶揄されようとも変わらずにヒーローとして活動できるのは、すべてスポンサー様と所属会社のおかげなのだ。
 まったくもって気は進まなかったが、やはりここは耐えるしかないだろう。
(どんなお偉いさんがいることやら……)
 わざわざ呼び出すくらいだから、きっとネチネチ嫌味を言われるに違いない。
(ま、仕方ねぇか)
 覚悟を決めて、ドアノブに手をかけた。
 ところが。
「やぁ、ようこそ! 待っていたよ、ワイルドタイガー」
 予想は大きく覆された。歩み寄ってきた壮年の人物はにこやかな笑みを浮かべながら、握手を求めてきたのだ。
「さぁどうぞ、座ってくれたまえ」
「あ……ど、どうも」
(この人がスポンサーのCEOか? 結構若いな)
 もっと老齢の古狸っぽい人物が待ち受けているのではと身構えていたのだが、どう見ても五十代ぐらいだ。パリッとした仕立てのいいスーツを身に纏っている。おまけに友人のように親しげに肩を抱かれてイスを勧められ、手ずからコーヒーまで淹れてもらってしまった。
 てっきり頭ごなしに怒鳴られると思っていたから、なんだか拍子抜けだ。
 聞けば、肝心の謝罪相手はまだ到着していないらしい。だとしてもフレンドリーすぎる気はしたのだが。
「すまなかったね、わざわざ足を運んでもらって」
「いえいえ、とんでもない!」
(なんだよ、聞いてた話とぜんっぜん違うじゃねーか)
 さてはロイズさんが大袈裟に言ったんだなと、日頃から口うるさい上司の顔を思い浮かべて、虎徹はホッと胸を撫で下ろした。
「こちらこそご迷惑をおかけしてしまって」
「まぁ確かに最初は社内でもちょっとした騒ぎになったんだが、ここだけの話、彼らは昔からワイルドタイガーの大ファンでね。もちろんこの私もだ。しかも最近、君はまた新たに脚光を浴びているだろう? だからどうしても直接会って話がしたいってお願いされてしまったんだよ」
「あ、なんだ。そーなんスか?」
 肩からスーッと力が抜けていく。
(そっか……俺のファンなのか)
 よかった。やはりこの街にはヒーローを愛する人々が大勢いるのだ。
 虎徹は幸せな気持ちになった。
「だったら最初からそう言ってくださいよ。正直すんげぇビビッてたんスから」
「ハハハ、それは申し訳なかった。アポロンメディアさんにはちょっと言いづらくてねぇ。特にあのロイズさんには」
 茶目っ気たっぷりに笑うCEOと顔を見合わせ、なるほどと頷き合う。出されたコーヒーで緊張に渇いていた喉を潤しながら、しばし上司の噂話に花が咲いた。
「まぁそういうわけだから、ワイルドタイガーが大好きな我々にちょっとの間サービスしてもらえれば、賠償額はかなり大目に見てもらえるはずだよ」
「そりゃあ助かります!」
 来た甲斐があった。ロイズさんに良い報告ができそうだ。密かに胸を躍らせていると、最初に虎徹を出迎えた秘書風の男が現れ、先程と同じく慇懃な口調で準備が整いましたと告げた。きっと客が到着したのだろう。
「あ、じゃあ俺、さっそく……」
 挨拶しようと勢い込んで立ち上がる。
 いや、違う。立ち上がろうとしたのだ。その瞬間、身体がぐらりと傾き―――――気づいた時には床に倒れ込んでいた。
(…………あ、れ?)
 思考がぼんやりと霞んでいく。手足がまるで動かない。重力がいきなり十倍ぐらいになった感じだ。
(……なんだ、これ…?)
 ひどい眩暈に視界がぐるぐると回りだす。すると先程の男が上から覗き込んできて、ニヤリとほくそ笑んだ。
「夜は長い。いっぱいサービスしてくれたまえよ、ワイルドタイガー」
 毒を含んだ笑みに、ようやく謀られたのだと気づく。
「…………っ」
 だが、言い返す間もなく、意識は闇に飲み込まれていった。


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【モブ虎/2】危険な接待 【2】 

[ 妄想Adapter]

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(…………まぶし……)
 最初に気づいたのは刺すような眩い光だ。目の奥を光に灼かれて、唐突に意識が甦ってくる。身体がふわりと浮くような感覚。
 だが、この時すでに地獄は始まっていたのだ。
(な、なんだ……これ?)
 重い瞼をこじ開けても、虎徹は自分の身に何が起こっているのか、すぐには理解できなかった。なぜなら全身をロープで奇妙な形に縛り上げられ、床に座り込んでいたからだ。
 両腕はしっかりと後ろ手に縛られているし、足も開脚して膝を折り曲げた状態で、身動きできないように括られている。胸のあたりで網目模様に形作られた縄は身体の中心を通って、無理やり開かれている股間にまでぎっちりと食い込んでいた。これではまるでSMプレイでもされているかのようだ。
(……なんで俺、こんな格好してんだ?)
 よく見れば着ている物も違う。いつもの出勤スタイルで来たはずなのに、そのままなのはアイパッチだけで、どういうわけか今身につけているのは、かつてTOPMAGに所属していた頃に愛用していた青いヒーロースーツだった。……いや、似せてはあるが着心地は全然違うから、専門店が扱っているというレプリカかもしれない。
 その証拠に、いくら斉藤さんにクソスーツというありがたくない称号をもらってしまったとはいえ、簡単に破れるはずのないヒーロースーツが肩や胸元のあたりで大きく裂けていて、本来なら繋がっているはずのフェイスマスクもない。
(えーと、確かさっきコーヒー飲んでて…………そんで、急にぐらっと……)
 まだぼんやりしている頭で記憶をたどっていると、上から唐突に声をかけられた。
「気分はどうだね?」
「……え?」
 縄がかかっているせいでやや動かしづらい首をのろのろと持ち上げ、声のした方を仰ぎ見る。
 そこに立っていたのは、先程の人物とは別の男だった。やはり五十代後半ぐらいだろうか。表情は穏やかなのに、なぜか眼だけはギラついている。さらに奇妙なことに、その男性はスーツではなくガウンのように丈の長い白いバスローブを纏っていた。
「まだハッキリとは目覚めないかな」
 ククッと喉奥で笑った男が手を伸ばしてくる。肉厚で脂ぎった指に頬を撫でられて、途端にぞわりと鳥肌が立った。考えるより先に身体が勝手に反応したようだ。
(この連中はいったい……)
 頭にかかっていた霞が次第に晴れて、事態が飲み込めてくると、あまりにも異常な光景に改めてぞわぞわと寒気がしてきた。
 場所は先程と同じホテルの一室だろう。周りにいるのは男性ばかり五名。虎徹に一服盛った人物と慇懃な執事も数歩離れた位置に控えているが、手前にいる三名はいずれも同じ白いバスローブ姿で、縛られている虎徹を嬉々とした眼で見下ろしている。彼らが後から来たお客様、つまり謝罪相手だとしても、こんな格好を強いられる理由がさっぱり分からない。
「あんたら……いったい何が目的だ?」
 虎徹は自分をぐるりと取り囲んでいる男たちを睨み上げた。
「おいおい、もう忘れてしまったのかい? 大事なお客様にサービスしてくれと、さっき説明したじゃないか」
 さらりと返ってきた答えは場にそぐわぬ明るい調子で、薬を盛った男の表情には後ろ暗さなどまるで窺えない。
「この格好でか? いったいどんなサービスしろってんだよ」
「見れば分かるだろう、肉体奉仕だよ」
「……は? にく……って?」
 あまりにも馴染みのないセリフに思わずきょとんとしてしまった虎徹に、周りがどっと失笑した。
「さすが正義のヒーロー、心も純粋で清らかだ。自分がそういう目で見られているとは考えもしないようだね」
「だからこそ乱す甲斐があるというものでしょう」
「にしても芸術的な縛りですなぁ」
 バスローブその2、その3がニヤつきながら口を挟むと、スーツ姿のCEOはすぐ後ろに控えている痩せぎすの執事を振り返って、彼の仕事は完璧ですよと胸を張った。
「亀甲縛りに蹲踞を組み合わせました。むろん穴の洗浄から薬、器具の仕込みまで準備も万全に施してあります。存分にお楽しみください」
 浮かべているのはいかにもな営業スマイルだ。
「ほう、もう挿れてあるのか?」
「はい」
 今度は執事が客の問いかけに頷いた。
 無表情なまま、低い声音でぼそりと答える。
「かなり狭そうでしたので、小型の物で多少慣らしておきました」
「手回しがいいね。だったらすぐに大きいやつも呑み込めるかな?」
「おそらくは」
(な……なんの話してんだ、こいつら?)
 バスローブたちの意味不明な会話に眉をしかめていると、男の一人がずいっと顔を寄せて覗き込んできた。
「どれ、そろそろ身体の奥が疼きだす頃かな?」
 なんだ、そりゃ。おまえたちの言ってること全然わっかんねーよ!
 そう怒鳴ってやろうとした時、虎徹はふと己の異変に気がついた。身じろぎした瞬間、体内に硬い物があると感じたのだ。
 手足や股間に食い込む縄の感触や、恥ずかしい格好に縛り上げられているという事実にばかり気を取られていたが、どうやら何か異物まで埋め込まれているらしい。それも口には出し難い、とんでもない所に。
 いったい自分は気を失っている間に何をされたんだ、と虎徹は青くなった。そのくせ動き回っているわけでもないのに、体温はどんどん上がっているようだし、鼓動も速くなってきている。中でも人工物の硬さを感じるあたりの粘膜が、かなり熱を帯びているようで。
(なんだ、これ…………なんか奥の方が、ジンジンして……)
 堪えきれず、半ば無意識にもじもじと腰を動かしていると、男がにんまりと目を細める。
「おお、どうやら効果が出てきたようだね」
「待ち侘びたぞ。さぁ早く始めてくれ!」
 バスローブたちの要求にスーツ男が頷き、リモコンを取り出した。
 すると次の瞬間――――
「ひっ! あ……あああ、あ…っ!」
 身体の内側になんとも言えない振動を直接感じて、虎徹は思わず悲鳴を発しながらぐんと背筋を反らしていた。もっとも縛られているから、さほど大きく動くことはできない。立ち上がることもできず、可能なのは、ただ腰を小刻みに揺することぐらいだ。
「あ……あ…ぁ」
 そのせいか内側の粘膜が埋め込まれている物をぎゅっと締めつけてしまって、なんとなく異物の正体が分かってしまった。
(これって、まさか……)
 すると執事もどきが耳元に唇を寄せてきて、
「どうですか、ローターのお味は? 初めてでしょう?」
 ハッキリした言葉で、とうとう認めたくない事実を突きつけられた。
「中に塗った薬もすっかり吸収されたみたいですね。そのうち掻き回して欲しくて、自分からねだるようになりますよ」
 赤ん坊の頃、医者や母親に触れられた以外は、誰の目にも晒したことのない秘孔を見知らぬ男に弄られて、中に電動のオモチャまで仕込まれたなんて。
「ば……ばか、な……」
 背筋にぞわりと怖気が走った。
(ありえねぇだろ……なんだよ、これ!)
 戸惑いと驚きが怒りに変わり、ぐっと力が湧いてくる。
 だが――――なぜか、いつもの青い光が出てこない。
「ああ、あらかじめ言っておきますけど能力を発動して逃げようとしても無駄ですよ。それができないように暗示をかけましたから」
「暗示…?」
 衝撃の中、さらに追い討ちをかけられた。
「あなたは実にかかりやすいタイプでした。私が解くまで、能力は発動できないと思いますよ。それに……もし仮にあなたがこの役目を降りた場合、身代わりになるのは相棒であるバーナビーさんだと伺いましたが、それでも構いませんか?」
 執事の視線は主であるCEOに向けられている。もしも暗示とやらが上手くいかず虎徹が逃げ出していたら、大事な相棒を巻き込むつもりだったのだろうか。
「なっ……んなこと、あいつが了承するわけねーだろ!」
 腹の底から吠えたはずの怒声はひどく掠れていた。
 電動のオモチャは一定のリズムで粘膜を擦り続けていて、すぐにでも取り出したいと思っているはずなのに、こんな緩やかな動きでは物足りないと頭の隅で勝手に誰かが呟いている。
「そうかね。彼は現実主義者みたいだから、ヒーローを続けるためなら条件次第で受け入れてくれるんじゃないかな。なんなら代役を頼んでみようか?」
 まるですべてを見抜いているような眼をして、男は薄笑いを浮かべながら携帯を差し出してきた。虎徹の物だ。両手を縛られていて受け取れない自分の代わりに、男の指が勝手にアドレスに登録されているナンバーを押す。
『はい、もしもし』
 数秒後、聞き覚えのある声が鼓膜を震わせた。
「バ、バニー!」
 咄嗟に叫んだものの二の句が次げず、すぐに沈黙してしまう。
 助けてくれと頼んで、こんな無様な格好をあいつに晒すのか?
 いや、それよりも。
『虎徹さん? どうしたんですか、いったい』
 幾分不審がっているようだが、耳に届く声音はすぐにやわらかくなった。その変化は虎徹自身に対する彼の態度の移り変わりを思い出させて、胸にぎゅっと絞られるような痛みが走った。
「…………っ」
『そんな大声出さなくても、ちゃんと聞こえてますよ。スポンサーへの謝罪はもう終わったんでしょう? 何かあったんですか?』
 出会ったばかりの頃と違って、つっけんどんな態度を取っていても尋ねてくる声がやさしいから、なおのこと。
「…………あ、いや……なんでもねぇ。悪かったな急に。ちょっと酔ってて、ついおまえの番号押しちまった」
『仕方のない人ですね。あんまり飲みすぎないでくださいよ。二日酔いで登場するヒーローなんてカッコ悪いですから』
「ハイハイ、分かったよ。気をつける。……じゃあな」
『おやすみなさい』
 固く唇を引き結び、通話が切れる音を聞いた虎徹は、視線を携帯から逸らしてじっと床を睨んだ。


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【モブ虎/2】危険な接待 【3】 

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「……きみはやさしいねぇ」
 男の言葉に含まれている労わりと哀れみ。
 高みからこちらを見下ろしている者の侮蔑。
「あいつを巻き込めるわけねぇだろ」
 それらすべてを唾棄する代わりに、虎徹にできたのは低く唸ることだけだ。
「パートナーなのに?」
「パートナーだからだよ! あいつは俺の大事な相棒だ。おまえたちみたいな奴らに好き勝手させてたまるかっ!」
「さすが今一番人気のタイガー&バーナビーだ。いいコンビじゃないか」
 男たちの間に揶揄を含んだ笑いの波が広がっていく。
 そして、狙い澄ましたように異物の振動が強さを増した。
「だっ……いたい、これ……ロイズさんだって知らないはず……うっ」
「そうだね、彼は何も知らないだろう。だがまぁ、これも大人の事情というやつだ。君らヒーローには分からないかもしれないが、ビジネスや政治の世界ではわりとよくあることなんだよ」
「何がっ……こんなの、ただの犯罪…………あ、あああっ!」
 身体を内側から崩されていくような感覚にどこまで耐えられるだろう。
 目の端に生理的な涙が滲んできた。
「心配いらないよ、タイガー。我々は奉仕だけを望んだりしない。ちゃんときみも気持ちよくさせてあげるからね」
「そうそう。だから、いい声を聞かせてくれ」
「くっ……」
 舌なめずりするように囁かれ、無遠慮な手で身体をあちこち弄られて、唇が戦慄く。声を堪えているのが苦しい。
「……う…ぅ」
「ここもたっぷり可愛がってあげるよ」
「ぁ、んっ……んっ」
 裂けた布地の隙間から覗いている左右それぞれの胸の突起を指先で摘まれたり、ぐりぐりと押し潰すようにして捏ね回されるだけで、全身にビリビリと痺れが走った。
「所属が変わってからスーツが味気なくなってしまったからね。前のトップマグは全身のラインがくっきり出ていて実によかった」
「中継の度にあのスーツが破れないものかと、毎回犯人を応援していたんだが」
「かなり昔に一度だけあったねぇ、そういうことが」
「あれは見事だった! きれいに縦に裂けてね、脇腹から膝あたりまでの肌が露出して興奮したなぁ」
 囚われの身に愛撫を施しながら彼らが嬉々として話しているのは、かなり昔、虎徹がまだデビューして間もない頃のことだ。確かに一度だけ戦闘中にスーツが破れてしまったことがあった。怪我はそれほど酷くなかったが、ベンさんが上と掛け合ってくれたおかげで、その後、強度が大幅に改善されるきっかけとなった。
 当時は視聴率もそれほどよくなかったから、覚えている人間はごくわずかだろう。彼らが古くからワイルドタイガーのファンであるというのは嘘ではないようだ。ただし、方向性は完全に間違っているが。
「私はこの太腿のラインが好きなんだよ」
 バスローブの一人が鼻息を荒くしながら手のひらで内腿を撫で上げる。
「ここ、少し破いてもいいかな?」
「もちろんです。どうぞ」
 許可を得たのはむろんタイガーにではない。
 執事もどきがナイフを差し出し、バスローブ男は興奮に震える手でそれをタイガーの左太腿に当てた。避けようにも、虎徹はほとんど身動きができない状態なので、下手に身体を揺らさないようにじっと堪えているしかない。
「……っ!」
 鋭い刃先がほんの少し肌を掠ったものの、深く傷つけることなくやわらかい布地を切り裂いた。青いヒーロースーツは左の腰骨から膝あたりまでスリットが入ったように破られ、素肌がチラリと露出している。
「お……おお、いいね!」
「これはなかなか」
「縄目と破れた衣装と素肌のコントラストが絶妙だねぇ」
 途端に、三人から歓喜の声が上がった。全員妙に興奮しているようだ。
(野郎の脚なんか見て、何が嬉しいんだよ。この変態ども!)
 内心で苦々しく思いながらも、縛られた上にオモチャと薬で嬲られている虎徹に反論をかます余裕はない。
「……ふっ…ぅ」
 下肢のあやしい疼きはどんどん強くなる一方なのだ。
「裂け目は後ろにも必要じゃないかね? 彼のここ、さっきからずいぶん物欲しそうにヒクヒクしているよ」
「ひ…っ!」
 ここ、と布越しに尻の割れ目を擦られて、びくりと全身が跳ねた。
「小さなオモチャだけでは満足できないだろうしね。前もキツそうだ」
「では、そろそろいじってあげようか」
 今度は脊椎から尾てい骨あたりまでの布をビリビリと切り裂かれ、それぞれの破れ目から六つの手が恥部を目がけて、前から後ろから一斉にスーツの中へと潜り込んでくる。
「ちょ、待……あっ……」
 布地の下ですでに硬く屹立していた竿や袋、脚の付け根などを好き勝手に撫で回された。おまけに鷲掴みにされた双丘を強く揉まれているうちに、中に埋め込まれているローターがさらに奥へと追いやられてしまったようで。
「ひっ! あ……ああ、ぁ……」
 無意識のうちに喉から悲鳴が溢れ出ていた。
「おや、悦いところに当たったようだね?」
「どれどれ」
「よ、よせ…っ」
 ポイントを探るつもりなのだろう。誰かの太い指がずぶずぶと後孔に侵入してきて、乱暴に中を掻き回し始めた。
「ふふっ、このあたりかな?」
「や、やめ……くっ…………あ、あぁ!」
 中に塗られた薬のせいか痛みは感じなかったが、圧迫感や異物感を軽く凌駕してしまうほどのむず痒さは尋常ではない。
「おお、あったあった」
 ましてや狭い器官の中で指を動かされ、敏感な内壁を引っ掻くように擦られたり、緩やかな振動を繰り返しているオモチャをぐいぐいと押しつけられたりしたら、もうたまらなかった。
「ここだろう?」
「うっ! うぅ……くっ」
 これまでにないほど急速に快感の波が押し寄せてきて、虎徹を呑み込んでいく。もっと強い刺激が欲しくて、中を掻き毟りたい衝動を抑えられない。
 指の先まで引き攣るかのように下肢が戦慄く。
「あっ…………あああ、あ…っ!」
 そうして、びくびくっと腿の内側が震えたかと思うと――――気づいた時には、破れ目から引っぱり出されたばかりの分身が白濁したものを撒き散らして弾けていた。
「う、嘘だろ……」
 普段からは考えられない呆気なさだ。しかもほとんど後ろを弄られただけでイッてしまったことになる。それなのに達したばかりとは思えないほど、身体の熱は少しも治まっておらず、どろりとしたものに濡れて汚れた雄の証もまだしっかりと硬度を保っている。
 虎徹は呆然となった。
 当然、オモチャを挿れられている秘孔の疼きも治まるはずがない。
「……あっ」
 勝手にまた揺らめきだした腰の動きを見て、男たちがニヤリとほくそ笑む。
「まだろくに触っていないというのに、はしたないねぇ。よほどこれがお気に召したとみえる」
 後ろにいる男がコードをつかんで、中の物をずるりと一気に引っぱり出した。
「ううっ…」
「もっと大きいのを挿れてあげるといい」
 別の男が代わりにと差し出したのは男性器を模した道具で、グロテスクなパールの飾りがたくさんついているバイブレーターだ。しかもかなり大きい。
 目にした途端、スーッと血の気が引いていくのが分かった。
「これはパールの当たり具合が複雑らしくてねぇ、なかなか人気の品なんだよ。きっと君も気に入るだろう」
「んなわけ…っ」
 少しでも抵抗しようと必死に身を捩ったものの、剥き出しにされた秘孔に硬い物の先端をピタリと押し当てられると、たちまち身が竦んでしまう。
「や、やめてくれ。頼む……」
 本気の懇願だった。みっともないのは承知の上だ。
「情けない声を出さないでくれ、タイガー。我々は君のファンなんだよ」
「そうとも。このぐらい受け止めてくれないと。君は何にでも体当たりでぶつかっていくのが売りだろう?」
「入り口はだいぶほぐれてきている。心配いらんよ、裂けたりはせん」
 さぁ、力を抜きなさい。
 促されたところで、ハイそうですかとできるはずがない。異物による陵辱という未知の恐怖がせり上がってくる。なのに身体の奥の粘膜だけは自分を裏切って、さっきから卑猥な収縮を繰り返しているのだ。
 もっと奥に欲しい、と。
「嫌だ…ぁ」
「嘘はダメだよ。ここをこんなにヒクヒクさせて」
「違っ……」
 早くそこを擦って欲しい、乱暴でもいいから激しく突いて、熱くてむず痒いこの妙な疼きを止めて欲しい。そんな欲求がじわじわと頭を擡げ、虎徹の精神を侵していく。
「犯してくださいと言ってごらん」
「で、できねー……」
 バスローブを纏った男たちは三人がかりで虎徹の尻をつかんで割り開き、何本もの指で入り口の襞を強引に押し広げた。
「お客様、これを」
 今にも凶器を捻じ込もうとしていた男たちを、一旦呼び止めたのは執事もどきだ。とはいえ、思い留まるよう説得してくれるつもりではないらしい。
「もう中は濡らしてあるのだろう?」
「はい。ですが、こちらをお使い頂ければさらによくなるかと」
「そうかね」
 背後でそんな会話が交わされてから数秒後、またしてもバイブの先端が入り口に押しつけられた。今度はヒヤリとする濡れた感触を伴って。
 要するに、あの男はオイルかローションの類を追加するようにと手渡したのだろう。
 次の瞬間、バスローブたちの持ち物よりも確実に大きいと思える凶器はなんの予告もなく、いきなりずぶりと虎徹の中に侵入してきた。
「ひぃ…っ!」
 衝撃は大きかったが、中も異物もたっぷりと濡らしてあるせいか痛みはない。だが、恥ずかしい音を立てて、滑り気を帯びたバイブが狭い器官を押し広げながら奥へ奥へと突き進んでくる感覚に、身悶えせずにはいられなかった。
「……あ…あぁ…っ」
「お、おお…………入る、入るぞ!」
 圧迫感は先程までの比ではない。無理やりこじ開けられていく恐怖が募る。
 そのくせ、おぞましいほどの快感が小さな窄まりの襞を震わせていて――――
「う、うぅ……」
「ほお、一気に奥までいったか」
「旨そうに咥えてますなぁ」
 満足そうな客人に、丁寧にほぐしておきましたから、と執事もどきが平坦な調子で答えた。
「すぐに馴染んで締めつけるでしょう。……こんなふうに」
 唐突にバイブが中でぐにゅりと動きだす。スイッチを押されたのだ。
「いっ…?」
 たちまち張り型にいくつも埋め込まれているパールの粒がランダムな動きで内壁を擦り始めた。
 微かな電子音の唸りが腹の中から響いてくる。ゆっくりと粘膜を押し上げたかと思えば、振動しながら強く擦って、虎徹に悲鳴を上げさせる。
「……ぁ、ひぃ……やっ、あ、あああっ!」
 もう声を堪えるどころではない。
 触られてもいない前茎が、またしてもぐんぐんと勃ち上がってくる。
「ほら、見なさい。先っぽからもう汁がこぼれているじゃないか」
「本当だ。こんなに漏らして……いけないヒーローだねぇ」
 男たちの指が先走りの雫で濡れている先端をぐりぐりと押さえたり、カリの部分を擦ったり、根元から竿を扱き始めると、たちまち溢れ出てくる雫の量が増した。
「あっ、あっ、あっ……」
 死にたくなるほど恥ずかしいのに、前を弄られるとなぜか内壁までさらに疼いて、腰を捩る動きが止まらない。同時に乳首も責められて、いやらしく蠢くバイブの振動に合わせて下肢の前後を嬲られるうちに、早くも二度目の絶頂が訪れた。
「……あ…………あぁ、あ――――……」
 壊れた人形のように身体がガクガクガクと震え、射精する。先程よりも長い時間をかけた放出に苛まれ、いっそ床に倒れ込みたいのに、拘束されているせいでそれもできない。ずっと膝立ち状態のままだ。身動きできないつらさが四肢を痛めつけている。
 それでもまだ淫靡な疼きは治まらず、ぞくぞくと快感が背中を這う。
「おやおや、またイッてしまったのかね?」
 感度が良すぎるというのも考え物だなと男たちが嗤った。
「我々が楽しむ前に出し切ってしまうと困るから、少しの間、ここに蓋をしておこうか」
 一人が執事もどきから細い管のような物を受け取り、イッたばかりの虎徹の分身をつかむ。まさかと思った時には、もうその管は尿道に突き立てられていた。
「や、やめっ! う……ああぁっ!」
 敏感な部分を刺激される痛みと、それ以上の何かが虎徹の目から涙を溢れさせる。
 ゆっくりと挿れられていく管と後ろを掻き回しているオモチャの振動にすべての意識を支配されていく。
「……あ、ああっ……や、やめて……くれ…………たの、む」
 必死の懇願も、悦い声だと喜ばれただけで、胸の突起をチュパチュパと音を立てて吸われた。
「ひぃ…ん、や……やだ……ぁ、ああ…っ」
 射精を遮られ、その一方で後孔は機械による複雑な動きによって強引に抉られ続けている。おまけに縄目の間から覗いている乳首や雄芯を三人の男たちに代わる代わる弄られ、舐められ、しゃぶられて――――

「やぁ、ぁ…っ!」
「すごくいいよ、タイガー。想像以上だ」
 荒い息を吹きかけられながら、最高だと言われた。
「ああ……ぁ、んっ……んんっ」
 おかしくならない方がどうかしている。
 身体も。心も。壊れそうだ。
「屈辱を堪えている表情もよかったが、泣き顔も……実にそそるね」
「……も……ゆるし…………ぁひっ、ひぃ…ん」
 出口の見えない強すぎる快感は苦痛にしかならず、虎徹は不自由な姿勢を強いられたまま、泣いて身悶えた。
 さんざん嬲られ、尿道の管とバイブを引き抜いてもらう頃にはもうヘトヘトになっていたが、当然そこで終わるはずがない。
「さぁ、そろそろ我々も気持ちよくさせてもらおうか」
 俯いていた顎をつかんで持ち上げられ、さらなる絶望を告げられた。
「順番に咥えるんだ。こっちの口と下の口、両方で」


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【モブ虎/2】危険な接待 【4】 

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「……うぐっ…………ふっ、ぅ……」
 虎徹の口腔を犯している男の一物が喉の奥を突くたびに、吐き気がこみ上げる。怒張したモノからは青臭い匂いがするし、ずっと口を塞がれているから息苦しくて仕方がない。
 しかし男はひどく興奮しているらしく、膝立ちしている虎徹の頭を両手でつかんで、やたらと腰を突き入れてくる。
「舌の使い方は下手くそだが、悪くないよ」
「んっ……ぐ…うぅ」
 声にならない嗚咽と共に、新たな涙が頬を伝った。
「こっちの具合は最高だよ、タイガー……」
 背後で腰を動かしている男は、先程からうわ言のように最高だと繰り返している。
 バイブを抜き取られた直後、嬉々として腰を鷲掴みにしてきた男の一人が、わずかな躊躇いも見せずに虎徹の狭く小さな窄まりに己の楔をあてがい、ずぶりと一気に侵入してきたのだ。
 そうして新たな衝撃に悲鳴を上げて悶える虎徹を押さえつけ、強引に腰を使い始めた。
 薬でトロトロにされ、ついさっきまでオモチャに嬲られていた内壁を昂ぶっている楔で思いきり擦られ、抉られるたびに、たまらないほどの快感が脳天まで突き抜ける。
「……んっ、んっ……んんっ……」
 中を掻き回すように大きく腰をグラインドさせたかと思えば、素早く小刻みに突いてきて、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい音を立てながら何度も何度も穿たれて。
「う……うう、ぅ…んっ!」
 悦楽の波に攫われていく。
「いいのかい? ああ、君も気持ちいいんだね。こんなに締めつけてきて……」
 ハァハァと荒い呼吸がうなじにかかった。
「いけないヒーローだ」
 前後からの激しい突き上げに四肢を震わせながらも、抽挿のリズムに合わせて腰が揺らめき、挿入口の襞がヒクヒクと勝手に反応している。薬物によってストッパーを取り払われた身体は恐ろしいほどに貪欲だ。
「うっ……うっ……」
 もう勘弁してくれと訴えることもできず、為すがままに犯されているというのに。身体の奥に点された劣情の灯火は少しも下火にならず、熱を帯びた肌がハッキリと悦びを示している。
 バスローブの男たちはそんな虎徹を目でも愉しみながら陵辱を続けた。
 そして、
「さぁ、そろそろイクからね。ちゃんと受け止めるんだよ」
「……う、ぐっ―――……!」
 どんどん抽挿を速めていった後ろの男はやがて短く呻くと、熱い飛沫をたっぷりと中に放ってから、ようやく離れていった。
 するとまだ閉じきっていない蕾から男の吐き出したものがドロリとこぼれ落ちて、戦慄く太腿を伝い落ちていく。
「はは、いい眺めだねぇ」
 好色そうな呟きと共に笑ったもう一人の男が、すぐさま後ろから伸し掛かってきた。
「今度は私の番だよ」
「……っ!」
 中に注がれたばかりの蜜をこぼしながら、ずぶずぶと押し入ってくる太い雄芯。その感覚に耐えていると、口腔を犯していた前の男が「私もそろそろだ」と低く呻いた。
 口の中に出す気なのだ。
「う、ぶ…っ」
 男の分身が一段と大きく膨らみ、じきに口腔いっぱいに雄の匂いが広がった。
「ふっ……ぐ、ぅぅ」
 喉奥に叩きつけられる飛沫。
 このまま全部飲まされるのかと思ったが、意外にも男は遂情の途中で虎徹の口から己のモノを引き抜いた。途端に白濁した雫が、シャワーのように顔面に降り注ぐ。
「…かはっ…ぁ」
 飲みきれなかった雫を口の端から溢れさせて、虎徹は激しく噎せた。
「ごほっごほっ……う、ぐっ…ごほっ」
 額や頬から、汗と一緒に白濁したものを滴らせて。
「いいね、汚辱にまみれたヒーロー。実に扇情的な眺めだ」
 スーツ姿のCEOが満足そうな笑みでこちらを見つめている。
 お客様も満足されているようで何よりだ、と。
「ああ、実に満足だよ。癖になりそうだ」
 後ろから虎徹を貫いている挿入者が嬉々とした声で黒幕に答えた。
 怒張したモノで蕾を攻め立てている男は、律動を崩さずに虎徹の分身や胸の突起にも手を伸ばしてくる。
「……あっ、あっ…………う、うぅ…っ」
「ふふふ、こんなに身体中ベトベトにされているのに、まだ中がきゅうきゅう吸いついてくる」
「やっ……め、もう……」
「可愛いねぇ」
「ぁん、んん……んっ」
 身体をあちこち撫で回しながら耳朶を舐められた瞬間、虎徹の背筋がぞくりと震えた。
 さんざん感じさせられて喘がされてきたのに、それまでとはまた違う震えが走る。と同時に、昼間あった出来事がふと虎徹の脳裏を掠めた。


『虎徹さんって、耳弱いですよね』
 インタビューの合い間に、バーナビーが突然そんなことを言い出したのだ。
『え? そーか?』
『そうですよ。だって……』
 きれいな指先でちょいちょいと耳を触られただけで、虎徹はうひゃあと肩を竦めた。
『ほらね』
『ほらね、じゃねーよ! びっくりすんだろ』
『すみません。でも、近くでしゃべっただけでもくすぐったそうにしてるし』
 結構くすぐったがりですよね、なんて笑われて恥ずかしくなったので、仕返しにバニーの脇腹を思いきりくすぐってやったら、スタッフ全員に呆れられてしまった。


 ほんの数時間前のことなのに、もうずいぶん遠い昔のことのように思える。
(……バニー)
 おやすみを告げた声はいつもと変わりなかった。きっと彼はあの部屋で静かな夜を過ごしているだろう。
(おまえを巻き込まなくてよかった……本当に……)
「あっ、あっ……うぅ、くっ…」
 見知らぬ男たちに蹂躙されながら、それだけは心から言えると胸中で一人呟く。
「そら、もっと深く咥えるんだ」
「ひぃ…っ」
 じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てながら、執拗に後孔を犯されて。
「も……もう…………あ、あぁ……あ――――……っ!」
 嬌声を上げて淫らに腰を揺らしながら、限界まで達かされて。それでも終わらない客たちの欲望を受け止めさせられている間、そっと大事なものを抱えるように心の内で相棒の面影を追いかけることで、虎徹は耐えた。
 苦痛に満ちた長い長い蹂躙の時間を。
「……はっ……ぁ、ああ……んっ……」
 快感も強すぎれば苦痛になる。
 ましてや強要された接待は長時間に及んだ。
 三人の男たちに思うさま輪姦され、最後にはこの悪夢をセッティングしたスポンサー会社のCEOと執事もどきにまで手を出されて、全員が満足しきる頃には虎徹は文字通りボロ雑巾のごとく痛めつけられていて、どろりとした白い体液にまみれた身体で床に倒れ込んでいた。
 おそらく東の空は白み始めている頃だろう。
(俺、もう……ダメかも………………ごめんな、バニー……)
 光の差し込まない分厚いカーテンの内側で、虎徹は手足を痙攣させながら、やがて気を失った。

 最後は悲鳴も出なかった。



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【モブ虎/2】危険な接待 【5】/完 

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「……さん、……さん!」
 耳元で誰かが呼んでいる。よく知っている声だ。
(……あれ?)
 ぼんやりと浮上してきた意識をその声が揺り起こす。

「起きてください、虎徹さん!」
「えっ?」
 突然ぱちりと目が覚め、瞬きしながら姿勢を直した虎徹は、そこがテレビ局の控え室であることに気づくまでに数秒かかった。
「本気で居眠りしてましたね? のん気な人だな、まったく」
 呆れ顔でため息をついているバーナビーがちらりと視線を落とした先、虎徹が突っ伏して寝ていたテーブルには涎の跡が。
(あ、やべっ)
「ワリィワリィ」
 慌てて服の袖でそれを拭いながら、虎徹はへらっと笑った。内心ひどく大きな引っ掛かりを感じながら。
(なんっかひでぇ夢見てた気がするんだけど……)
 夢は目覚めた瞬間から色褪せて、風に舞う塵のように記憶の棚から消えていく。
 しかし夢を見ている最中、感じていたであろう苦しさや悲しさはまだ残っている。その証拠に胸が押し潰されそうに重苦しくて、痛い。
(うたた寝がまずかったか)
 無理のある体勢で眠っていたからきっと苦しくなったのだろう。そう思ったのだが。
「どうして泣いてるんですか?」
「へ?」
「涙の跡、ついてますよ。悲しい夢でも見たんですか?」
 バーナビーに問われて初めて自分の睫毛が濡れていることに気がついた。
 長くて形のいい指にスッと左の目尻のあたりを撫でられて、戸惑いに視線が泳ぐ。
「いや、悲しいっていうより苦しいっていうか……」
 上手く言葉にできず、口の中でごにょごにょやっていると、バーナビーがまた深々とため息をついた。
「もうじき本番なんですから、そんな顔してないでちゃんとヒーローらしくしててください」
「ハイハイ、分かってますよぉー。ちゃんとするって」
 両手を肩の位置まで挙げて降参のポーズを取る。
「ってか、バニーちゃん張り切ってんね」
「僕は普通です。あなたが緊張感足りないんですよ」
「あっそ」
 いつものように軽口を叩きながら、しかし心は重く塞いだままだった。



 それからほどなくして二人はスタジオでインタビューを受けた。ヒーローの特集を組んだテレビ番組の収録だ。
 慣れた素振りのバーナビーと違って笑顔を引き攣らせたまま収録を終えた虎徹は、帰りの車中で疲れたと連発し、盛大に伸びをした。
「結局今日は一日、取材だの何だの……そんなんばっかだったなァ」
「いいじゃないですか。事件は何も起こらなかったんですから」
「まぁ、そらそーだけどよ」
 同じスケジュールをこなしながら、涼しい顔をしている相棒を横目に肩を竦める。
 朝から丸一日、バーナビーと二人してテレビカメラに張りつかれていたのだ。わざわざ市内のあちこちに移動してロケまで行った。トドメが先程スタジオで撮り終えたばかりのロングインタビューで、虎徹はずいぶんとくたびれてしまったのだが、バーナビーの方はさほどでもないようだ。
「バニーちゃん、いっつもこんなことやっててよく平気だな。テレビのインタビューとかさ、疲れねぇ?」
「いいえ、べつに。仕事ですから」
 人気者の相棒は慣れているのか、あっさり答えた。
「バーナビーくんはキミとは違うの。それよりタイガー、例の件、これからだから。忘れずにしっかり頼むよ」
 同じ車に同乗していたロイズ氏からも突っ込まれ、ついでに嫌な用件まで思い出させられて、虎徹は思わず肩を落とす。
「ああ……ハイ」
「これから何か用事でも?」
「スポンサー様からのお呼びだってさ。賠償金の件でな」
 ようやく仕事が終わったところだというのに。
「そうですか」
「けど、なんでオフィスじゃなくてシティホテルに呼び出しなんだろーな」
「……ホテル?」
 不思議に思って呟いた一言に、隣でバーナビーも怪訝そうな顔をした。答えたのはまたもロイズ氏だ。
「たまたま今夜CEOがパーティーを開くらしいよ。キミが無駄に壊したビルの持ち主たちも呼ばれているそうだ。本当は僕も一緒に行くつもりだったんだけど、先方がタイガーだけでいいって言うもんだからね。多少ムチャなこと振られても、賠償金の支払い条件以外はとりあえずハイハイってなんでも言うこと聞いて、愛想よく振舞ってきてくれたまえよ。直接頭を下げれば向こうも気が済むだろうから、くれぐれも粗相のないように。いいね?」
「へーい」
 気が向かないまま相槌を返し、やがて重い足取りで車を降りた。

 その日、虎徹が呼び出されたのはゴールドステージにある有名ホテル。しかも指定された部屋は、最上階にあるVIP御用達のインペリアルスイートだ。
「……ったく、ヒーローはピザ屋のデリバリーじゃねえっての」
 高層階直通のエレベーターに乗り込み、虎徹は小声でぼやいた。賠償金の件は全面的にこちらが悪いとはいえ、謝罪しろとホテルにヒーローを呼びつける連中がまともであるとは思えない。
 切り取られた窓から地上の景色がぐんぐん遠ざかっていくのを眺めながら、同じくらいのスピードで嫌な予感がせり上がってくるのを感じていた。
 そして、
「お待ちしておりました。ワイルドタイガー様ですね?」
 きっちりと測ったようなお辞儀と慇懃な口調で出迎えた、痩せぎすの男。その眼を見た瞬間、嫌な予感は当たったと思った。
 だが、もう引き返せない。
「は、はぁ……」
「こちらへどうぞ」
 やわらかすぎる絨毯のせいか、一歩進むごとに沈んでいくような感覚に囚われながら、虎徹は案内された部屋へと入っていった。



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【モブ虎/3】逃走中 【1】 

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 息を切らして、建物の隙間を縫うように狭い路地を逃げ惑う。
「ハッ……ハァハァ……」
 後方から迫ってくる足音は二人。いや、三人だろうか。もしかするとハンターの数が増えたのかもしれない。
「くっそぉ…! どうすりゃいいんだよ」
 虎徹は追っ手の死角となる物陰に飛び込んで、身を潜めた。
 長い距離を走ったせいで呼吸はすっかり乱れている。浅い呼気に喘ぐ胸を上下させながら、じっと通りのようすを窺っていると、じきに服装も年齢もバラバラの男三人が目の前を駆け抜けて行った。
「…………まいったなァ」
 なんとかやり過ごしたとはいっても単なる一時凌ぎだ。表通りに出ればハンターと自称する連中がもっとうようよいるだろう。獲物を捕らえようと待ち伏せているかもしれない。しかも厄介なことに、相手はこちらの顔を知っているというのに、虎徹にはいったい誰がハンターなのかさえ見分けることができないのだ。これほどのハンデがあるだろうか?
 正直言って、逃げ切れる自信はまったくなかった。

『NEXTはこの世に危機をもたらす忌まわしき存在。特に貴様のような危険分子を野放しにしておくわけにはいかない。よって我々REDは貴様を狩ることにした。本日午前八時、粛清のため我々の同志がハンターとなって一斉に動き出す。捕らえた後、貴様には相応の罰が下されるであろう』

 今朝、アパートのポストに届いていた不穏な手紙。
 数分後にはその文面を冗談だと笑えなくなってしまった。
(まさか本気で追いかけて来るなんてなぁ)
 知らず知らずのうちにこぼれ落ちたため息は深い。鏑木・T・虎徹、絶体絶命の大ピンチだ。
(だいたい何なんだよ、狩るって……人を珍獣扱いしやがって!)
 差出人不明の手紙が入っているシャツの胸ポケットをベストの上から押さえて、記憶を遡っていく。
 きっかけはおそらく十日ほど前に起こった事故だ。
 ただしそれはテロや犯罪絡みではなく、一般車輌によるただの交通事故だった。しかも虎徹が能力を発揮したことによって死者は一人も出ていない。
 要するに、彼は偶然居合わせた現場で人助けをしたに過ぎないのだ。
 それなのに――――
(いったいどうしてこんなことになっちまったんだ?)
 ここ数日の出来事を思い返しながら、虎徹はぐっと奥歯を噛みしめた。



               ◇◆ ◇◆◇ ◆◇



 用事を済ませ、駅に向かって歩いていた休日の午後。
 突然、背後からキューッと何かを引っ掻くような甲高いブレーキ音が聞こえてきた。
「あっ…?」
 やばい、ぶつかる! そう思って振り向いた瞬間、案の定ガシャンという大きな衝撃音が交差点で鳴り響いた。しかも、ぶつかった弾みでハンドルを取られたのか、一台の乗用車が車線を横切ってまっすぐ歩道に突っ込んでいく。
「……危ない!」
 運の悪いことに、その先には幼い子供の手を引いた母親らしき女性と老人が一人歩いていた。あれこれ迷っている余裕はない。虎徹はすぐさま能力を発動させて、近くにあった街灯を素手でへし折ると、十数メートル先に向かって思いきり投げつけた。むろんハンドレットパワーだからこそできる荒業だ。
「う、うわぁ!」
「……キャーッ!」
 周囲からはワンテンポ遅れて悲鳴が上がった。
 やり投げの要領で放り投げられた街灯は、猛スピードで突っ込んできた車の先端に見事命中。ボンネットを貫いてアスファルトに突き刺さり、事故車が歩道に乗り上げる直前ギリギリのところで停止させた。
「よしっ!」
 無残にも鉄の車体は紙のようにくしゃくしゃに折れ曲がっている。それでも、すぐに座席から自力で転がり出てきたところを見ると、運転手は軽傷で済んだらしい。車が止まったおかげで歩行者も無事だった。お年寄りが腰を抜かした程度だ。最悪の事態は回避することができたと、虎徹は胸を撫で下ろした。
 もっともその直後に周囲で立て続けにガツン、どかんと衝突音が連発したのは計算外だったが。
 突然吹っ飛んできた街灯に驚いて、他の車までハンドル操作を誤ってしまったため、対向車と接触したり、慌てて急ブレーキをかけた結果スピンしてしまい、その横っ腹に後続車が突っ込むという光景が交差点周辺で続けざまに発生したのだ。
「あちゃー……」
 ひょっとしてまたお叱りを受けるだろうか?
(今月はもう予算使い切ったってロイズさん渋い顔してたっけ)
 いや、それどころか下手をすると会社はビタ一文出してくれないかもしれない。何しろヒーローとしての活動中に起こった損害ではないのだ。当然のことながら出動要請など受けていないし、咄嗟のことだったのでアイパッチもつけていない。今の虎徹は周りの人々にヒーローとは認識されていないはずだ。つまり、ただの通りすがりのNEXT能力者に過ぎない。ならば当然、請求は虎徹個人に回ってくるだろう。
 へし折った街灯の分だけでなく、後続の車の修理代まで全部含めると、いったいいくらになるのか考えるだけで眩暈がしてくる。
(けど、人命が第一だしな)
 犯罪ではなく事故だしポイントも付かないが、人の命を助けることができた。虎徹自身はそれだけで満足なのだ。
(……まぁなんとかなるだろ)
 このときは、まだそう思っていた。

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【モブ虎/3】逃走中 【2】 

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「え? またやっちゃったんですか?」
 トレーニングセンターで汗を流した後、昨日の出来事を相棒に話して聞かせると、バーナビーはたちまち形のいい眉をしかめて呆れた声を出した。やっちゃった、とは失礼な言い草だ。
「またってこたぁねぇだろ。なんだよ、やっちゃったって」
 年甲斐もなく、ぶぅと膨れてみせる。すると若いハンサムヒーローは表情を崩さないまま眼鏡を指で押し上げ、言葉通りですけど、とドライに切り返してきた。
「出動中でもないのに能力使うのはなるべく自重した方がいいって、何度も言いましたよね?」
 表情は平静を装っていても、声音やセリフに棘が含まれていて耳が痛い。きっと怒っているのだ。たぶんバニーなりにいろいろと心配してくれているのだろうが、虎徹にだって言い分はある。
「じゃあ罪もない人間が事故に巻き込まれるのを見殺しにしろって言うのか?」
「そうは言っていません。でも、やり方ってもんがあるでしょう」
「ねーよ! そんな暇なかったし、第一能力使わずにどうやって助けるんだよ」
 能力なしでは絶対に無理だったはずだ。そう息巻いた。
「だとしても、街灯は折らなくてもよかったんじゃないですか?」
「じゃあ代わりに何投げるんだよ」
「投げるの前提ですか……」
 だからそこで、壊す、投げる以外の選択肢を加えてくださいよと、バーナビーが脱力したようすでため息をつく。
「子供とお年寄りと女性の三人なら、まとめて抱え上げて逃げることもできたでしょう?」
「そっ…………りゃそうかもしんねーけど……あんときは」
「仕方なかった、は言い訳ですよ」
 結局、厳しい口調でぴしゃりとやり込められて、虎徹はしょんぼりと肩を落とした。
 これではどちらが年上か分からない。
「前にも言ったじゃないですか、気をつけてくださいって。賠償金のことだけじゃありません。最近どうもNEXTに対してよくない感情を抱いている人たちがいるらしいんです」
「んなの昔っからいるだろ、そういう連中は」
 有り難い話ではないが、能力者なら大抵一度や二度はバケモノ扱いされたことがあるはずだ。見ず知らずの他人に怖がられたり気味悪がられるのは当たり前。友人、知人にだって距離を置かれる。そのせいで散々傷ついたりもした。
 それでも虎徹の場合は家族が理解を示してくれたし、レジェンドとの出逢いもあった。特殊な能力を卑下するのではなくヒーローになって役立てようと決めた自分を、妻が支え、後押ししてくれた。娘だって応援してくれている。
 だから今は、多少周囲に引かれたぐらいでは少しも動じない。事故現場で常人離れしたパワーに周囲が悲鳴を上げても、いつものことと思ってさほど気にしていなかったのだ。
 ところが。
「確かにそうなんですけど……ちょっと違うんですよ」
「何が?」
「組織化されてるみたいなんです」
 相棒の表情が思いのほか硬い。暗く沈んでいるようにも見える。
「……バニー?」
 いったいどうしたんだと身を乗り出しかけた途端、後ろからポンと肩を叩かれ、二人の間に割って入ってきたロックバイソンが会話にも参入してきた。
「俺も聞いたことあるぞ。アンチNEXTを名乗る集団ってのは前からいたが、最近じゃあかなり攻撃的なんだと。中でも一番デカイ反NEXT勢力は人類原理主義ってのを謳い文句にしてて、粛清だのなんだのヤバイこと言ってるらしいぜ。俺としちゃ、むしろそっちを逮捕してやりたいね」
「詳しいな、おまえ」
 何も知らなかった虎徹は妙に感心してしまったが、どうやら彼以外にとってはすでに周知の情報らしい。
「おまえが無頓着すぎるんだよ。みんな知ってるぞ」
「ターゲットは犯罪者に限らない、すべてのNEXTはその予備軍だっていうやつでしょ? 極論よねぇ。そんなこと言ったら能力なんか関係なしに、どんな人間だって間違いを犯す可能性はあるんだから」
「ホントむかつく。私そういうの大っ嫌い!」
 ファイヤーエンブレムやブルーローズも同意見らしく、二人とも眦が上がっている。
「……僕も」
「好き嫌いは個人の自由だけど、能力を理由に他人を攻撃したら、偏見を通り越して犯罪者と変わらないでござるよ」
「折紙くんの言う通りだ。許し難い、実に許し難いね!」
 気づけば、いつの間にか全員周りに集まっていた。
「反NEXT勢力、ねぇ」
 以前から信じ難い犯罪を犯す存在としてNEXTを危険視する人々はいたが、それらと対峙して捕まえているのもまた能力者であるヒーローたちだったので、シュテルンビルトの人々はNEXTに対して概ね好意的だったはずだ。
 憎むべきは犯罪者であり、能力者に非ず。
 虎徹たちヒーローの活躍によって、そんな空気が出来上がっていた。ヒーローTVがその役割を果たしてくれていたのは間違いない。
 不安や偏見を持つ者たちが声高に排斥を唱えていなかったのも、能力を正しく使うヒーローという存在を認めてくれていたからだと虎徹は思っている。
 しかし近頃、どうやらその信頼が揺らぎ始めているらしい。
「例のマーベリック事件以来、ネット上では過激な意見が多くなっていましたから」
「そいつらの発言が大衆の不安をますます煽ってるってわけだ」
「へぇ……そうなの?」
 深刻そうな口調で洩らした折紙やロックバイソンのセリフに首を捻ると、隣にいたバーナビーが渋い表情で頷き返してきた。
 事件以降もヒーロー礼賛の姿勢を取り続けるメディアを本当に信頼していいのかという疑念が人々の間に生じ、ネットなどを介して広まっていくにつれて、NEXTの存在を強く否定する者たちが現れたのだという。そしてNEXTから人類の手に主導権を取り戻そうと訴えている集団こそ、近頃巷で噂のREDというグループだと彼らは説明してくれた。
「あくまでも噂だけど。その連中、狩りと称して犯罪者でもないNEXTを大勢で追いたてて、嬲りものにしてるって話よ」
「狩りって……人間をかよ?」
「何それ、ひどい! そんな奴ら、全員逮捕しちゃえばいいのに!」
 女王様の憤慨はもっともだ。
 他のメンバーたちも一様に眉間にくっきりと皺を刻んでいる。
「行方不明になった人もいるようですが、今のところ証拠がないらしくて警察は動いていません。誰がメンバーなのか把握しているのはリーダー格だけのようですし、まだまだ実体の掴めない謎の組織ですからね」
「そんなのに目をつけられたらたまったもんじゃねーな」
「ええ、だから少しは自重してくださいとお願いしているんです。それでなくても虎徹さんは、普段から人助けのためなら場所もタイミングもまったく気にせずに能力を使って、悪目立ちすることがありますから」
「…………確かにあるなぁ、そういうとこ」
「……ですね」
 なぜそこで、みんなして頷くのだろう。
「えっ、俺ぇ? いや、俺は大丈夫だろ」
 だってヒーローだし。
 そんなのに捕まるほど迂闊でもねーし。
 自分自身を指差して、けろりと答えた虎徹に、仲間たちは生温い視線を送ってくる。
「……分かってないわねぇ。そういうあんたが」
「きみが」
「おまえが」
「あなたが」
 みんなバラバラに話し始めたはずなのに「一番危ないと思う」という部分で、不思議なほど全員の声がピタリと揃った。

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【モブ虎/3】逃走中 【3】 

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 今思えば、仲間たちの懸念は見事に当たっていたのだ。
 再三、気をつけてくださいと忠告してくれたバーナビーの心配が的中してしまった。きっとたまたまあの事故現場近くにREDとやらのメンバーが居合わせたのだろう。そして運悪く、能力を発動させているところを目撃されてしまったに違いない。
 もともとNEXTに対して否定的な人間の目に、虎徹は人命救助に尽力した善良な能力者ではなく、唐突に街灯をへし折って放り投げた無法者と映ったのかもしれない。二次災害とも言うべき事故が起こってしまったことで尚更そう見えたのだとしたら、この後の理不尽な展開にも多少の説明はつく。
 事実、その日から異変はささやかな形で始まった。ずっと誰かに尾行されていたのだ。朝、出社している間もランチを食べに出かけたときも、帰宅する途中も頻繁に何者かの視線を感じるようになった。
 なんとか気配を探って相手を捕まえてみても、ごく普通の通行人のようにしか見えず、攻撃的どころか声をかけた途端に怯えたようすで逃げていく。すると別方向からまた視線が刺さってくる。そんなことの繰り返しなのだ。
 他にも何かしてくるかと身構えていても、一向にその気配はない。おかしなことといえば携帯に二、三度無言電話が掛かってきたことくらいだ。ただしどれも違う番号からだったので、単なる間違い電話かもしれない。
 いったいどこの誰が、なんの目的で自分の後をつけているのか。尾行者は全部で何人いるのか。疑問はなかなか解消されないまま、数日が過ぎていった。
 まさかその間に、とんでもない罠が仕掛けられているなんて。
(分かるわけねぇよな)
 結果として、事態は悪い方向へと引き寄せられた。虎徹自身にとって思いも寄らぬ形で。
 それがつまり、この悪趣味な追いかけっこだ。

『――――狩りと称して犯罪者でもないNEXTを大勢で追いたてて、嬲りものにしてるって話よ』

 ポストに入っていた手紙の文面を目にした瞬間、数日前に仲間と交わした会話が脳裏に甦ってきた。
(おいおい、嘘だろぉ)
 差出人は書かれていないが、宛名はちゃんと「鏑木・T・虎徹様」になっている。残念ながら人違いではなさそうだ。
(しかもこれ宛名だけで、切手も住所も……ってことは直接入れていったのか?)
 途端に、ぞわりと寒気がした。
 有り得ないと頭で否定しても、網膜に焼きつけられた「狩る」とか「ハンター」とか「粛清」といった単語がじわじわと胸を締めつけてくる。その息苦しさにエントランスを出たところで立ち止まっていると、ズボンの尻ポケットで携帯が鳴った。
 娘からか、それともバーナビーからだろうか。
 ハッと我に返って虎徹が携帯を手にした途端――――――最初の襲撃者が現れた。路上に停めてあったワゴン車から野球のバットや鉄パイプなどを手にした男たちが飛び出してきて、いきなり襲い掛かってきたのだ。中にはスタンガンを所持している者もいた。
 年齢や体格はバラバラ。全員見覚えのない連中だ。
「ちょ……あぶねーって…………このっ!」
 振り下ろされる凶器を避けて路上に飛び出し、すぐに応戦したが、いくら場慣れしているとはいえ七対一ではそう簡単にはいかない。おまけに虎徹は丸腰だ。
 勢いよく振り回されるバットを躱して男の腕を掴んだ拍子に、持っていた携帯を落としてしまった。
「ああ、くそっ! いい加減にしやがれ! 娘からだったらどうしてくれるんだよ」
 アスファルトの上を滑っていく携帯を目で追いながら、悪態をつく。
 こうなったら俺が全員捕まえてやると決意を固めた時、
「おい、そこで何をしている!」
 鋭い一声が割って入ってきた。制服警官の登場だ。
「いったい何を暴れているんだ?」
 駆け寄ってきたのはアングロサクソン系の三十前後の男性警官で、全員を厳しい目つきで眺め回した。
「お巡りさん、実はうちのポストにこんな手紙が……」
 よかった。これで事件は解決だと、ほっと胸を撫で下ろしながら虎徹は証拠の手紙を差し出そうとした。しかし、この油断こそが罠だったのだ。
「怪しい奴だな。署まで一緒に来い!」
 そう言われたのは襲撃者たちではなく、なぜか虎徹の方で。
「え……俺? ちょ、ちょっと待ってくださいよ! いきなり襲ってきたのはこの連中ですよ! だってほら、どう見たってあっちが怪しいでしょ?」
 いまだ凶器を手にしている男たちを指差して告げる。すると警官が、前に差し出した虎徹の手首にすばやくパチンと何かを嵌めた。
「……へ?」
 一瞬手錠かと焦ったが、嵌められたのは片方だけだ。少しごついデザインブレスと思えなくもないが、何か機械でも組み込まれているらしく、ずっしりと重みがある。
「何だ、これ?」
「ターゲットにタグの取り付け完了。繰り返す、タグの取り付けは完了した」
 こちらを無視して誰かにそう報告している警官の姿を、虎徹は改めてじっと睨み据えた。肩のあたりのデザインが少し特徴的な制服も、金色に輝く胸のバッヂも、ちゃんと本物に見える。取り立てて違和感はない。だが、無理やり嵌められたブレスはいくら力を込めても外せなかった。どうやらロックが掛かっているようだ。
「…………おまえ本物の警官か? これはいったいどういうことだよ?」
「もちろん本物さ。職業は、な」
 ストレートに尋ねると、警官はニヤリと笑って答えた。
「たった今、本部におまえのことを報告をした」
「本部ってのは、まさか警察じゃなくて」
「我々REDの本部だ」
 やっぱり。この男もグルなのだ。
「くっそ! おまえもかよ!」
 朝っぱらから自宅の前で待ち伏せして堂々と襲撃してくる奴らもまずいが、警官はさらにまずい。捕らえた後は制裁を加えるなどと宣言しているのだから、逮捕されてしまったが最後どこへ連行されるか分かったものではないし、たとえ第三者にその場面を目撃されたとしても、警官が相手では虎徹の方が犯罪者と認識されるだけだ。
 だったら今ここで、逆にこいつらを捕らえるべきじゃないか?
 虎徹はわずかに逡巡した。能力の発動は人助けのためと決めているからだ。しかも今は一分しか保たない。それでもこの連中を捕らえて、すべてを暴けば、行方不明になった人たちを助けられるかもしれない。
『そんな奴ら、全員逮捕しちゃえばいいのに』
(同感だぜ、ブルーローズ)
 思い出したセリフに頷いて、ぐっと四肢に力を込めた。
「うおおぉぉっ………………って、あれ?」
 ところが。
 発動しかけたはずの能力がみるみるうちに萎んで消えていく。確かに全身に青い光が浮かび上がってきたはずなのに、途中でスーッと波が引くように消えてしまったのだ。
 まるでエンジンをかけ損なった車みたいに。
(な、なんだ?)
「能力の発動は諦めるんだな」
 訳が分からず戸惑っていると、警官が冷たい笑みと共に無情なセリフを投げかけてきた。見れば、後ろにずらりと控えている襲撃者たちもニヤニヤと嫌な笑いを張りつかせている。そして、むろん彼らの手にはまだ武器が握られている。やる気満々といった感じだ。
「おまえの腕に嵌めたのは我々のリーダーが開発した能力抑制装置だ。まだ開発途中のようだが一定の効果は得られている」
「能力抑制装置? なんだよ、それ。んなの聞いたことねーぞ」
「脳波に影響を与える特殊な信号を出して、能力の発動を抑える。おまえのような危険なNEXTを暴走させないようにするための貴重な品だ。どんなバケモノだろうと、これさえあればもう好きにはさせん」
 疑うなら、何度でも試してみればいい。
 確証を得ている者の傲慢さを滲ませて告げた警官は、腕に嵌めたデジタルウォッチを目の前に差し出してきた。
「ただし、ぐずぐずしている時間はないぞ。本部から指令が出た」
 その眼にはサディスティックな光が。
 立ち上がった3D画面には不吉な文字が浮かんでいる。

 ―――Start the game(獲物を狩れ)―――

「能力なしでどこまで逃げられるか、せいぜい頑張ってみることだな。どんな啼き声を聞かせてくれるか、今から楽しみだ。健闘を祈る」
「なっ……」
 ふと虎徹の脳裏に、一年前マーベリックによって仕掛けられた冤罪のせいで仲間のヒーローたちや警官に追われた苦い記憶が甦ってきた。
 ――――またあれを繰り返すのか。
「冗談じゃねぇ」
 そう思って絶望しかけたが、今回は決定的な違いがある。誰も自分のことを忘れてはいない。誤った情報で操られている一般人が敵に回ったわけでもない。幾人かの犯罪者たちが一般人の輪の中に紛れているだけだ。
(仲間は……バニーは俺の味方だ!)
 だったら今やるべきことは一つしかない。
「ぜってー逃げ切ってやる!」
 虎徹は再び飛び掛ってきた自称ハンターたちの攻撃を躱して、勢いよく駆け出した。
 バニーと連絡を取って人々を焚きつけている張本人を見つけ出し、捕まえてやるのだ。

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【モブ虎/3】逃走中 【4】 

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               ◇◆ ◇◆◇ ◆◇


 とは言うものの、大勢の人間から逃げるのはそう容易いことではない。
 逃走を始めた途端、虎徹は様々な攻撃に曝された。人通りのない道に入れば、武器を持った人間が現れて襲いかかってくる。ならば、と大通りをこっそり歩いていたらいつの間にか数人に取り囲まれていて、ぎょっとしている間に車で連れ去られそうになった。慌てて逃げようと路上を走ったら、追いかけてきた車に撥ねられそうになったりもした。参加人数は思っていたよりもかなり多いようだ。
 こんなにもNEXTを嫌っている人間がいるのかと、だんだん哀しくなってきてしまった。
「……ったく、時代に逆行してるんじゃねーか?」
 獲物のように狩られるのだといきなり宣告されても最初は信じられなかった。事故に巻き込まれそうになった人を助けようとしただけなのに。まさか、そのせいで自分が犯罪者のように追いかけられるハメになるなんて―――――これではまるで大昔の魔女裁判だ。
(絶対おかしいだろ、こんなの)
 それでも市民全体に比べればほんの数パーセントなのだろうが、目印が付いているわけではないので、虎徹には誰がハンターなのかさっぱり分からない。じきに街を行き交う人々すべてが自分を狙っているように思えてきて、戦々恐々となった。
 人目を避けて逃げ回るのは一年前と同じだが、今回はさらにハードルが高くなっているような気がする。一刻も早くバニーと合流しなくては。
「ええっとアポロンメディアのビルは……どっちに行きゃいいんだ?」
 必死に逃げ回っているうちに、ついつい人の少ない方に来てしまったのはまずかったかもしれない。
 せめて携帯があれば仲間に連絡を取って事情を説明できるのだが、悔しいことに乱闘の最中、落としてしまった。きっとそれも計算の内なのだろう。助けを呼べないようにしたのだ。
 ターゲットに決めてからおそらく何人かで連絡を取り合いながら虎徹を尾行し、住所や勤め先を割り出して、タイミングを見計らっていたに違いない。かかってきた電話に気を取られている隙に襲われたのだから、もしかすると直前にかかってきた電話もあの連中からだったのではないだろうか?
(そういや何度かイタズラ電話かかってきたけど、全部外を歩いてる時だったもんな)
 物陰などから虎徹のようすを窺いながら電話をかけて、番号を確認していたのかもしれない。いったいどこからナンバーを調べたんだと疑問も湧くが、例えばこの狩りのメンバーに電話会社の人間が加わっていて、先に住所が確認できていればこっそり調べさせることも不可能ではないだろう。
「普段は善良な一般市民ってとこが厄介だな」
 実際一人一人と向き合えば、さほど危険ではないのかもしれない。傾いた思想を抱えて徒党を組むから危険になるのだ。
 そういう相手にハンドレットパワーで反撃するのはいささか気が引けるが、だからといってまったく使えないのでは話にならない。たった一分、されど一分。敵と向き合う時、その一分間にどう動くかによって事態は大きく変わってくる。
 しかし腕に嵌められた装置はなかなか頑丈にできているらしく、自力では壊すことも外すこともできそうになかった。
 おまけに運悪くこの装置が右手首を覆い隠してしまったため、ヒーロー専用のリストバンドを操作することもできない。
(斉藤さんに頼むには……やっぱ会社まで行かねーとダメか)
 バーナビーのマンションはゴールドステージだが、この時間なら彼も会社にいるはずだ。
(…………バニー)
 今、無性に声が聞きたい。
 会いたくてたまらなかった。
「だから僕が気をつけてくださいってあれほど言ったじゃないですか!」
 そう言ってツンツン怒ってる顔でいいから、早く見たい。そしたら自分は「大丈夫だ、問題ない!」って言い切れるはずだから。
(なんとかして移動しねーと)
 しかし追っ手は容赦なく迫ってくる。
「いたぞ! あの陰だ」
 突然鼓膜に突き刺さってきた声が沈みかけていた思考を中断させた。
「やべっ、見つかった!」
 物陰から飛び出し、全力で走り出す。追っ手を振り切るため、虎徹は再び息を切らして路地を駆け抜けた。



 裏路地を飛び出してから、どこをどう走ったかは覚えていない。気がつくとブロンズにしては結構大きな屋敷の敷地内に逃げ込んでいた。
 大きな木の茂みに身を潜め、辺りを窺う。
 今のところ追ってくる者はなさそうだ。
「はぁー……っ」
 虎徹は深いため息を吐いて、その場にずるずると座り込んだ。朝からずいぶん走らされたので、もうくたくただ。手足が鉛のように重い。空腹はとっくに通り越した。それでも今回はまだ下水道を通っていないだけマシだろうか?
 休憩しながら頭の中でアポロンメディア社へ向かうルートをあれこれ検討していると、不意に背後で人の気配がした。
「……っ!」
 びくりと身体が跳ねて、反射的に振り向く。
 相手も驚いたようすで立ち止まり、その場に固まっていた。
(どっちだ? 敵か、それとも無関係な一般人か?)
 虎徹は素早く視線を走らせ、相手を観察した。
 立っていたのはまだ少年と呼んでいい風貌の若者だった。娘の楓よりはだいぶ上だと思うが、おそらく十代後半だろう。少し気が強そうだ。
 虎徹を捜していたわけではなさそうで、相手もこちらが何者か探っているのが表情で分かる。ハンターではなく、この家の住人だろうか?
「あ……悪い、勝手に入り込んじまって。ちょっと、その、事情があって……」
「おじさん、誰?」
 もごもご言い訳していると、少年の澄んだ緑色の瞳が冷たく尖った。特別顔の造りが似ているわけではないが、なんだか雰囲気が似ていて出会ったばかりの頃のバニーを思い出させる。
 そのせいかほんの一瞬、別の次元に迷い込んで高校生の頃のバニーと巡り会ったような錯覚に陥ってしまった。
(俺よっぽどバニーちゃんに会いたいんだなぁ)
 そんな自分に思わず苦笑しながら、頭を掻く。
「いや、ホントごめん。こう見えても怪しい人間じゃないんだ。ただ悪い連中に追われててさ。なんとかして仲間のところに戻りたいんだけど」
「ふーん……」
 こんな言い訳で信用してもらえるか不安だったが、音を立てて腹の虫が鳴ると、少年はくすりと口角を緩めた。ツンと澄ました表情も少しやわらかくなった気がする。
「まぁいいや。僕もこう見えて悪い奴結構見てるから、おじさんがそうじゃないことぐらいは分かるよ。お腹減ってるんでしょ?」
 何か持ってきてあげようかと言ってくれたのは有り難かったが、虎徹は首を横に振る。
「それより仲間に連絡を取りたいんだ! 携帯持ってないか?」
「あるよ」
 バニーに似た天使があっさりとポケットから取り出した携帯を目にした瞬間、思わず嬉しくて泣きそうになってしまった。
「……ありがとう! ちょっと借りるな。それと、悪いんだけど工具とかあったら、それも貸してくれないか?」
 何か仕掛けがしてあるかもしれない腕の装置を一刻も早く取り外したかったのだ。
 それならあそこに、と物置小屋を指差した少年に導かれて、虎徹は母屋から少し離れた別棟に移動した。
 中は多少埃っぽいが、案外広くて片付いている。
「ここにあるから好きに使っていいよ」
 見ると、大きな工具から小さなドライバーまで様々な道具類が壁に設置された棚にずらりと並んでいた。これだけ揃っていれば、この厄介な装置をぶっ壊すことができるかもしれない。
 昼食の残りが何かあるかもしれないから探してきてあげると言って少年が出て行った後、虎徹はさっそく電話をかけながら工具を物色し始めた。
 電話の相手はもちろんバニーだが、残念ながら携帯の番号を暗記していなかったので、まずは会社にかけた。
 コール音一回ですぐに電話は繋がった。ただし電話口に出たのは事務所のおばちゃんだ。
「あ……もしもし、俺です、虎徹ですっ!」
 連絡も入れずオフィスに顔を出さないことをガミガミ怒られたが、いちいち聞いている暇はない。
「分かりましたって! だからこうして今電話してるじゃないですか。ちゃんと向かってますよ。近くまでは来てるんです。いいからバニーに換わってください!」
 しつこく食い下がろうとするおばちゃんとしばし言い合いをした後、やっとバニーが電話口に出た。
「もしもし、虎徹さんですか?」
 聞きたくてたまらなかった相棒の声だ。
「ああ」
「いったいどうしたんです? 連絡がないから心配してたんですよ。もしかして具合悪いんですか?」
「それが大変なんだよ! 助けてくれ、バニー! ほら、えーとこの間話してたREDとかいう反NEXT勢力の連中! 実は今朝、そいつらが俺の……」
 俺のところに押しかけて来て、いきなり妙な宣言されて、逃げている真っ最中なんだと伝えようとしたのだが。
 全部話し終える前に、手からスッと携帯が奪い取られて、通話を切られてしまった。
「……え?」
(まさか――――)
 この展開はどう考えてもやばいパターンだ。
 ぎくしゃくしながら振り返ると、そこに立っていたのは先程の少年ではなく、長身で厳つい強面の男だった。

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【モブ虎/3】逃走中 【5】 

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 びしりと決まった黒いスーツに黒のサングラス。足元は先の尖ったエナメルの靴。
(どう見ても堅気じゃねーだろ)
 この男が侵入者でないとしたら、つまりここは『そういう家』なのだ。
(……おーい少年、先に教えといてくれよ)
 最初に会ったのがごく普通の学生に見えたから、まさかこういう種類の自由業のお宅だとは思っていなかったのだが。
「貴様、こんなところで何をしている?」
「何って……その、電話を」
 男の手の中で携帯が鳴る。きっとリダイヤルでバニーがかけ直してきたのだ。
 だが無情にも再びコール音は切られてしまった。
「この携帯はおまえのじゃねーよなァ?」
「ええ、まぁ……ハハハ」
 さっきの少年にここにいてもらうべきだったかなぁと冷や汗を流しながら、一歩、また一歩と後退る。
「ちょっとお借りしてたんですよ。あ、ご本人にはちゃんと許可もらってますんで」
 相手に間合いを詰められるたびにじりじり下がって行くうちに、とうとう背中に壁が当たってしまった。
「借りてどうする?」
「どーしても職場に連絡を入れなきゃいけない用事があって。だからソレ、もうちょっとだけ貸してくれませんかね~?」
 問題はこいつが白か黒かという点だが。
「そいつぁ残念だったな。生憎ゲームの途中だから、見逃すわけにはいかねぇんだ」
 男はニヤリと笑って携帯の電源を落とし、代わりにデジタルウォッチの3D画面をオンにした。表示されているのはこの近辺の地図だ。そして男が腕にしている時計は、今朝、ゲーム開始を宣言した警官が身につけていたものと同じデザインだった。
「げっ」
(完璧に黒だ)
「本部からの連絡通りだな。今回は大勢参加してるからとっくに捕まったと思ってたんだが、まさかうちの敷地に忍び込んでるとは」
 どうやら連中は皆、同じタイプの時計を持っているらしい。それで情報を共有しているのだろう。ヒーローたちがリストバンドでしているのと同じように。
「くそっ!」
 あと少しだったのに。虎徹は急いで身を翻し、逃れようとしたが、一瞬早く男の手がそれを阻んだ。腹部にズシンと重たい拳がめり込む。
「ぐっ…」
 アントニオの本気の一発と同じくらい強烈だ。もろに食らってはすぐに動けるはずもなく、蹲りそうになる。その隙に、男は手近にあったワイヤーで虎徹の身体を柱に括りつけてしまった。
(……ここまでか)
 ところが、男はすぐさま本部とやらに連絡を取る気はないようで。
「これでゲーム終了ってのは、なんだか物足りねぇな」
 何を思ったのか、独り言をつぶやきながらまるで舐めるように顔を近づけ、レンズ越しに覗き込んでくる。
「せっかく獲物の方から迷い込んできたんだ。本部に突き出す前に、少しばかり遊んでやるよ」
 そう言って嗤いながら――――本当にべろんと舌で唇を舐められて、虎徹はぎょっと青ざめた。
「な、何を……」
 しかも男の手はズボンのジッパーまで下げようとしている。
「どうして脱がせる必要があるんだよ?」
「驚くことはねぇだろ。どうせ捕まって本部に連行されたら、こういうことをされるんだ。大勢が見ている前でな」
「はぁぁっ?」
 なんだ、そりゃ。
 唖然として固まっているうちに首筋もねっとりと舐められた。
「衆人環視の中で陵辱プレイってやつだ。本部の連中も好きだよなぁ」
「りょうじょ…………」
 有り得ないはずの単語を耳が、脳が拒絶する。
「冗談キツイぜ。誰も喜ばねぇだろ、そんなの」
 なのにグラサン男はこんな時だけ真顔で返してきた。
「そんなことないぜ。少なくとも俺は楽しみだ」
「ひぃぃっ」
 頼む、嘘だと言ってくれ。
 罰だの制裁だのと物騒なことを言われたので、いったいどれほど酷い目に遭わされるんだろうと内心ビビッていたのだが。まさかこういう類のことだったとは。
「聞いてねぇぞ、そんなの!」
 思わず声も裏返るというものだ。
 冗談じゃないと証明でもする気なのか、そんなやり取りを交わしている間にも男の手によってシャツのボタンが外され、胸元が露にされていく。身動きできない虎徹はズボンと下着もあっさりずり下ろされて、男の視線に曝された分身が小さく縮こまった。
「まぁ、そう緊張するな。俺はちょっと味見するだけだ」
 ニヤニヤしながら股間のモノを握られて、早くも泣きそうになってくる。
「ま、待て! やめ…………あっ」
 胸の突起をしゃぶられて、わざと音を立てるくらい強く吸われると、嫌なのになぜかぞくぞくと背中が震えておかしな声が出た。
 若く精力的な恋人にすっかり慣らされた身体は、いつの間にか本人が思っている以上に貪欲になってしまったようだ。意に沿わない愛撫にも勝手に反応を返してしまうほどに。
「へぇ、結構感じやすいじゃねーか」
 男はそれに気をよくしたのか、さらに胸の突起を甘噛みしたり舌で転がしたりして、執拗に弄り始めた。
「うぅ…ん、くっ……」
「こっちもどんどん元気になってきたぜ? こりゃあショーは大盛況だなァ」
 数回扱かれただけで下肢にも甘い痺れが走る。
「そん…………あ、あぁ…っ!」
 勃ち上がってきた雄芯の先端を指で強く擦られると、思わずびくんっと腰が跳ねた。
「もう先っぽが濡れてるぞ」
 好き勝手なことを言いながら弱い部分を責め立てられ、目に涙が浮かぶ。
 確かにそこは濡れているらしく、手のひらで上下に擦られるたびにヌチャヌチャという卑猥な音が聞こえてきた。
「……よ、よせ!」
 バニー以外の奴に、そんなところを触られたくはないのに。
「あ……あぁ…っん」
 身体は心を裏切って、次第に熱を帯びてくる。
 見知らぬ男の愛撫に肌が火照っている。
(こんなの、気持ちいいはずねーのに)
「はっ…ぁ、んっ……」
 唾液で濡れた突起を両手の親指で捏ね回されると、ドクンと大きく鼓動が乱れた。
「あっ、あっ……ぁぁん」
「悦い声だ。泣き顔も悪くない。…………やべぇな、ぐっちゃぐちゃに犯してやりたくなってきた」
 男の声も興奮で掠れている。本気で欲情しているのだ。
 しばらくは胸ばかりを弄っていた指が、やがて双丘の隙間へと潜り込んでいく。
「ここにぶち込んでやりてぇ」
「やっ……やめ、ろ」
 耳元で卑猥なセリフを囁かれて、虎徹は必死に抗おうと身を捩った。
 指はまだ硬く閉じている窄まりをこじ開けようと、襞の上で蠢いている。けれどこの調子で中を掻き回されたら、どんなことを口走ってしまうか分からない。

『虎徹さん、言って…………ここに欲しいですか?』

 恋人に甘く意地悪な声で囁かれて降参した時の感覚が甦ってきて、思わず怯えた。
 こんな奴に屈したくはない。頭ではそう思っているのに。
「た、頼む……」
 自分で自分が信じられず、そこだけは嫌だ、勘弁してくれと懇願した。
 それでも男の愛撫は止まらず、果てそうになった時。バタンと大きな音を立ててドアが開いた。
「ちょっと! 何やってんだよ!」
 新手かと思ったが、現れたのはさっきの少年だ。ロールパンの入ったバスケットを手に持っている。キッチンで食べ物を調達して戻ってきてくれたのだ。
「いや……こ、これは、その……」
 黒スーツの男がひどく狼狽えている。反対に怒気を滲ませている少年は無言のままつかつかと二人に歩み寄ってきて、眦をキリキリと吊り上げた。
 それでなくとも朝から緊張の連続で疲労していたのに、一方的な愛撫で追い上げられてぐったりしてしまった虎徹は、涙に濡れた瞳でそんな二人の反応をぼんやり眺めて、まるで夫の浮気現場を見つけた女房みたいだなぁなどと思っていたのだが。
「ほんっと兄さんって男には節操ないよね? いくらこのおじさんが可愛いからって、なんでいきなり襲ってんだよ」
(え、えええぇぇ? この二人、兄弟だったの? …………似てねー)
 あまりにも愕然としたせいで、正気に返ることができた。
「べつにそういうわけじゃねーよ。この男はおまえを襲った奴と同じNEXTだぞ! だから俺は少し懲らしめてやろうと思ってだな」
「そんなの昔の話だし。同じなのは能力者ってことだけだろ」
 呆れた口調で兄の言い分をバッサリ切り捨てた弟は、恥ずかしい格好のまま放置されていた虎徹のワイヤーを外して、解放してくれた。どうやらギリギリのところで助かったようだ。
「ごめんね、おじさん」
「い、いや……」
 バツの悪さに面を伏せたまま、慌てて身繕いを済ませる。
「僕たち好みのタイプが似てるから、兄さんに見つかったらまずいなぁと思ってたんだけどさ。いきなり襲っちゃマズイよね。ちゃんと口説いてからじゃないと」
(この少年、見た目だけじゃなくてズレ方までバニーちゃんに似てる気が……)
「というわけで、改めて口説いてもいい?」
「遠慮しとくよ」
(男に口説かれるのなんて、あいつ一人で充分だっての)
 にっこり微笑みながら告げた顔がちょっと似ているだけに、なおさらバーナビーとダブって見えてしまい、虎徹はそそくさと物置小屋を出た。
 本物のバニーは今頃どうしているだろう。事務所で繋がらない電話にイライラしているだろうか?
(途中で切られちまったからなぁ)
 きっと心配しているだろう。しかし結局、居場所を伝えることはできなかった。救援は望めない。なんとしても自力で逃げなくては。
 表通りをこっそり覗くとハンターらしき人物が数名うろついていたので、裏口から抜け出すことにした。
(……悪い夢ならさっさと覚めてくれ)
 そう祈りながら。


                ◇◆ ◇◆◇ ◆◇

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【モブ虎/3】逃走中 【6】 

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 突然降り出した雨が、シャツを濡らし、肌に張りつかせる。
 目立つベストと帽子は途中で捨てた。できれば違う上着を調達したかったが、なかなか都合よくはいかない。それでも急に降り出した雨のおかげで、誰もが急ぎ足で通り過ぎていく中、あまり目立たずにいくつかの道を横断することができた。
「あれに乗れりゃ早いんだけどな」
 頭上を走るモノレールを見上げて、ぼそりとつぶやく。
 それでも一応ウエストエリアには入ったはずだから、あと少しだ。
 降り注ぐ雨粒を避けて入ったトンネルから鈍色の空を振り仰げば、一年前のことがまざまざと思い出されて、自然と眉間に皺が寄った。
 あの時はベンさんに助けてもらったが、今回はそうはいかない。なぜなら彼もまたアポロンメディア社にいるのだから。
「あと三十分くらいか」
 徒歩で行くしかないのだ。
 ブロンズステージはシルバーやゴールドに比べて狭く入り組んだ道や建物がごちゃごちゃしているエリアが多いので、身を隠す場所も比較的多い。その代わり追跡者たちも近くに潜んでいる可能性があるから、油断はできないのだが。
「ま、なんとかなるさ」
 自分に言い聞かせて、再び雨の中へと駆け出していく。
 しかし―――――
「おいおいオッサン、どこ見て歩いてんだよ~?」
 ずらりと横一列に並んだ若い男四人に道を塞がれて、足を止めた。いかにも素行の悪そうな連中だ。
「俺たちの服が濡れちゃったじゃん」
 ぶつかってはいないはずだが、なんとも分かりやすい因縁のつけ方だ。
「……悪いが金は持ってないぞ」
「ケチくさいこと言わないでさー」
 用心深く男たちの手首を確認してみたが、時計をしている者はいても例の集団とは違うデザインだった。何も嵌めていない奴もいる。
(こいつらは違うみたいだな)
 単なるチンピラだ。さほど気にする必要はないだろう。
 たとえ能力が使えなくても、凶悪な犯罪者たちを相手にしてきた場数は伊達じゃない。安っぽい不良の相手をするのにハンドレットパワーなど必要ないのだ。
「ちょっと急いでるんだ。そこをどいてくれないか」
「ええ? やだよ」
「だったら力ずくで押し通るぞ」
 宣言して、身構える。
 青い光は発していなくても戦闘モードに入ったのが伝わるのか、不良たちは一斉に顔を強張らせた。四対一なら簡単に脅せるとタカをくくっていたのだろう。これなら殴り合いをする必要もなさそうだ。
 雨脚も強くなってきた。急ごう。
 ところが一歩踏み出しかけた途端、
「それは困るのよね」
 背後から女の子の声が聞こえてきてハッと振り返った。
「ターゲットを捕まえたら報奨金が出るの」
「……え?」
 バチンと空気が弾ける音と共に、虎徹の身体に衝撃が走る。
 スタンガンだ。
 薄れていく意識の中、視界の端に捉えた少女の手首にはあの時計が嵌められていた。



 周囲の空気がざわついている。近くに大勢の人間がいるようだ。
 覚醒し切れないまま、そのざわめきの中を漂っていると、ふいに誰かの手が身体に触れた。
「……っ!」
 ピクンと瞼が痙攣し、深い海の底から水面へと引き上げられるようにふっと意識が戻ってくる。
「目覚めたようですね」
 すぐ近くで知らない男の声がした。その声に眠っていた五感も揺さぶられたのだろうか。気づけば、刺すように眩い光が上から降り注いでいた。
「うっ……」
 虎徹は小さく呻いて、二度、三度とゆっくり瞬きを繰り返した。
「同志の皆さん、お待たせしました。ターゲットが目を覚ましましたので儀式を始めたいと思います」
 アナウンスが響く。マイクを通した声だ。
「……え?」
 ようやくハッキリと目覚めた虎徹はぐるりと周りを見回し、四肢を硬直させた。
 光の洪水の元はライトだ。場所はどこかの小さなホールだろうか。目の前には客席があり、暗がりの中、スーツなどを身に着けた男たちがずらりと並んでいる。女性の姿はほとんど見当たらない。
 一方、虎徹がいるのは光に照らされたステージの上だった。
 腰と胸に巻きつけられた太い革のベルトによって、がっちりと身体を拘束されている。しかもそのベルトは上から吊るされた鎖と繋がっているようだ。動こうとするとジャラリと音がして、引き戻された。
 下肢は自由だか、鎖の長さがちょうどまっすぐ立った状態でギリギリにしてあるのだろう。座ることはもちろん、前後左右に動くこともほとんどできない。これでは本当に鎖で繋がれた獣のようだ。
(NEXTは人間じゃねーってのか)
 気を失っていた間はこの鎖にぶら下がっていたので、ベルトで縛られている部分が少し痛んだ。重みがかかっていたせいで鬱血しているかもしれない。
 身体と一緒に縛られている腕には、左右両方に銀色のリングが嵌められている。例の能力を制御するという装置だろう。
 機械によって力を奪い、身動きできないように縛り上げて、嬲り者にする。噂以上の醜悪さだ。

『衆人環視の中で陵辱プレイってやつだ。本部の連中も好きだよなぁ』

 物置小屋で黒いスーツの男が言ったセリフが脳裏に甦ってきて、吐き気がした。
「なんだよ、これ」
「私語は慎みなさい。これはあなたの罪を贖うための儀式です」
 壮年の紳士が傍らに立ち、マイクでしゃべっている。神父の格好をしているくせに、虎徹が普段使っているようなアイパッチで目許を隠しているところを見ると、仲間にも正体を隠したいようだ。もしかすると不埒な見世物の司会進行役というだけでなく、この男がイカレた集団のリーダーなのかもしれない。
 そう思うと猛烈に腹が立った。
「不自然な力によって人々を脅かした罪を素直に認め、罰を受けなさい」
「ふざけんなっ! 何が罪だ。そりゃたまーに物を壊して賠償金を請求されることもあるけどな、俺は人助けのためにしか能力は使ってない! それが俺のポリシーだからな。こんなふうに糾弾される覚えは一切ねぇぞ!」
 怒りに叫ぶ虎徹を神父は冷たい一瞥で見下ろし、舞台の袖に向かって小さく合図を送る。
「御託は必要ありません。反省できないなら、ケモノらしく啼いていればいい。観客を愉しませるために。それがせめてもの償いです」
 すると、カーテンの陰から正装をしたやたらと体格のいい男が三人現れて、虎徹を取り囲んだ。
 たちまち観客席から拍手が湧き起こる。みんなこれから何が起こるか分かっているのだ。
 喝采の中、虎徹は抗うこともできずにシャツを破かれ、ズボンと下着を両脚から引き抜かれた。拘束具に挟まれている布切れがわずかに残っているだけで、もうほとんど裸に剥かれた状態だ。
「……いきなり何しやがる」
「今夜の獲物は威勢がいいな」
 男たちが下卑た笑いを張りつかせながら、胸や下肢に手を伸ばしてきた。三人とも神父と同じように目許を布で覆っているが、劣情を滾らせギラついた表情までは隠せていない。
「それも最初のうちだけさ」
「たっぷり可愛がってやるよ。泣きながら腰を振るぐらいに、な」

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【モブ虎/3】逃走中 【7】 

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「ま、待て! おまえたちこんなことして…………うっ」
 金髪と赤毛の男に両側から胸の突起を強く摘まれて、思わず息を呑み、言葉が詰まった。もう一人の短髪は強弱をつけて下肢の中心を遠慮なく握っている。根元から先端に向かってゆるゆる扱きだすと、そのリズムに合わせて今度は胸を弄っていた二人が意地悪く突起を擦り、爪で弾いた。
「…ぁ、うぅ…っく」
 敏感なところを左右別々に捏ね回されて、なんとも言えない快感が走る。
 男でもこんなところが感じるなんて、前は知らなかったのに。
「もう乳首が立ってきた」
「意外ときれいな色してるじゃねーか」
 左側に立っていた金髪の男が美味そうだとつぶやいて、片方の乳首をおもむろに口に含んだ。
「……んっ!」
 ぷっくりと立ち上がった突起を舌で転がされ、きつく吸い上げられる。すると赤い果実のような色になり、ますます美味そうだと赤毛の男まで舌を出して反対側の乳首を舐り始めた。
「んんっ、ぅ…くっ」
 ヌメヌメと舌の這う感触に声を抑えられない。
「あっ! あぁっ、あ……」
 突起に緩く歯を立てられた拍子に思わず濡れた声がこぼれると、感度いいな、と男たちが嬉しそうに笑った。
「じゃあこっちも早いかな」
「ひぃっ! ゃ…んん」
 擦られ、勃ち上がりかけていた雄芯をいきなり口に含まれて、思わず仰け反る。
 客席の誰かが口笛を吹いた。
「う、うぅ…っ」
 チュパチュパと音を立てて吸われ、虎徹の分身は見知らぬ男の口腔でたちまちグンと頭を擡げていく。完全に形を変えて屹立すると、ステージに膝をついていた短髪男は咥えていた雄芯から一旦口を離した。
「お客様にもっとよく見えるように、脚を上げさせなさい」
 神父の指示で、後ろから膝裏に手を回してきた赤毛と金髪に左右の脚を高く持ち上げられ、大きく股間を割り開かれる。
 中心で勃ち上がっているモノがふるふると震えた。
「なっ……」
 まるで小さな子供がおしっこを促されているような格好で、観客たちに恥部をすべて曝け出しているのだ。
「は、離せっ!」
 あまりにも卑猥な体勢に怒りや羞恥を通り越して、眩暈がした。
「いい加減にしろ、変態ども! こんな…………あっ、あぁ…っ!」
「先っぽもう濡れ濡れだな」
「どんどん溢れてきてる」
 虎徹の身体を弄り回している男たちは、こちらが何を叫ぼうと気にも留めていないようだ。
「……こんなことして、楽しいのかよ?」
 震える声を押し殺して、屈辱を堪えながら尋ねた虎徹に、金髪が耳朶を甘噛みしながら答える。
「知りたかったら、客席をもっとよーく見てみろよ」
 その言葉に促されて伏せていた瞼をのろのろと持ち上げ、暗がりに目を凝らすと、こちらをじっと食い入るように凝視している多くの視線とぶつかった。どれもこれも獲物の痴態を待ち望んでいる興奮に満ちた眼だ。
 こんな場所で股間を露にされ、勃ち上がったモノをアイスキャンディーのようにしゃぶられて――――しかも、それを何人もの人間にじっと観察されているなんて。
「な……んで」
 視線が四肢に絡みつき、ますます肌を火照らせていく。
「さぁ、あなたの恥ずかしい姿に高揚し、溜飲を下げている同志たちのために、たっぷりと啼きなさい」
 神父が告げると、まるで主の言葉に従う忠犬のように短髪の男が再び虎徹の股間に顔を埋めてきた。
「やっ……あ、あぁ!」
 屹立したまま放置されていた分身を根元深く咥え込まれ、ディープスロートを施される。かと思えば、くびれ部分を丁寧に舐め回されたり、敏感な先端を舌先で抉られたりもした。慣れた感じのねっとりとした口淫に、すぐに息が上がってくる。
「……うっ、うぅ…」
 先端から溢れ出る先走りの雫を舐め取られ、鈴口を吸われると、そのまま男の口に全部吐き出してしまいそうになった。
「あぁ…あ、はっ……」
「ハハッ、感度良好。上も下もピクピクしてるぜ」
 金髪は後ろから乳首を苛め続けているし、右手で虎徹の脚を抱えている赤毛は反対側の手で無防備な双丘や、その狭間を撫で回している。
「ふっ、くぅ…んっ」
 三箇所も同時に責められて、じわじわと身体の中心に情欲の炎が点されていった。物置小屋で男に嬲られた時、吐き出さずに終わった快感がまだ燠のように燻っていたのか、それとも衆人環視の中で嬲られているという異様な状態が性感を刺激しているのだろうか。
「やぁ…っ」
「んー、すげぇイイ顔。早く突っ込みてぇ」
「ギャラリーも大喜びだな」
 そして男たちの囁きが、さらに劣情を煽る。
 もしかすると客席とステージの興奮が、肌に直接伝わっているのかもしれない。
「あっ、あっ…………そこは……よせ」
「そこってどこだ?」
 嫌だとかぶりを振りながら口にした言葉を、男たちが嘲笑った。
 今にも弾けそうになっている果実か、それとも少し上から擦られただけでヒクついている後ろの窄まりの方かと。
「こっちをもっと弄って欲しいんじゃねーか?」
 赤毛が指先でするすると狭間を探って、円を描くように後孔の襞をなぞる。
「……あっ!」
 あちこち弄られて過敏になっている身体は、それだけで電流が走ったようにひくりと反応し、腰が泳いだ。
「や……やめ…っ」
「そろそろアレを使いましょう」
 神父の言葉にまた会場が沸く。
 金髪男が頷いて舞台袖に何やらジェスチャーを送ると、アシスタント風の若い男が二名、歩み寄ってきた。一人はビンに入った物を持ち、もう一人は手のひらに乗るくらいの小さな黒いケースを手にしている。
 ケースの中身は小さめの注射器だった。ただし針のついていない、浣腸をするようなやつだ。まさかと思って青ざめた虎徹に、金髪男がにんまりと目を細めた。
「安心しな。ただの催淫剤だ。ちょっとばかり強力なやつだけど」
「さ……」
「ぐっちゃぐちゃに犯して欲しくなって自分からケツ振ってるところを見てもらえばいいんだよ。これはそういうショーなんだから」
「だ、誰がそんな真似するか」
「最初はみんなそう言う。十分も保たないけどな」
 無理やり突っ込まれ、いたぶられたとしても、それはただの暴力だ。だが、たとえ薬の影響だろうと強く感じさせられて、乱されるのはちょっと違う。この連中が言うような痴態を演じてしまったら、それだけ心の傷は深くなるだろう。
「や、やめろっ!」
 けれど、抗おうにも身動きできない虎徹は、男の手が注射器を後孔へと突き立てるのを、恐々としながらただ眺めていることしかできなかった。
「……っく」
 得体の知れない液体が容赦なく注ぎ込まれる。
「五分もすれば完全に体内に吸収される。そこからがショーの本番だ」
 さらりと告げた短髪男が、今度はビンの中身を指で掬い取った。ハチミツのようにとろりとした透明な液体だ。
「その前にココをほぐしてやるから、いい声聞かせろよ」
 宣言とほぼ同時に、滑りを帯びた指がずぶりと後孔に侵入してくる。
「やめっ……………あっ!」
「まずは入り口だ」
「よ、よせ…っ」
 ヌルヌルした指を出し入れしながら細かい襞を押し広げられて、虎徹は短く呻いた。
「ほら、もっと脚広げないと」
「そうそう」
 他の二人も同じようにそこを指で弄り始める。
「……ふっ、く…うぅ」
 三人の男の指が、硬く閉じていた狭い器官を綻ばせていくうちに、身体が内側からどんどん熱く火照っていくのが分かった。それまでも充分煽られ、感じさせられていたが、欲求の強さは比べ物にならない。
 中が疼くのだ。ズクズクと、まるで何かがそこを這い回っているみたいに。
「はっ…ぁ…」
「だいぶ効いてきたようだな」
 呼気の乱れ方から効果を察した男の一人が、さらにたっぷりと潤滑剤を掬い取ってずぶずぶと指を突き入れてきた。今までよりも、もっと奥深い位置まで捻じ込み、液体を内壁に擦り付けていく。
「ひぃ…っ!」
 たったそれだけのことでガクガクと全身が戦慄いた。
(…………あ、熱い………そこ……)
「どれどれ?」
 次いで金髪が。
「おお、ホントだ」
 そして赤毛も、同じように指を捻じ込んでくる。
「――――あああっ!」
 狭い器官はもういっぱいだ。
 侵入してきた三人の指がやわらかい内壁を擦りながら、それぞれに蠢きだすと、その刺激を喜んでいるかのように勝手に中がうねり、収縮を始めた。
「や……いやだ、ぁ…っ!」
 たっぷりと塗られた潤滑剤のせいで、クチュクチュと卑猥な音が響いてくる。三人が同時にそこを嬲っているから、濡れた音も唇からこぼれ落ちる嬌声もひっきりなしだ。
「……あっ、あっ…………ああぁ…あ!」
 前茎はしばらく放置され、触られてもいなかったが、虎徹はとうとう胸を大きく喘がせて悦がりながら、観客の前で白濁したものを撒き散らしてしまった。だが萎えることはなく、前茎は屹立したままで形も大きさも射精する前とほとんど変わっていない。
「う、うそ……だろ」
 薬の効果は絶大だ。
 蜜壷を掻き回される刺激に、またすぐに先端からトロトロと雫が溢れてくる。
「くそ、また…………あっ……あぁ、ん!」
 恥ずかしいのに、止められない。それどころか、さらに刺激を求めるように腰を捩るような動きをしてしまうのは、薬に侵された身体がまだまだ物足りないと訴えているからだろうか。
(もっと――――)
 とめどなく溢れる愛液は虎徹の雄芯から伝い落ちて、後孔の入り口まで濡らしている。上も下もとっくにドロドロだ。
「中にっ、何か…………何かいる……やだっ、あぁぁっ!」
 自分ではない別の誰かが叫んでいるようだった。
 快楽という名の虫が内側の粘膜を這い回る感覚に、神経のすべてを支配されて、脳がショートしそうになる。
(頼むから…………もっと、強く……)
 虎徹は気づかないうちに激しくかぶりを振って、ヒィヒィと掠れた悲鳴を上げてしまっていた。両側から抱えられている腰も淫らに揺れている。もちろん全部無意識だ。
(…………バニー)
 恋人にされている時でさえ、これほど激しく感じたことはない。だが、甘い悦びを伴わない一方的に追い詰められるだけの快感は、長引けば長引くほどつらくなっていく。
(おまえにだったら俺は……どんなことされても平気なのに……)
「あ、あ、あぁぁっ!」
 二度目の射精も後ろを弄られている間にあっけなく終わってしまった。
「……はっ……ぁ…」
 睫毛に溜まった涙とライトの反射で目の前が白くぼやけている。
 身体はまったく言うことを聞かず、下肢に力は入らない。なのに薬のせいで、股間のモノは少しも治まらず、後孔はヒクヒクといやらしい動きで咥えた指を締めつけている。最悪だ。
「も、もう……」
(我慢できねー……苦しい)
「止めて欲しいんじゃなくて、もっと太いのを挿れて、だろ? ちゃんとお願いできたら順番に突っ込んでやるよ」
 じゃないと、そのうちおかしくなっちまうかもなァ。下卑た笑いと共に脅されて、悔しさに戦慄く唇を噛みしめながら、それでも結局は頭を垂れた。
 止まらない下肢の疼きは最早、限界にきていたのだ。
「い…………挿れて、くださ……」
 消え入りそうな声を絞り出し、懇願する。だが神父は納得してくれない。
「客席の皆さんに聞こえるように、もっと大きな声で言うんだ」
「た、頼むから……挿れ、て……ください」
「何をだね?」
「……もっと………太いの、を…………奥に」
「おまえの恥ずかしい孔がいっぱいになるまで深く突き立てて欲しいんだね?」
 とても言葉で繰り返すことはできず、無言で頷く。
 すると神父は、挿れるだけでいいのか、と意地悪く尋ねてきた。むろん挿入だけでいいわけがない。とにかく疼く内壁を鎮めるために擦って欲しくて仕方ないのだ。
「なら、こう言うんだ。私の恥ずかしい淫らな孔をみんなで犯して、ぐちゃぐちゃに掻き回してください、とね」
 あからさますぎる言葉の羅列に耐えられず一旦は首を横に振ったが、だったら放置するまでだと離れていく気配に負けて、虎徹は神父と同じ言葉を渋々繰り返した。
「……の、恥ずかしい……み、淫らな孔を…………お、かして…………ぐちゃぐちゃに、掻き回して……ください」
 途切れ途切れだったが、どうやらちゃんと聞こえたようだ。
「同志諸君、このターゲットは身も心も我々の手に堕ち、淫らな玩具と成り果てた! もう二度と我らに牙を剥くことはないでしょう」
 湧き起こる拍手と歓声。
「では、褒美を」
 神父の合図で天井から吊るされていた鎖が緩む。床の上で改めて身体を抱えられた虎徹は、いきなり後ろからずぶりと楔を突き立てられた。
「ひぃっ!」
 そのまま一気に最奥まで貫かれ、衝撃に悲鳴を呑み込む。
 目を閉じていても、観客たちの視線が結合部分に集中しているのが分かった。
「……ぁ」
 背中がぴたりと密着するほど深く繋がったせいで、奥まで捻じ込まれた男のモノで中ははちきれそうなほどいっぱいになっている。
 開始早々、律動は激しく、ガツガツと奥まで強く突き入れられた。三人の男たちもずいぶん欲望を堪えていたのだろう。
「あっ、あっ、あっ……」
 中を穿つ動きと同じリズムで、熱い吐息が首筋にかかる。
「……あぁっ、ん!」
 そうしてガチガチに硬く張り詰めた雄の証で強く何度も擦られて、ようやく苦しいほどの焦燥が隠微な悦楽へと変わっていくのを感じた。
「ひぃ…んっ……あ、あぁ……あっ!」
 ぐちゅぐちゅと音を立てて抉られるたびに、脳天が痺れる。もう嬌声を抑えようという気力も消え失せた。忙しない呼吸に喘ぐ胸の突起をまた横から弄られて、再び目に涙が滲んでくる。
「……イク…………また、いっちまう……」
「…………くっ」
 泣きながら達すると同時に、後ろを締めつけてしまったらしく、数秒後には後孔を責め立てていた男もまた短く呻いて虎徹の中に熱い飛沫を叩きつけていた。
 だが、狂宴はこれで終わりではない。
「次は俺だ」
 休む間もなく別の男に腰を抱えられ、今度は獣のように四つん這いにさせられて、雄芯を突き立てられた。
「あっ……あぁ!」
 たっぷりと濡れて綻んだ秘所はたいした抵抗もなく新たな楔を呑み込んでいく。
「おいおい、あんまり締めつけるなよ」
「してな……あっ! あぁ…あ……ひぃっ」
 二番目の男も遠慮のない抽挿で、性急に中を掻き回し始めた。
 すると、その光景に刺激された残りの一人が我慢できなくなったのか、虎徹に口を開けさせて、己の砲身を無理やり喉奥まで突き入れてきた。
「……んっ、んんっ……うぐ…っ」
 膝立ちの状態で、前後から口と後孔を同時に犯され、貪り食うように激しく穿たれる。
「ふっ…ぅ、んん……んーっ!」
 苦しかった。一刻も早く終わって欲しかった。それなのにこの閉ざされた空間で渦を巻く興奮が見えない糸となって虎徹を絡め取り、締めつけ、逃してくれない。
 すでに立て続けに三度吐き出して、ミルクタンクはもうほとんどカラに近いはずなのに、分身はまだ頭を擡げてヒクついている。
「あっ、あぁ……やだ…………また、イク……」
 このままでは本当におかしくなってしまう、と思った。
「も、もう嫌だ…………助けてくれ、バニー! 俺は……おまえじゃなきゃ……嫌なんだ」
 ここにいるはずのない相手に泣きながら懇願し、手を伸ばす。
「バニー……!」

「――――やっと僕の名前を呼びましたね。遅いですよ、虎徹さん」

 闇の中から聞き覚えのある声がして、虎徹はハッと目を瞠った。
 欲望の赴くままに獲物を貪り、悦楽に浸っていた男たちも一斉に動きを止めて身構える。
「まったく、あなたという人は。僕にどれだけ心配をかければ気が済むんです?」
 闇の向こうから客席を縫うようにして悠然と現れたのは、まさしく虎徹のバディであり、かつてヒーロー界の新記録も樹立したキング・オブ・ヒーロー、バーナビー・ブルックス・Jrだった。
「バニー……おまえ、どうしてここに?」
 詳しいことは何も伝えていなかったのにと不思議がる虎徹をくすりと笑って、相棒が種明かしをする。
「途中で切れた電話がどうしても気になって。何度もかけ直していたら、電話口に出た少年があなたが追われているようだと教えてくれたんです」
「あの子が」
 バニーに似た緑色の瞳を持つ少年の姿が脳裏に浮かんだ。
「けど、この場所までは知らなかったはずじゃ……」
「彼のお兄さんが知っていました。答えてもらうまでに、少し時間がかかりましたけどね」
 にっこり微笑んだ彼がどういう手段でこの場所を突き止めたのか、詳しく聞かない方がいいだろうか。
 とにかくこれで事態は一変した。
「助けに来てくれてありがとな、バニー」
 こいつさえ一緒にいてくれるなら大丈夫だ。もう何も怖いものなんてない。
「あなたの悪夢はこれで終わりです」
 その言葉に頷いた瞬間、目の前の光が一層強さを増して、虎徹を包み込んだ。


               ◇◆ ◇◆◇ ◆◇

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【モブ虎/3】逃走中 【8】~そして暴かれた真実~/完 

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「――――さん……虎徹さん?」
 誰かが名前を呼んでいる。
 よく知っている声だ。
「んっ……」
「起きてください、虎徹さん」
 軽く揺さぶられて、ようやく瞼をこじ開けた虎徹は眩しさを堪えつつ身を起こした。
「……あれ?」
 周囲を見回しているうちに、ようやく自分が研究所にある酸素カプセルに入っていたことを思い出す。
(そういやバニーに誘われて来たんだっけ)
 疲れがたまっていたのか、ずいぶんぐっすりと眠っていたようだ。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……」
 心配そうに覗き込んでくる相棒の顔を見て、なぜか泣きたいような気分になった。
 いったい自分はどんな夢を見ていたのだろう。
「どうだ、リフレッシュできたか?」
 拡声器付きのヘルメットを被った斉藤さんに訊かれて、うーんと首を捻る。
「なんかものすっっっごく疲れた気がするんだけど。これって疲れが取れる機械じゃなかったっけ?」
 すると不思議キャラの天才メカニックはキヒヒと小さく笑って、まぁ今回は仕方ないなと謎のつぶやきを落とした。
「痛みはないだろ?」
「そりゃまぁ、どこも痛くはないけど」
 疲労回復どころか、全身が妙にだるいのだ。しかもなんだか違和感を覚えて、ふと視線を落とし、重要な異変に気がついた。
「――――あ」
「どうしました? やっぱり、どこかつらいんですか?」
 バーナビーに覗き込まれて、慌てて首を振る。
「い、いやぁべつに……」
「無理しないで、何かあるなら言ってください」
(あるとも。大ありだよ)
 今現在、非常につらい状態だが、とても口には出せない。何しろ異変はもろに股間部分だったからだ。見た目では分からないかもしれないが、ズボンの前がぐっしょりと濡れている。きっと下着もだ。つまり夢を見ていてこうなったわけで。
(だから俺、どんな夢見てたのよ……)
 思春期の少年じゃあるまいし、と本気で泣きたくなった。
「だ、大丈夫だって」
 それでもなんとか悟られまいと、引き攣った笑みを浮かべて、もぞもぞと膝を立てる。
(鏑木・T・虎徹、人生最大のピンチかもしれない)
 どうしようかと途方に暮れかけた時、救ってくれたのはバーナビーだった。
「虎徹さん、喉渇いたでしょう? 水をどうぞ」
 そう言って紙コップを差し出してくれたのだが、それを受け取ろうと伸ばした虎徹の手とぶつかってしまい、コップの水を派手にぶちまけてしまったのだ。ちょうど腰のあたりに。
「すみません! 大丈夫ですか? 濡れちゃいましたね」
「い、いや……このぐらい」
「でも濡れたままじゃ気持ち悪いでしょう。着替えてきてください。ロッカーに予備のトレーニングウェアがありますから」
「そ、そうか? じゃあ……」
 助かった。心底ほっと胸を撫で下ろし、虎徹はカプセルのある部屋を出た。



 手早く着替えて、ランドリーにズボンを放り込む。
(……にしても気になる。俺が見た夢っていったい……)
 頭を悩ませながらカプセルのある部屋に戻っていくと、部屋の隅で斉藤さんとバニーが何やら話し込んでいた。バーナビーの声は聞こえにくいが、斉藤さんは拡声器を付けているからよく聞こえるのだ。
「なんで勝手によけいなキャラまで追加してるんですか。あの兄弟は必要ないでしょう」
「そうか? 結構いい演出だったと思うんだがな」
(……兄弟? って、あれ……今なんか思い出しかけたような……)
 立ち止まり、考え込んでしまった虎徹には二人ともまだ気づいていないらしく、そのまま話を続けている。
「まぁ上手くいったから構いませんけど。夢の内容は覚えてなさそうですしね」
「ああ、ありゃ何にも覚えてないな」
「夢の中で責められている間中ずっといい声で啼かれて、僕の方が大変でしたよ。にしても虎徹さんは感度が良すぎる。いくら夢の中とはいえ、知らない男に犯られてあんなに可愛く悦がるなんて、ちょっと問題だな」
(…………はい?)
 いろいろ引っかかる単語ばかりで固まってしまった虎徹の脳内で、先程までの夢がうっすら甦ってきて、リプレイされていく。
(えーと……)
 夢を記憶するには反復が大事なのだ。
(確か俺は、反NEXT勢力を名乗る連中に捕まって………なんか、すっげぇひどい目に遭ってたような……???)
「おまえさんが楽しみすぎたせいじゃないか?」
「そんなことありませんよ。だいいち僕の欲求は二の次です。口で言ってもなかなか聞き分けてくれない虎徹さんに、夢の中で危険を味わってもらうことでムチャをしないようにっていう相棒としての配慮なんですからね」
(夢の中で、ってことは…………まさか)
「反NEXTを謳う勢力は実際存在しているし、虎徹さんがスキモノの連中を煽るようないやらしい身体をしているのも事実だし、そのことに本人だけがまったく気づいていないっていうのも本当なんですから」
「まぁ、そのあたりの見解は置いとくとして。アンチNEXTや痴漢に注意するのはともかく、スポンサーまで悪役で登場させなくてもよかったんじゃないか?」
「ダメですよ。あの人、本当にごく一部の人たちに変に人気があるんですから。どんな相手にも注意してもらわないと。何しろ相手がその気になれば脅しのネタになりそうなことを、うっかり自分でやっちゃって墓穴掘るタイプですから」
(失礼な。ていうか、なんだそれ……痴漢? スポンサー? 言われてみれば、うっすらとだけどなんか嫌~な記憶が埋もれてるような……)
 しかもトラウマになりそうな類の記憶が。
「睡眠学習の効果がそういう方面にどれだけ生かされるか分からんが、実験自体は結構面白かったぞ。過去二回の反応を参考にして暗示用のテープを作成したからな。今日が一番強く反応していたのも、その成果だ」
「ええ、斉藤さんの協力のおかげです」
(…………なるほど。全部読めたぜ)
 思い出したくないことまでほとんど全部思い出してしまった虎徹は、先程ランドリーに突っ込んできたズボンの染みを思い返して、ふつふつと湧き上がる怒りに拳を強く握った。
「協力のおかげ、ねぇ」
 ぼそりとつぶやいた一言に、二人の肩がびくんっと跳ね上がる。
「……あ、虎徹さん。戻ってたんですか」
「ああ、ちょっと前にな」
 ややぎくしゃくした動作で振り向いた二人に、にっこりと微笑んで虎徹は言った。
「でさぁバニーちゃん、睡眠学習ってそれ…………なんの話?」
「えっ?」
「…………」
 その瞬間バーナビーは見事に固まり、斉藤さんはスッと視線を逸らした。
 まぁ当然の反応だろう。
「おじさんに詳しく聞かせてくれないかな~」
 全身から青い光が迸り、握った拳にも力が宿る。
「こ、虎徹さん……ちょっと待ってください! これにはちゃんと訳が……!」
「――――問答無用ッ!」

 妄想という特殊なアダプターによって妙な変換をされてしまった恋人兼相棒の心配は、とりあえず拳で払拭しておくことにした虎徹だった。



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【C82新刊/兎虎】Paradise with you 

[ サンプル]

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夏コミ1日目8/10発行の新刊サンプル(東1ホールD-51a)
※ 今回のサークル名は sha-raku です ※
もちろんR18大人向け
ヒーローを引退する前に告白をしていたものの互いに一歩が踏み出せないまま離れた
バーナビーと虎徹。一年後に再会して、共に過ごす初めての夜のお話です。

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(やっべええぇぇぇ!)
 思わず両手で自分の口許を覆う。不用意に声を上げたら大変だ。
(ちょ……待て、俺。落ち着け! まず落ち着こう)
 ドキドキと高鳴っている胸にも手のひらを押し当てて、深く息を吸い込む。
 キスを終えて、バーナビーがベッドルームを出て行ってから一分くらいは経っているが、何しろリビングは隣だから大きな声を出したら目覚めていると気づかれてしまう。
(えーと、何がどうしてこうなったんだっけ? ……確か一緒にメシ食ったんだよな?)
 まだ完全に酔いが醒めたわけではないが、少しずつ意識はハッキリしてきた。そこへさっきのキスだ。突然触れてきた覚えのある感触に、酔いと眠気が吹っ飛んだ。
 やわらかく押し当てられた唇。
 軽く吸われ、舌先で表面を舐められたりそっと甘噛みされたりするうちに、薄く開いた口唇に舌先が触れた。ディープに口腔内を探られたりはせず、じきに唇は離れていったが、その頃には覚醒した心臓が勢いよく駆け出していて、やかましい心音に気づかれるのではないかとヒヤヒヤした。
(びっくりした、びっくりした……)
 一番危うかったのは、バーナビーが離れていこうとしたとき、思わずその手をつかんで引き止めてしまいそうになったことだ。
(もうちょいで起きてるってバレるとこだったぜ)
 密かに胸を撫で下ろす。まさか、いきなりキスされるだなんて思ってもいなかった。もうとっくに自分には興味を失くしているんじゃないかとさえ思っていたのだ。新しい相手がいるかもしれないし、そうじゃなくても一年離れている間に、こんなおじさんに夢中になっていたことなんてとっくに忘れてしまっただろう。かつて自分がどうしてあんなにも「虎徹さん、虎徹さん」と年上のバディにべったりだったのか、冷静になって考え直す時間は充分にあったはずだ。
 だからこそ食事をしている間中、実は僕、恋人ができたんですという報告がいつ来るかと内心身構えていたのに。
(けど、まさか…………見逃すのは今夜だけって……えええぇ?)
 本気かよ、バニーちゃん。
 虎徹はシーツに包まって、羞恥と混乱に足をジタバタさせた。いい歳をした大人がたかがキスひとつでと呆れられそうだが、なんだかやたらと頬が熱い。ぎこちない空気の名残がいつまでも四肢に絡みついて、背筋を強張らせている。ドキドキがなかなか治まらないのだ。
(ていうか、いい歳しているからよけい恥ずかしいのかもしんねーけど……)
 打算的とまではいかなくても、いっそ恋愛の要素が乏しければ、もっとうまく対処できるのかもしれない。だが、恋愛となると話は別だ。簡単には踏み出せないし、あっさり応じることもできない。亡き妻や娘のためというより、自分自身にその度胸がないから。
 若い頃のように恋愛にまっすぐ向かっていく気持ちを抱くのは、そう容易いことではないのだ。そして当然のことながら、本気のセックスは愛する人としかできない。
 だから、一年前バーナビーに告白されたとき―――虎徹は逃げた。
(あれは…………やっぱ逃げたことになるんだよなぁ、バニーは責めなかったけど)
 そのくせ忘れてしまうこともできなかった。


 郷里に戻って半年ほど過ぎた頃。
「ただいまーっ」
 学校から帰ってくるなり、娘の楓が週刊誌を広げてみせた。デカデカと紙面を飾っている元KOH、BBJという文字が嫌でも目に入ってくる。
「ねぇお父さん、見てよ! これ、ほんっとヒドイと思わない? 適当なことばっか書いてるの! バーナビーの名前出せば売れると思って」
 バーナビーの名前を出せば売れる。それは事実だ。現におまえだって買ってるじゃないかとはさすがに言えないが、眉を吊り上げ、訴えられたところで虎徹にはどうしようもないのだ。
「ンなもん、いちいち気にするなよ」
「するわよ!」
 娘の口は完全にへの字に曲がっている。
「お父さんは気にならないの?」
「そりゃあ……」
 真顔で尋ねられて、思わず黙り込んだ。
 ゴシップ誌なんてものは虚実織り交ぜているのが普通だし、下手をすれば虚偽のみの場合もあるという。それでも耳目を集められればOKなんだから、振り回されるだけ損だ。そんなありきたりな回答はただの言い訳じみて聞こえるかもしれない。
(……気にすんなって方が無理なんだよな)
 思い返せば、出会いは最悪だった。
 信頼を得ようと結構足掻いたし、気に食わない奴と思いながらもバーナビーの苦しみを知ってからは力になりたいと願った。あれはふたりが本物のバディになるために必要だった時間だ。
 いつからだろう、そこに愛しいという感情が混ざり始めたのは。
『――――虎徹さん……』
 あいつの声がまだ耳に残っている。別れたとき、最後に立ち止まって何か言いたそうに振り向いたくせに、結局は戸惑いを滲ませながら「お元気で」と、ただそれだけを告げた、あいつの声が。
 いつもは冷たく感じる翡翠のような瞳が揺れているように見えたのは、気のせいだったかもしれないけれど。
(もしも、そうじゃなかったとしても、俺には何もしてやれないけどな)
 無理にでも引き止めて、口にしかけた言葉を聞いてやるべきだったんじゃないかと、今でもたまに思うことがある。その先に難問が待ち受けていて、頭を悩ませるとわかっていても。
「ねぇ、お父さんってば! 聞いてる?」
「……ああ、うん。聞いてるよ、ちゃんと」
 不安定なあいつにせがまれて何度か重ねた唇の感触が、まだ消えない。
(もしして俺は、あいつと――――どうにかなりたかったんだろうか)
「ちょっと! お父さん!」
 ざわつく胸の内にばかり気を取られて娘の言葉を聞き流していたら、とうとう癇癪を起こされてしまったようだ。虎徹は畳に寝そべっていた身体を仕方なく起こして、やれやれと頭を掻いた。
「おまえは、おまえが好きな相手や信頼してる相手と、その記事を書いた見も知らない奴と、どっちを信じるんだ?」
「そりゃ…………好きな人だけど」
「だったらそれでいいだろ」
 簡潔に答えて、再び寝転がる。
 どっちを信じる? それは自分自身にも投げかけた言葉だ。
(なぁバニー…………おまえ今、どこで何してる?)
 心の中で呼びかけてみても、むろん答えは返ってこない。それでも不思議と完全に縁が切れたような気はしなかった。この先、会う約束はしていない。シュテルンビルトを訪ねる理由もない。もう二度と会うことはないかもしれない。
 それでも、まだどこかで繋がっているような気がしていた。


「さすがにコンビ復活までは読めなかったけどなァ」
 ベッドの上で丸まって、ぼそりと独り言をつぶやく。
 センチメンタリズムに溢れすぎていて思い返すのも恥ずかしかった記憶の糸を今、ようやく手繰り寄せているのは、さっきのキスのせいで、もうごまかしきれないだろうと悟ってしまったからだ。
「単なる仕事のパートナーって割り切るのは、やっぱ無理だよな」
 以前、好きだと告白されたことも。
 同じ男の、しかも仕事の相棒にキスされて嫌じゃなかったという衝撃的な事実も、月日が経てば記憶から薄れていくかと思っていたのに、どういうわけかちっともそんな気配がなくて、逆に心の中に記したプロフィールをなぞるように、毎日毎日あの街で過ごした日々を思い出しては、バーナビーのことを考えるようになっていた。
 一緒にいた頃より、よほど相手のことを考えていたかもしれない。おかげで脳の侵食具合はかなりのものだ。
「………俺ん中、もうかなりバニーちゃんでいっぱいだし」
 誰に語るともなく口にしていた想い。
「そうなんですか。それは知りませんでした」
「……へ? えっ?」
 単なる独り言に答えが返ってきたとき、冗談ではなく数秒間呼吸が止まった。
「ば…………ババババニーちゃん?」
 自分が発したとは思えないほど声は完全に裏返っている。
 一気に襲いくる激しい動悸、息切れ、眩暈。残念ながら夢、幻ではないようだ。
 いったいいつの間に寝室に戻ってきたのか、どうして自分がそれに気づかなかったのかわからないが、ベッドのすぐそばには確かに人の気配があった。
 視線の先には見慣れたバーナビーの赤いブーツ。
 恐る恐るシーツから身体を引き剥がし、面を上げると、翠色にきらめく瞳とバッチリ目が合った。
「とっても嬉しいんですけど、できればそういう告白は本人の前で言ってくれませんか、虎徹さん」
「え…………いや、その……」
 なぜだろう、怒ってるわけじゃないのに顔が怖い。本気が滲みすぎているからか。
「なんなら強制的に言わせたっていいんですよ?」
 ブーツを脱ぎ捨て、おもむろにベッドに乗り上げてきた元KOHの眼差しに射竦められて、虎徹はぶるりと身震いした。

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Smell The Roses 【1】

[ Smell The Roses]

2011.09.05 (Mon)

 やたらと広い間取り。テーブルに飾られた花。キングサイズのベッド。 VIP扱いで案内された老舗ホテルのインペリアルスイートを見回して、虎徹はため息をついた。「……ホントにここ泊まるのか? 俺とおまえで?」「仕方ありませんよ。会社命令ですから」 さらりと返してきたバーナビーの口角がやや上がっているように見えるのは、気のせいだろうか。「けどなぁ」 ゴージャスなのは悪くないが、落ち着いて眠れる気がしない。...全文を読む

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Smell The Roses 【2】

[ Smell The Roses]

2011.09.05 (Mon)

「……絶対おまえの趣味変だぞ、バニーちゃん」 自分で言うのもなんだけどさ、と力なく笑うしかない。 そんな自虐に満ちたツッコミも結局「虎徹さんはジョークがお好きですね」なんて軽やかに躱されてしまった。(そうじゃねぇんだよぉぉぉ――――っ!) 心の叫びはなかなか届かない。バスタブの湯は見る見るうちに溜まっていく。 ふと気づけば、これまたやたらに広いバスルームでイケメンの後輩にシャツのボタンを外されている中年...全文を読む

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Smell The Roses 【3/完】

[ Smell The Roses]

2011.09.05 (Mon)

「薔薇の香りがするバスバブルのようですね」「……バラの香り~?」 女性ならもちろん喜ぶだろう。部屋がスイートなのだから、用意してあるアメニティも多少洒落ていて当たり前なのかもしれないが。(どう考えても似合わねぇだろ) バラの香りの浴槽で乳繰り合う男二人。――――痛い。痛すぎる。 しかしバーナビーは上機嫌で濡れた肌にあちこちキスを落としながら、いい香りですね、なんてつぶやいている。「そりゃおまえには似合う...全文を読む

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オリオンをなぞって 【1】

[ オリオンをなぞって]

2011.09.10 (Sat)

 バーナビーはキスをするのが好きだ。 虎徹を唆し、蕩けさせる口づけ。行為の最中に交わす噛みつくような激しいキスはもちろんのこと、終わった後もすぐには離れようとせず、何度も唇を啄ばみ、汗ばんだ肌のあちこちにやわらかいキスを落としていく。 胸元から脇腹、ヘソのあたりまで一つ一つ、ゆっくりと。 まるで空に瞬く星を数えるように、小さなホクロを数えたりしながら。「ここにもあった」 舌が耳の裏側をしっとりと舐...全文を読む

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オリオンをなぞって 【2】

[ オリオンをなぞって]

2011.09.10 (Sat)

「ちょっ、そこは……反則」 慌てて押し留めようとしたが、もちろんバーナビーは何も答えてくれず、反対側の突起まで音を立てて吸われてしまった。「あっ! あぁ…っ」 自分の意思に反して、勝手に反応してしまう四肢。知らぬ間に口からこぼれ落ちている声。 終わったばかりで身体の奥底に燠のように燻っていた熱が、再びじわじわと煽られていく。行為の最中にもさんざん弄られていた胸の突起は過敏になりすぎているのか、ヒリヒ...全文を読む

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オリオンをなぞって 【3】

[ オリオンをなぞって]

2011.09.11 (Sun)

「お、おい、バニー! こんなの、ちょっとじゃ……っ!」「触ってませんよ、手では」 さっきまでの甘えモードはどこへやら。こちらを翻弄しながら、しれっと返してくるバーナビーがなんとも憎らしい。「最後までしなきゃいいってもんじゃ…………あっ、そこ……触る、な…っ」「でも事実ですから」「……ですから、じゃ…ね…………やめろ、って……」 下肢を押さえ込んでいる手の力を緩められるどころか、脚をさらに深く折り曲げられて、虎徹はか...全文を読む

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オリオンをなぞって 【4】/完

[ オリオンをなぞって]

2011.09.21 (Wed)

 一気に奥まで突き立てられた欲望の証が、腹の中でドクドクと脈打っている。この有り様ではすぐにでも意識を持っていかれそうだ。「く、るし……」「大丈夫ですよ。まだ中が濡れてるから痛くはないでしょう?」「ひっ! あぁ……あ、そん…な、こと」「入り口だってちゃんと緩んで、広がってる。あなたのココはいやらしいから」「やっ……まだ、早…………ああぁっ!」 笑いながら揺さぶられて、ひと際高い悲鳴が上がった。躊躇なく律動を...全文を読む

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【モブ虎/1】痴漢電車 【1】

[ 妄想Adapter]

2011.12.25 (Sun)

「……ふぅ、間に合った」 発車間際に慌てて飛び乗ったモノレールの扉がゆっくりと背後で閉まる。 平日の昼間だというのに、その車輌はやけに混んでいた。(うわっ、ツイてねーなぁ) 不思議と親子連れや老人の姿は見当たらない。年齢層はバラバラだが、どっちを向いても男、男、男。狭い車輌が一段とむさ苦しく感じてしまう。 スーツ姿のサラリーマン集団に囲まれて、虎徹はげんなりと肩を落とした。(……ま、しゃーねぇか) 目...全文を読む

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【モブ虎/1】痴漢電車 【2】

[ 妄想Adapter]

2011.12.25 (Sun)

「ほら、コリコリしてる」「いっ…」 愉悦を含んだ囁きと共に、硬く尖った小さな突起をぎゅっと強く抓られて、思わず声を上げそうになる。そうして胸元に気を取られている隙に、竿を扱く手が二つになった。「先っぽが濡れて、もうヌルヌルじゃねーか」「本当だ。ずいぶん感じやすいねぇ」 目の前に立っている男二人が口の端を歪めて薄く嗤っている。(ちっきしょー、こっちが動けないからって好き放題しやがって) 虎徹は唇を噛...全文を読む

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【モブ虎/1】痴漢電車 【3】

[ 妄想Adapter]

2011.12.25 (Sun)

「だいぶやわらかくなってきましたから、そろそろかもしれませんね」「んんっ…ぅ!」 すると、しばらくして後ろの男の言葉を合図に、今度は中の指を一斉に引き抜かれ、虎徹は低く呻いた。 もちろん解放されたわけではない。たっぷりと潤され、愛撫に疼き始めた後孔の入り口には、指よりもずっと熱く怒張したモノの先端がピタリと押し当てられている。伝わってくる熱量もサイズも段違いで、さっきまでとは比べ物にならない凶暴さ...全文を読む

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【モブ虎/1】痴漢電車 【4】/完

[ 妄想Adapter]

2011.12.25 (Sun)

「ちょっと待て! 早まるな、俺!」 叫びながらがばっと身を起こした虎徹は、自分自身の声で覚醒した。と同時に、周囲の景色が変わる。「…………あれ?」 どこだ、ここ。 さっきまでは確かモノレールの中にいたはずなのに、今はベッドの上だ。しかもどことなく見覚えのある部屋のようだと首を傾げながら視線を転じると、すぐ隣に嫌味なほど整った若い男の顔があった。 虎徹の相棒、バーナビーだ。「チッ、あと一歩だったのに」(...全文を読む

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2012.1/8インテ新刊案内

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2012.01.04 (Wed)

1/8大阪インテの新刊はパラレル設定のR18小説です。タイトルは「絶対服従命令」(某ゲームと被っててすみません)ドS新人編集×昔ヒットしてたけど今は売れていない漫画家というベタな設定で、無自覚フェロモン振り撒いてる虎徹さんがバニーちゃんにセクハラされてイスに縛りつけられた状態でローター仕込まれたり強制フェラで泣かされるという身も蓋もない話になっております。大変申し訳ありません(汗)※~本文より抜粋~※...全文を読む

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2/12新刊「Bitter or Sweet」

[ サンプル]

2012.02.09 (Thu)

ザ☆ヒーローショウの新刊その1こちらのサイトにも掲載している「オリオンをなぞって」と「Smell The Roses」に書き下ろしの表題作を加えて比較的甘い路線で一冊にまとめました。「Bitter or Sweet」はお約束のバレンタインネタ。単なるチョコレートプレイです(笑)……というわけで以下サンプル(抜粋)です。          ◇◇◆◇  ◇◆◇  ◇◆◇◇「そこまでして僕に食べさせたいんですか?」「いや、そういうわけじゃねーけど……...全文を読む

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2/12新刊「絶対服従命令2」(完)

[ サンプル]

2012.02.09 (Thu)

ザ☆ヒーローショウ新刊その21月インテ新刊の続き。パラレルで新人編集×漫画家設定。ちょっと外道なところで終わってしまっていたので頑張って続きを書きました!ちゃんとラブラブENDになっています。バニーちゃんの寄りきり勝ちって感じ(*´∀`*)13歳のバニーちゃんと、まだ「おじさん」じゃなかった頃の虎徹さんが出逢う場面も書けたので自分としては結構楽しかったです。たまにはパラレルも良いですね。そんなわけで以下サ...全文を読む

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【モブ虎/2】危険な接待 【1】

[ 妄想Adapter]

2012.02.26 (Sun)

 その日、虎徹が呼び出されたのはゴールドステージにある有名ホテルの一室だった。 しかも、最上階にあるVIP御用達のインペリアルスイートだ。「お待ちしておりました。ワイルドタイガー様ですね?」 きっちりと測ったようなお辞儀で出迎えた痩せぎすの男が、低い声音と慇懃な口調で尋ねてくる。服には皺一つなく、髪もきっちりと撫でつけてある。直接ご挨拶するようにと会社から言い渡された「大切なお客様」の秘書か、もし...全文を読む

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【モブ虎/2】危険な接待 【2】

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2012.02.26 (Sun)

(…………まぶし……) 最初に気づいたのは刺すような眩い光だ。目の奥を光に灼かれて、唐突に意識が甦ってくる。身体がふわりと浮くような感覚。 だが、この時すでに地獄は始まっていたのだ。(な、なんだ……これ?) 重い瞼をこじ開けても、虎徹は自分の身に何が起こっているのか、すぐには理解できなかった。なぜなら全身をロープで奇妙な形に縛り上げられ、床に座り込んでいたからだ。 両腕はしっかりと後ろ手に縛られているし、...全文を読む

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【モブ虎/2】危険な接待 【3】

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2012.02.26 (Sun)

「……きみはやさしいねぇ」 男の言葉に含まれている労わりと哀れみ。 高みからこちらを見下ろしている者の侮蔑。「あいつを巻き込めるわけねぇだろ」 それらすべてを唾棄する代わりに、虎徹にできたのは低く唸ることだけだ。「パートナーなのに?」「パートナーだからだよ! あいつは俺の大事な相棒だ。おまえたちみたいな奴らに好き勝手させてたまるかっ!」「さすが今一番人気のタイガー&バーナビーだ。いいコンビじゃないか...全文を読む

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【モブ虎/2】危険な接待 【4】

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2012.02.26 (Sun)

「……うぐっ…………ふっ、ぅ……」 虎徹の口腔を犯している男の一物が喉の奥を突くたびに、吐き気がこみ上げる。怒張したモノからは青臭い匂いがするし、ずっと口を塞がれているから息苦しくて仕方がない。 しかし男はひどく興奮しているらしく、膝立ちしている虎徹の頭を両手でつかんで、やたらと腰を突き入れてくる。「舌の使い方は下手くそだが、悪くないよ」「んっ……ぐ…うぅ」 声にならない嗚咽と共に、新たな涙が頬を伝った。「...全文を読む

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【モブ虎/2】危険な接待 【5】/完

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2012.02.26 (Sun)

「……さん、……さん!」 耳元で誰かが呼んでいる。よく知っている声だ。(……あれ?) ぼんやりと浮上してきた意識をその声が揺り起こす。「起きてください、虎徹さん!」「えっ?」 突然ぱちりと目が覚め、瞬きしながら姿勢を直した虎徹は、そこがテレビ局の控え室であることに気づくまでに数秒かかった。「本気で居眠りしてましたね? のん気な人だな、まったく」 呆れ顔でため息をついているバーナビーがちらりと視線を落とし...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【1】

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2012.04.29 (Sun)

 息を切らして、建物の隙間を縫うように狭い路地を逃げ惑う。「ハッ……ハァハァ……」 後方から迫ってくる足音は二人。いや、三人だろうか。もしかするとハンターの数が増えたのかもしれない。「くっそぉ…! どうすりゃいいんだよ」 虎徹は追っ手の死角となる物陰に飛び込んで、身を潜めた。 長い距離を走ったせいで呼吸はすっかり乱れている。浅い呼気に喘ぐ胸を上下させながら、じっと通りのようすを窺っていると、じきに服装...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【2】

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2012.04.29 (Sun)

「え? またやっちゃったんですか?」 トレーニングセンターで汗を流した後、昨日の出来事を相棒に話して聞かせると、バーナビーはたちまち形のいい眉をしかめて呆れた声を出した。やっちゃった、とは失礼な言い草だ。「またってこたぁねぇだろ。なんだよ、やっちゃったって」 年甲斐もなく、ぶぅと膨れてみせる。すると若いハンサムヒーローは表情を崩さないまま眼鏡を指で押し上げ、言葉通りですけど、とドライに切り返してき...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【3】

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2012.04.29 (Sun)

 今思えば、仲間たちの懸念は見事に当たっていたのだ。 再三、気をつけてくださいと忠告してくれたバーナビーの心配が的中してしまった。きっとたまたまあの事故現場近くにREDとやらのメンバーが居合わせたのだろう。そして運悪く、能力を発動させているところを目撃されてしまったに違いない。 もともとNEXTに対して否定的な人間の目に、虎徹は人命救助に尽力した善良な能力者ではなく、唐突に街灯をへし折って放り投げ...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【4】

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2012.04.29 (Sun)

               ◇◆ ◇◆◇ ◆◇ とは言うものの、大勢の人間から逃げるのはそう容易いことではない。 逃走を始めた途端、虎徹は様々な攻撃に曝された。人通りのない道に入れば、武器を持った人間が現れて襲いかかってくる。ならば、と大通りをこっそり歩いていたらいつの間にか数人に取り囲まれていて、ぎょっとしている間に車で連れ去られそうになった。慌てて逃げようと路上を走ったら、追いかけてきた車に撥ねら...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【5】

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2012.04.29 (Sun)

 びしりと決まった黒いスーツに黒のサングラス。足元は先の尖ったエナメルの靴。(どう見ても堅気じゃねーだろ) この男が侵入者でないとしたら、つまりここは『そういう家』なのだ。(……おーい少年、先に教えといてくれよ) 最初に会ったのがごく普通の学生に見えたから、まさかこういう種類の自由業のお宅だとは思っていなかったのだが。「貴様、こんなところで何をしている?」「何って……その、電話を」 男の手の中で携帯が...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【6】

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2012.04.29 (Sun)

 突然降り出した雨が、シャツを濡らし、肌に張りつかせる。 目立つベストと帽子は途中で捨てた。できれば違う上着を調達したかったが、なかなか都合よくはいかない。それでも急に降り出した雨のおかげで、誰もが急ぎ足で通り過ぎていく中、あまり目立たずにいくつかの道を横断することができた。「あれに乗れりゃ早いんだけどな」 頭上を走るモノレールを見上げて、ぼそりとつぶやく。 それでも一応ウエストエリアには入ったは...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【7】

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2012.04.29 (Sun)

「ま、待て! おまえたちこんなことして…………うっ」 金髪と赤毛の男に両側から胸の突起を強く摘まれて、思わず息を呑み、言葉が詰まった。もう一人の短髪は強弱をつけて下肢の中心を遠慮なく握っている。根元から先端に向かってゆるゆる扱きだすと、そのリズムに合わせて今度は胸を弄っていた二人が意地悪く突起を擦り、爪で弾いた。「…ぁ、うぅ…っく」 敏感なところを左右別々に捏ね回されて、なんとも言えない快感が走る。 男...全文を読む

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【モブ虎/3】逃走中 【8】~そして暴かれた真実~/完

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2012.04.29 (Sun)

「――――さん……虎徹さん?」 誰かが名前を呼んでいる。 よく知っている声だ。「んっ……」「起きてください、虎徹さん」 軽く揺さぶられて、ようやく瞼をこじ開けた虎徹は眩しさを堪えつつ身を起こした。「……あれ?」 周囲を見回しているうちに、ようやく自分が研究所にある酸素カプセルに入っていたことを思い出す。(そういやバニーに誘われて来たんだっけ) 疲れがたまっていたのか、ずいぶんぐっすりと眠っていたようだ。「大...全文を読む

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【C82新刊/兎虎】Paradise with you

[ サンプル]

2012.08.04 (Sat)

夏コミ1日目8/10発行の新刊サンプル(東1ホールD-51a)※ 今回のサークル名は sha-raku です ※もちろんR18大人向けヒーローを引退する前に告白をしていたものの互いに一歩が踏み出せないまま離れたバーナビーと虎徹。一年後に再会して、共に過ごす初めての夜のお話です。--------------------------------------------------------------------(やっべええぇぇぇ!) 思わず両手で自分の口許を覆う。不用意に声を上げたら大変...全文を読む

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